テノールの中にも高低の声種がある!音域(声域)をあわせてご紹介

テノールは、男性歌手としては高い音域のパートのことですが。
実は、一口にテノールといっても色々な種類があるのです。
活躍の場として多いのはオペラですね。
オペラでは、役柄に応じ、色々な声種、音域のテノールを楽しむことができますよ。
これから順にご紹介しましょう。

記事の目次

  1. 1.テノールとは(音域、役割)
  2. 2.テノールと他のパートの音域を比較
  3. 3.音域、声種から見たテノールの種類(高音域編)
  4. 4.音域、声種から見たテノールの種類(低音域編)
  5. 5.三大テノール歌手
  6. 6.テノールのまとめ

テノールとは(音域、役割)

テノールの語源は、ラテン語で「保つ」を表す「tenere」です。
ルネサンス期には、グレゴリオ聖歌などに於いてテノールは主旋律を担当することが多くありました。
そのなかでの「主旋律のロングトーンの部分を保つ」というところが由来のようです。

また、楽器の中での高低を表すばあい、「テナーサックス」などという風に使われてもいますね。

学校でが混声合唱の授業があった方は、男女ともに声の高低によってパート分けをして歌ったご経験のある方もいるかもしれません。

混声四部合唱だと、女性の高音ソプラノ、女性の低音アルト、男性の高音テノール、男性の低音バスなどという風に分かれますね。

さらに女声のなかには、ソプラノとアルトの中間にメゾソプラノが。
テノールとバスの間にバリトンなどと「中声部」というのもあります。

また、男性のみの4部合唱をする場合、テノールはその中でまた、トップとセカンドに分かれて歌うことがあるそうです。

混声合唱中の位置づけは、女性のソプラノとともに、「高声」といわれたり、女性のアルトとともに「内声」といわれたりします。

主役の主旋律から、内側をしっかり支える内声まで幅広い活躍をするパートですね。



 

テノールと他のパートの音域を比較

こうして声域表を見てみると、テノールは男性が歌う音域としては、上がかなり高いですね。
女性のアルトやメゾソプラノとも、かなり近しい音域を網羅していることになります。

オペラ公演にては、素晴らしい高音を響かせる歌い手は、聴衆を歓喜させ、ずっと語り継がれてゆきます。

まさに「男性の高音」の醍醐味といった感じですね。

音域、声種から見たテノールの種類(高音域編)

さて「男性の高音」テノールですが、この中にもさまざまな種類があります。

先ほどの声域表にあったように、かなりの低音から、女声に匹敵する高音までと、幅ひろいですね。

声域もさることながら、声のニュアンスや、オペラの役柄などに応じて、いくつかの種類分けがされています。
実際のオペラ演目などとともに、順にご紹介しましょう。

まずは、高い音域の声種を列挙していきます

 

カウンターテナー

テノールは、裏声を使うことが基本あまりないため、「テノール」のくくりには入れない場合もあるようですが。

テノールとして考えると、声域は最も高く、女声であればメゾソプラノに匹敵するほどの高さに迫ります。

カウンターテナーの由来は、教会音楽です。
かつて教会が女人禁制だった時代に、聖歌隊の高音域を歌うために存在しました。

 

参考曲「こうもり」よりオルロフスキー伯爵「私はお客を呼ぶのが好き」

カウンターテナーは、オペラの中に登場するものは少なめです。
が、その中でも、モーツァルト作曲「こうもり」のオルロフスキー役は有名といえるでしょう。

近年は、この役柄のような高い声を出せるテナー歌手がいない場合、女性メゾソプラノの歌い手が代行するケースもあるそうです。

 

テノーレ・レッジェーロ

テノールの声種の中では最も軽く、明るい響きを出します。

華やかなトリルなどの装飾が施されている「コロラトゥーラ」の技法が必要な役柄、また繊細な表現が求められる役柄で用いられます。

オペラの配役としては、「セヴィリヤの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵、「アルジェのイタリア女」の中のリンドーロ役どころなどでの表現が有名どころでしょう。

軽快で明るい感じのため、どちらかというと「オペラブァッファ」という喜劇的な演目への登場が多いようですね。

参考曲 セヴィリヤの理髪師より、アルマヴィーヴァ伯爵「もう逆らうのはやめよ」

ロッシーニ作曲「セヴィリヤの理髪師」のフィナーレを飾る、超絶技巧曲です。

あまりにも難しいので、オペラ舞台においてもカットされることもあったそうな。

アルマヴィーヴァ伯爵が数々の困難を乗り越え、愛する人と結ばれるストーリーのクライマックスを飾る曲です。

テノーレ・リリコ

最もオーソドックスなテノールの声質です。

役柄の中で多いのは、抒情的で切々とした表情豊かな旋律を歌うものです。

「椿姫」のアルフレッド、「ボエーム」のルドルフォ、「リゴレット」のマントヴァ伯爵、また「ドニゼッティの愛の妙薬」のネモリーノなどが各当します。

レッジェーロのように細かく技巧的な歌い方というよりは、じっくりと聴かせるタイプのものが多いですね。

テノールの魅力の唱法のひとつです。

後述する「3大テノール」のパヴァロッティは、このタイプの歌い手ですね。

参考曲 「椿姫」よりアルフレッド「De'miei bollenti spiriti(燃える心を)」

ヴェルディ作「椿姫」は、パリの華やかな社交界に暮らす娼婦ヴィオレッタと、純朴な青年貴族アルフレッドの、美しくも悲しい純愛物語です。

この曲は、オペラの第2幕第1場で朗々と歌われる愛の歌です。

リリコ・スピント

テノーレ・リリコに比べるともう少し太く、輝かしい感じの歌い方をします。

明るく開放的な作柄のものより、抒情的な作品での役が多いです。

ヴェルディの「トロヴァトーレ」のマンリーコ役、「アイーダ」のラダメス役、「トゥーランドット」のカラフ役などが各当する作品になります。

この唱法が特徴の歌い手としては、有名どころではプラシド・ドミンゴ、またフランコ・コレッリが各当します。

 

参考曲 「アイーダ」よりラメダス「Celeste Aida(清きアイーダ)」

ヴェルディ作曲「アイーダ」はサッカーのテーマで使われている「凱旋行進曲」なども有名ですね。

この「清きアイーダ」は第1幕第1場にて、軍隊の指揮官ラダメス役(テノール)が、情緒たっぷりに歌うものです。

参考曲 「トゥーラントッド」よりカラフ「誰も寝てはならぬ」

プッチーニ作の、この美しい曲は、スケートやCMでも有名ですね。

カラフ役が歌うこの曲は、数あるオペラのアリアの中でも屈指の名曲として歌い継がれてきています。

次のページ

音域、声種から見たテノールの種類(低音域編)

関連記事

Article Ranking