テノールの中にも高低の声種がある!音域(声域)をあわせてご紹介

テノールは、男性歌手としては高い音域のパートのことですが。
実は、一口にテノールといっても色々な種類があるのです。
活躍の場として多いのはオペラですね。
オペラでは、役柄に応じ、色々な声種、音域のテノールを楽しむことができますよ。
これから順にご紹介しましょう。

記事の目次

  1. 1.テノールとは(音域、役割)
  2. 2.テノールと他のパートの音域を比較
  3. 3.音域、声種から見たテノールの種類(高音域編)
  4. 4.音域、声種から見たテノールの種類(低音域編)
  5. 5.三大テノール歌手
  6. 6.テノールのまとめ

音域、声種から見たテノールの種類(低音域編)

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続いて、テノールの声域のなかで、低いほうの声種をご紹介します

テノーレ・ドラマティコ

テノールの中では最も重みがあり、力強さもある歌い方の種類です。

そして強靭な喉を必要とする系統のものです。

そのため、この歌い手はとても恰幅よく、強靭な体力をも持つ必要があるのです。


役柄としては、「道化師」のカニオ役、ヴェルディ作「オテロ」のオセロ役などとなります。
テノーレドラマティコの歌い手で有名なのは、マリオ、デル、モナコが筆頭に挙げられるでしょう。

 

参考曲 「道化師」よりカニオ『Vesti la giubba(衣装をつけろ)』

ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作曲「道化師」の中の曲です。

芝居の一座の物語が描かれるこの作品の中での、座長の役がカニオです。

彼は妻の浮気を知って怒り悲しみながらも、「自分は舞台の上で道化師を演じなくてはならないのである」と切々と歌い上げます。
心情が迫ってくるようなアリアですね。

参考曲「オテロ」よりオテロ「夢にうなされて」

ヴェルディ作曲の、このオペラのストーリーは、有名なシェイクスピアの悲劇が原作になっています。

主役のオテロのアリアを歌う、マリオ、デル、モナコは、その生涯に於いてオテロ役を200回以上歌ってきたということです。

上演する回数が決して多いとは言えないオペラ公演としては特質されるべきものですね。

この役が彼の代名詞になったのも、うなずけることでしょう。

 

ヘルデンテノール

「テノーレ ドラマティコ」の中でも、ワーグナーのオペラを歌う歌手は別格になります。

通常のテノールより、はるかに強靭な喉を必要とする為、「ヘルデンテノール」(英雄的なテノール)と。特化して呼ばれます。

代表的な役柄としては、「ニーベルングの指輪」のジークフリート役、「トリスタンとイゾルテ」のトリスタンなど、重厚な主役級がそれにあたりますね。
 

参考曲「トリスタンとイゾルテ」より「愛の二重唱」(O sink hernieder, Nacht der Liebe)

数々のオペラ曲を作曲したワーグナーですが、この台本はワーグナー自身が書き上げました。

作品完成から初演に至るまでは、何度も決まりかけては頓挫したということです。

6年が経過したのち、ワーグナーのパトロン、ルートヴィッヒ2世の宮廷劇場で初演にこぎつけました。

 

三大テノール歌手

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先に列挙したように、テノールの中には様々な声域があります。

そして、その中で素晴らしい歌い手は沢山います。

オペラ好きの方はよくご存じと思いますが、これからオペラを聴いてみよう、という方には、まず最初に聴いていただきたいのが、「3大テノール」の面々です

ルチアーノ・パヴァロッティ

まずはじめにルチアーノ・パヴァロッティをご紹介します。

1935年イタリア生まれ、惜しくも2007年にこの世を去りました。

1961年のプッチーニのオペラ「ポエーム」のロドルフォ役がオペラデビューです。

一躍有名になったのは、72年、メトロポリタン劇場に於いての、ドニゼッティの「連帯の娘」です。
この中で、彼は非常な高音である「3点ハ音」を、アリアの中で9回歌い上げ、聴衆を歓喜させました。

高音系から歳を重ねるにつれ、歌い方は「テノーレ・リリコ」から「リリコ・スピント」へと推移してゆき、新しいレパートリーを開拓していきます。

完璧主義で、公演をキャンセルこともしばしあったようです。

晩年、2006年トリノオリンピックの開会式にて「誰も寝てはならぬ」を披露したのが、彼の人生にて最後のステージとなりました。





 

プッチーニ「トスカ」より「星は光りぬ」

プラシド・ドミンゴ

次に、プラシド、ドミンゴを紹介しましょう。

彼は1941年、スペインに生まれました。

音楽学校在籍の初期は、指揮法を学んでいました。

が、バリトン歌手への転向を経て、60年「椿姫」のアルフレッド役で、テノール歌手としての産声をあげます。

以来世界各地をまたにかけ活躍をしてきました。

歴代歌った曲は134あまりで、これだけレパートリーが広いのは、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、英語と多言語に通じている所以です。

ピアノの腕前も、プロはだしであるという多才ぶりです。

オペラアリア集より

ホセ・カレーラス

続いて、ホセ、カレーラスをご紹介しましょう。

1946年スペイン生まれの彼は、デビューがなんと10歳。

バルセロナの歌劇場での口上語りの少年の役柄でした。

本格的なデビューは68年です。

71年、ヴェルディ国際音楽コンクールでの優勝がきっかけで、各地、各国で活躍するようになりました。

1987年、白血病と重い病にかかりましたが、自らの骨髄移植を持って再起し、その後も華々しく活動しています

乾杯の歌

テノールのまとめ

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テノールの魅力と音域、声種の特徴をご説明してきました。

そして、様々なテノールの魅力を堪能できるオペラ作品をご紹介してきました。

近年は、YouTubeや定額動画サービスなど、在宅でもオペラや演奏会が気軽に観られますね。

そこでお気に入りのオペラ演目や歌い手が見つかったら、ぜひ一度コンサートホールに足を運び「生」の歌声を味わっていただきたいと思います。
それぞれの声域の歌い手さんの素晴らしさは、やはり生だと伝わり方が段違いです。

テノールは、同じ「テノール」くくりの中でも、幅広い表現が楽しめるものですので。

重厚な、「テノーレ・ドラマティコ」軽快で楽しい「テノーレ・レッジェーロ」など、同じくくりのなかでも、様々な種類がありましたね。

ステージを観る前に「予習」として、オペラのあらすじを調べておくのもおすすめですが。
「この作品のこの役は、明るくて若い役所だから〇〇という歌い方をするんだな」などと調べておくのも楽しいですね。

そして、情緒たっぷりのアリア、朗々たる体躯から出される低音の魅力、女声と見まごうばかりのハイトーンボイスなど。

存分にテノールの魅力を満喫してくださいね。


 

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