大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』とは?曲に込められたメッセージを読み解く
2019年4月待望のDVD/Blu-rayが発売された映画、『ボヘミアン・ラプソディ』。
DVD発売後もゴールデンウィークを過ぎても劇場でも引き続きロングランが続いています。
この記事では日本でも異例の大ヒットとなった映画『ボヘミアン・ラプソディ』とクイーンの魅力について解説します。
映画の内容についてかなり述べることになりますので、まだご覧になっていない方はネタバレにご注意ください。
QUEENの生い立ち
QUEENはイギリスのロンドンで1971年に結成されたロックバンドです。
映画でも語られているように前身バンドSMILE(スマイル)のボーカルが脱退しフレディが加入したことによって生まれました。
QUEENというバンド名もフレディの命名です。
メンバー紹介
- Freddie Mercury(フレディ・マーキュリー)/リードボーカル・ピアノ
- Brian May(ブライアン・メイ)/ギター・ボーカル
- Roger Taylor(ロジャー・テイラー)/ドラム・ボーカル
- John Deacon(ジョン・ディーコン)/ベース
この4人がオリジナルメンバーです。
フレディ逝去ののち、Paul Rogers(ポール・ロジャース)やAdam Lambert(アダム・ランバート)をボーカルに迎えてツアーをしていますが、QUEENの正式メンバーとしてはこの4人だけです。
ブライアンは映画でも出てくるように天体物理学の博士号を持つ天文学者でもあります。
イギリス生まれで前身バンドから活動していることも考えると、
フレディよりもブライアンがQUEENの中心人物であると言えるかもしれません。
また父親とともに製作したギターRed Special(レッド・スペシャル)をコインで演奏し、
様々な音色を奏でます。
ロジャーは歯科医を目指しメディカルカレッジで学んでいたこともある人です。
またクルマ好きでも知られていて、映画の中でもネタになっていました。
バンドではドラムはもちろんボーカルとしても活躍しています。
楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」のオペラパートの高音の「ガリレオ」がロジャーの担当だったのは映画でも描かれました。
ジョンは4人の中では最後にメンバーとなりました。
公式サイトでも彼が加入し4人がそろったときをQUEEN結成のときとしています。
ジョンはベースはもちろん電気関係に強く、ブライアンの使うエフェクターを作ったことでも知られています。
ブライアンのレッド・スペシャルにジョンのエフェクターが合わさってシンセサイザーも越える豊かな音色が生み出されるのです。
そしてフレディがいなければQUEENはここまで偉大なバンドにはならなかったでしょう。
他の3人はイギリス出身ですが、フレディは数奇な人生を歩んでいます。
フレディの本名はファルーク・バルサラ。
生まれはアフリカのザンジバル島でゾロアスター教徒の家庭に生まれました。
その後インドで育ち再びザンジバル島にもどりますが17才で家族とロンドンに移住します。
フレディの死後、彼の母親が「将来は山にこもって曲を作ると言っていた。」と語っていることから音楽への思いは子供のころから強かったのでしょう。
ただし音楽だけではなく、美術的センスも優れていました。
王家の紋章のようなQUEENのエンブレムはフレディのデザインです。
この4人の才能がうまく絡み合ってはじめてQUEENというバンドが完成すると言えるでしょう。
QUEENの楽曲の特徴
QUEENはロックバンドと分類されますが、単なるロックバンドではありません。
当時イギリスで人気のあったプログレッシブ・ロックとグラム・ロックの要素を兼ね備えたバンドと言えます。
当時QUEENを初めて見た人はその見た目に圧倒されたと言います。
Tシャツにジーンズのアーティストが多い中、片足が黒で片足が白のスラックスで歌うフレディは衝撃的だったでしょう。
しかし見た目以上にブライアンの多彩なギターの音色とフレディの圧倒的な歌唱力によりQUEENの楽曲は魅力的になっていると言えます。
では、『ボヘミアン・ラプソディ』とは一体?
