シンコペーションとは?曲の具体例を使って分かりやすくご紹介!
様々なジャンルの音楽で使用されているシンコペーションですが、意味がわからないという声をよく聞きます。ここではシンコペーションについて、わかりやすくご説明します。これがわかれば、演奏も変わってきますよ。また、作曲する際にもうまく取り入れてみてください。
シンコペーションとは何?
シンコペーションとは、本来の正規のリズム進行から逸脱した状態のことを指します。
ここで、正規のリズム進行というのは、次のように小節の頭(1拍目)に強拍がくるリズム進行のことを指します。
2拍子の曲なら、[強拍・弱拍]
3拍子の曲なら、[強拍・弱拍・弱拍]
4拍子の曲なら、[強拍・弱拍・弱拍(強拍に準ずる拍)・弱拍]
シンコペーションを使うと、安定したリズム進行の中、突如、拍がずれたように聴こえるため、聴き手の印象に残りやすく、より強いインパクトを残すことができます。ジャズではよくシンコペーションが使われています。
語源
シンコペーション(syncopation)の語源は、「短くすること」を意味するギリシャ語の「syncopé」だと言われています。シンコペーションは、本来は音節の脱落を意味するギリシゃ語の文法用語でしたが、のちに音楽理論に転用されるようになりました。
シンコペーションのやり方については、後述します。
シンコペーションのやり方
シンコペーションのやり方は、いくつかあります。
- 弱拍から次の小節の強拍にかけて同音で伸ばす
- 弱拍から同じ小節内の次の強拍に準ずる拍(4拍子の曲なら第3拍)にかけて同音で伸ばす
- 2個以上の弱拍を、直前の強拍よりも長く伸ばす
- 強拍を休止する
- 弱拍にアクセントを置く
- 本来の拍子とは別の拍子にする
1つずつ、簡単な譜面を用いてご説明します。
1.弱拍から次の小節の強拍にかけて同音で伸ばす
上の譜面では、1小節目の4拍目から次の小節の1拍目にかけて、タイで伸ばしています。
このようにすることで、本来であれば弱拍のはずの4拍目が強拍のように聴こえます。
伸ばすということは、それだけ音量が必要というわけで、伸ばそうと意識することで、強拍のように聴こえるのです。
上の譜面では8分の6拍子で2拍子の曲として捉えます。(8分音符3つで1拍とします)
1拍目は[強拍・弱拍・弱拍]、2拍目は[強拍に準ずる拍・弱拍・弱拍]です。
1小節目の2拍目の弱拍から、次の小節の1拍目の強拍に向けて伸ばすことで、1小節目の2拍目の弱拍が強拍のように聴こえます。
2.弱拍から同じ小節内の次の強拍に準ずる拍にかけて同音で伸ばす
「1.弱拍から次の小節の強拍にかけて同音で伸ばす」の例と同様です。
違いは、上記は小節またがったシンコペーションでしたが、こちらは小節内でのシンコペーションです。
上の譜面では、1小節目の2拍目から3拍目にかけて伸ばしています。3拍目は強拍に準ずる拍です。
このようにすることで、本来であれば弱拍のはずの2拍目が強拍のように聴こえます。
上の譜面では8分の6拍子で2拍子の曲として捉えます。(8分音符3つで1拍とします)
1拍目は[強拍・弱拍・弱拍]、2拍目は[強拍に準ずる拍・弱拍・弱拍]です。
1拍目の弱拍から2拍目の強拍に準ずる拍にかけて伸ばすことで、1拍目の弱拍が強拍のように聴こえます。
3.2個以上の弱拍を、直前の強拍よりも長く伸ばす
上の譜面は3拍子の曲で、本来なら1拍目は強拍、2拍目と3拍目は弱拍です。
2拍目から1拍目の強拍よりも長く音を伸ばすことで、2拍目が強拍のように聴こえます。
4.強拍を休止する
上の譜面では、1拍目の強拍を休止にすることで、2拍目の弱拍が強拍のように聴こえます。
また、休止した強拍の直後の音が短い場合、その次の弱拍を強拍のように感じさせることができます。
5.弱拍にアクセントを置く
上の譜面では、3拍目の弱拍にアクセントを置くことで、3拍目が強拍のように聴こえます。
6.本来の拍子とは別の拍子にする
上の譜面は3拍子の曲ですが、2小節目以降、2拍ずつスラーをつけて2拍子に聴こえるようにすることで、2小節目だと3拍目の弱拍が強拍のように聴こえます。3小節目だと2拍目の弱拍が強拍のように聴こえます。
シンコペーションのやり方をいくつかお伝えしましたが、漠然と楽譜どおりに演奏しているだけではシンコペーションの効果が発揮できません。
