7種類の教会旋法(チャーチモード)を分かりやすく解説!
皆さん、教会旋法という言葉を聞いたことはありますか。難解な音楽ではないかと感じてしまいますが、実はジャズやロック、ゲーム音楽など様々な音楽の中に取り入れられています。今回は、身近な音楽にも使われている教会旋法とは一体何なのかということをご紹介します。
教会旋法とは?
教会旋法とは、中世ヨーロッパの宗教音楽で用いられてきた、音階のような音の配列のことです。
ポピューラー音楽の分野では、チャーチモードと呼ばれています。
クラシック音楽を学ぶと、長調や短調という2つの響きを学びます。
なぜ、異なる性格を持った2つの響きが生まれるのかというと、全音と半音の位置が異なるからです。
教会旋法(チャーチモード)は、長調や短調と同じように全音と半音の位置が異なっており、各旋法の響きを特徴付けています。
教会旋法は、新しい音楽を生み出す手法として、今やジャズやロックだけでなく、映画音楽やゲーム音楽など様々な音楽に取り入れられています。
教会旋法の歴史
現在も音楽の中で活用されている教会旋法ですが、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか。
古代ギリシア旋法
教会旋法は、古代ギリシアの旋法をもとにして作られました。
古代ギリシアの旋法は、テトラコードと呼ばれる4つの音を組み合わせを使って作られています。
作られた旋法は次の7つです。
・ドリア−ヒポドリア
・フリギア−ヒポフリギア
・リディア−ヒポリディア
・ミクソリディア
ドリア・フリギア・リディア・ミクソリディアという名前は、ギリシア民族の部族の名前に由来しています。
「ヒポー」は、「〜の下に(under)」という意味で、テトラコードの接続の仕方が違うことによってつけられたものです。
旋法は、現在の音階のように絶対的な音の高さを表すものでなく、相対的な音の高さを示していました。
教会旋法
教会旋法には、大きく分けて「正格」と「変格」と呼ばれる2種類の旋法があります。
「正格」は「ドリア」「フリギア」「リディア」「ミクソリディア」の4つの旋法であり、「変格」は正格の名前の頭に「ヒポ−」をつけたものになります。
ギリシア旋法と同じ名前がありますが、旋法は異なっています。
4世紀、ミラノの司教であるアンプロシウスによって「正格」の4つの旋法が決められました。
その後、グレゴリウス聖歌の始まりとなったグレゴリウス1世の時代に「変格」の4つの旋法が追加されました。
この頃の教会旋法は、「レ」の音から始まる正格旋法を第1旋法とし、第8旋法まで使われていました。
第1旋法 | ドリア旋法 |
第2旋法 | ヒポドリア旋法 |
第3旋法 | フリジア旋法 |
第4旋法 | ヒポフリジア旋法 |
第5旋法 | リディア旋法 |
第6旋法 | ヒポリディア旋法 |
第7旋法 | ミクソリディア旋法 |
第8旋法 | ヒポミクソリディア旋法 |
新たな2つの旋法
16世紀、スイスの音楽理論家グラレアーヌスは、新たに2つの正格と各正格に対する「変格」を加えました。
第9旋法 | エオリア旋法 |
第10旋法 | ヒポエオリア旋法 |
第11旋法 | イオニア旋法 |
第12旋法 | ヒポイオニア旋法 |
イオニア旋法は今のハ長調、エオリア旋法は今のイ短調となっていきます。
教会旋法では使われなかった旋法
ここまでの教会旋法には、「シ」から始まる旋法は存在していませんでした。
なぜかというと、「シ」の属音が「ファ」になり、減5度の関係になってしまうためです。
他の旋法は、属音との関係は完全5度になっています。
教会旋法では、完全5度の響きが美しいとされていたため、ロクリア旋法は教会旋法の中に含まれていませんでした。
後に、理論的には存在すると言うことで、ロクリア旋法も教会旋法に加えられました。
しかし、実際には使われませんでした。
現代の音楽の中の教会旋法
20世紀になり、ジャズにおいて長調や短調にはない響きを求めて、教会旋法が用いられるようになりました(モード奏法)。
コード進行ではなく、モード奏法を使うことで音楽の可能性が広がっていったのです。
教会旋法では使われなかったロクリア旋法も、ジャズの中で使われるようになりました。
クラシック音楽では、19世紀後半の国民楽派や20世紀の印象音楽に教会旋法は取り入れられ、音楽の幅を広げてきました。
現在では、ロックや様々な音楽の中でも使われています。
教会旋法の種類を分かりやすく解説!
現在使われている教会旋法(チャーチ・モード)には、次の7つがあります。
- アイオニアン(イオニア旋法)
- ドリアン(ドリア旋法)
- フリジアン(フリジア旋法)
- リディアン(リディアン旋法)
- ミクソリディアン(ミクソリディア旋法)
- エオリアン(エオリア旋法)
- ロクリアン(ロクリア旋法)
メジャー系の教会旋法の構成
教会旋法の中でメジャー系と言われるものが、イオニア旋法・リディア旋法・ミクソリディア旋法です。
それぞれの旋法の構成は、
- イオニア旋法は、「ド」から始まる旋法
- リディア旋法は、「ファ」から始まる旋法
- ミクソリディア旋法は、「ソ」から始まる旋法
音列の初めの音(終止音と呼ばれます)と第3音との関係は長3度です。
ハ長調の構成音上に3和音を置いた時、「ド」を根音とした3和音(トニック)、「ファ」を根音とした3和音(サブドミナント)、「ソ」を根音とした3和音(ドミナント)も、根音と第3音との関係は長3度となり、メジャーの響きになります。
曲の中に組み込んだ時、イオニア旋法は主和音(トニック)的な役割、リディア旋法は副属和音(サブドミナント)的な役割、ミクソリディア旋法は属和音(ドミナント)的な役割を持つと考えても良いでしょう。
マイナー系の教会旋法の構成
マイナー系の教会旋法と言われるものには、ドリア旋法、フリジア旋法、エオリア旋法、ロクリア旋法があります。
マイナー系の旋法の構成は、
- ドリア旋法は、「レ」から始まる旋法
- フリジア旋法は、「ミ」から始まる旋法
- エオリア旋法は、「ラ」から始まる旋法
- ロクリア旋法は、「シ」から始まる旋法
第3音との関係は、短3度です。
ハ長調の構成音上に置いた3和音で、根音と第3音との関係が短3度の和音はマイナーの響きがします(短和音)。
第3音との関係は、マイナー系旋法もハ長調の構成音上に置かれた短和音も同じだと言えます。
つまり、これらの和音上に、対応するマイナー系の旋法を組み込むことができると言えるでしょう。
教会旋法に関するまとめ
教会旋法は古代ギリシア時代に生まれ、いくつかの変遷を経て現代に引き継がれてきました。
それぞれの旋法は、長調や短調といった調性音楽にはない独特な雰囲気を持ち、様々な音楽に取り入れられています。
皆さんも、音楽を演奏する時や曲作りの際に、教会旋法の雰囲気を味わってみてください。