長く伸ばすシンコペーションは、その前後の音も踏まえて長く伸ばす音をどのように出せばよいか考える、直前に休符を入れたシンコペーションでは休符を意識し、次の音をどのように出せばよいか考える、といったように楽曲に応じた演奏を考えてみてください。
シンコペーションの効果
上でも少し述べましたが、シンコペーションを使うと、安定したリズム進行の中で、突如、拍がずれたように聴こえるため、意外性とメリハリを聴き手に印象づけることができます。
インパクトを残したい部分にシンコペーションを用いることで、聴き手に伝わりやすくなるとも言えます。
具体例を上げてご紹介します。
シンコペーションの具体例
ここからは、シンコペーションの使われている曲をいくつかご紹介します。
シンコペイテッド・クロック
テレビCMやお店の中などでもお馴染みの曲で、この曲を聴いたことのない人はいないといわれるくらい有名な曲ですね。アメリカの作曲家ルロイ・アンダーソンによるオーケストラ向けの作品です。
打楽器のウッドブロックによる時を刻む音の中、この動画の0:12~0:13のシンコペーションと0:24~0:26のシンコペーションとが独特なユーモアを出しているのがおわかりいただけるでしょうか。
このシンコペーションがあることで、曲が締まって聴こえませんか。
アラベスク 第1番
ドビュッシーのピアノ曲で、管弦楽用にアレンジされたり、発表会やコンクールの課題曲になったりと、いろいろなところで耳にする機会の多い曲です。
この動画の0:17からの有名なテーマに、シンコペーションが使われています。
ここでは3連符で少しゆらぎながら交互に織り成すアラベスク模様が、長く伸ばすシンコペーションによりふわっと浮き上がる感じがします。その後も同様のテーマは続き、0:36までの間に、長く伸ばすシンコペーションから、3拍子から2拍子に変わるシンコペーションが現れます。
ひまわりの約束
秦基博による作品で、映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌にもなりました。
この曲では、歌もバックのギターもシンコペーションが多用されています。
ギターは休符を使ったシンコペーションが、歌は長く伸ばすシンコペーションが繰り返し現れます。
最初はゆったりと、一言一言の丁寧さが強調されますが、サビにはいった途端、少し気持ちをたたみかけてくるような感じがします。シンコペーションがないと、ここまでたたみかけてくる感じは出ないと思いますが、シンコペーションが使われていることでメッセージが強く伝わってきます。
A列車で行こう
「A列車で行こう」は、ジャズのスタンダード・ナンバーの一つで、吹奏楽で演奏されることも多い曲です。
アメリカの作曲家ビリーストレイホーンによる作品です。
この動画の0:19からピアノのシンコペーションで始まります。
その後、サックスによるテーマが聴こえてきますが、0:24~0:32までの間に5回、シンコペーションが現れます。
まず、1拍目に休符を置いたシンコペーションから始まり(0:25)
次に弱拍から音を伸ばしたシンコペーション(0:26)
2拍目の裏拍や、4拍目の裏拍を分離することで発生したシンコペーション(0:30)
最後にもう一後、弱拍から音を伸ばしたシンコペーション(0:31)
このシンコペーションにより、ノリの良いジャズの感じが出ていますね。
シンコペーションが使われている曲のジャンル・楽器
シンコペーションは、ジャンルと問わず、クラシック、ジャズ、ポップス、ロックなどの様々な楽曲で使用されています。また、ドラム、ギターをはじめとして、様々な楽器で使用されています。もちろん歌も同様にシンコペーションが使われます。
特にジャズでは、シンコペーションはリズムの原点といわれ、どのような音楽もシンコペーションを取り入れることでジャズっぽく聴かせることができます。
BABYMETALにもシンコペーションが使われている?
欧州を中心に、海外でも大人気の「BABYMETAL(ベビーメタル)、通称ベビメタ」の楽曲の1つに、「シンコペーション」があります。
この楽曲にはシンコペーションが多用されています。他にも、「PA PA YA!」など、多数の楽曲でシンコペーションが使われています。