1975年に発表された楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」はイギリスで9週連続1位を獲得しました。
さらにフレディ逝去の際にも再び1位になっています。
しかし映画にもあったように最初はシングルとして発売することすら危ぶまれていました。
当時は「ラジオでかけてもらう」ことが非常に重要であることは紛れもない事実でした。
さらにシングルレコードが一般的な7インチ45回転で発売するには片面に収録できるのは5分前後という物理的な問題もあったと思います。
80年代には12インチ45回転の12インチシングルも一般的にはなってますが、この時代には選択肢としてなかったのでしょう。
それでも1人のDJがラジオでかけ、リスナーが後押ししシングルレコードとしてリリースされました。
QUEENの代表的な楽曲の一つ
楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」は1975年に発表された、QUEENの代表曲の一つと言えます。
作詞・作曲ともにFreddie Mercuryで、複雑な曲の全体像はFreddieしか分かっていなかったため、彼はずべてのレコーディングに立ち会わなければならなかったそうです。
また2002年にはギネス社のアンケートで「イギリス史上最高のシングル曲」として「イマジン」などを抑えて1位となりました。
つまりイギリスを代表する楽曲と言っていいでしょう。
曲に込められたメッセージ・意味
それでは「ボヘミアン・ラプソディ」に込められた意味について考えてみましょう。
ただしフレディは生前、歌詞の意味について語りませんでした。
「聴き手が感じ取る」ことを望んでいたようです。
そしてブライアンをはじめ関係者もその意味については語っていません。
フレディの母親もフレディに教えてもらえなかったと答えています。
そういう点で「こういう意味だ」と決めつけてしまうのは違うでしょう。
名画が様々な解釈をされるように、この曲も聴き手によって様々な受け取り方があっていいのです。
原題は『Bohemian Rhapsody』
この曲を受け止めるために知っておくべき知識について少し解説します。
原題は英語でそのまま「Bohemian Rhapsody」です。
「Bohemian」は辞書的な意味では「ボヘミア人の」となります。
かつてジプシーやロマと言った放浪の民がボヘミア地方から来たことから、「慣習にとらわれない自由な民」をボヘミアンと呼ぶようになりました。
フレディも当時その影響を受けていたと考えられます。
また「Rhapsody」は日本語では「狂詩曲(きょうしきょく)」と言います。
狂詩曲というのは異なる曲調をメドレー形式でつなげたりするような自由な形の楽曲です。
実際にこの楽曲も次のような構成になっています。
- アカペラパート
- バラードパート
- オペラパート
- ハードロックパート
- バラードパート
これらをまとめると「Bohemian Rhapsody」は「世俗や慣習にとらわれない人間による自由な形式の楽曲」ということでしょう。
そう考えると歌詞を読む時も聴き手は常識にとらわれずに受け止める必要があります。
歌詞について(一部和訳)
それでは「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞について見てみましょう。
2のバラードパートの最初は次のようになっています。
Mama, just killd a man.
Bohemian Rhapsodyのストーリーの実質的なはじまりの部分です。
この部分は口ずさめる人も多いのではないでしょうか。
ここは直訳すれば「ママ、人を殺してしまったんだ。」となります。
この部分を文字通り殺人者による告白と考えて、続く内容を読んでいくのも一つの解釈です。
また解釈する人によっては「殺した相手は過去の自分自身」としてフレディがゲイであることを告白した歌ととらえています。
どちらにしろ、ここから物騒な内容の歌詞が続いています。
しかし私個人としてはカギは曲の最後にあると思っています。
Nothing really matters to me
いろんな方の和訳を見ていると「僕にとってどうでもいい」としている人もいます。
私個人としては「私にとって(to me)現実に(really)問題となる(matters)ことは何もない(Nothing)」という感じではないかと思っています。
そして最後に次のように締めくくります。
Anyway the wind blows
これは「とにかく風が吹く」ということでしょう。
最後に歌詞にはありませんが「...」のような余韻が感じられます。
ここで私が感じたのは「諸行無常」です。
また「国破れて山河あり」という言葉も思い浮かびました。
歌の最初はエキセントリックな殺人者の話で聴くものを惹きつけ、陰鬱な雰囲気を歌います。
しかし最後には「そんなことも何も大事なことではない。ただ風が吹くだけだ」と言っているように思います。
つまり「人生には困難なことも多くあるかもしれないが、そんなことは本当は何ともないことなんだ。
最後にはすべて消え去って風が吹くだけだ。」
と言っているように思います。
そして人生の困難なんて重要なことではないのだから、「まわりにふりまわされず自分の信念に従って自由に生きるボヘミアンとしてラプソディのように自由な形で人生を生き抜こう。」と教えてくれているのかもしれません。
まとめ
楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」が発売された1975年はイギリスは不況の中でしょっちゅう停電が起こるような状況でした。
そんな時に人々は何かにイライラしていたかもしれません。
しかしこの曲を聴いて「暗い状況はいつでも突破できるのだから、何も苦しむことなんてない!」という思いを6分で追体験したのだと思います。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」では苦しむフレディが最後にはライブエイドの大舞台で歌い上げるという生き様を一緒に歩むことができます。
その体験が挫折しそうになることもある自分自身と重なり合い、勇気づけられるのかもしれません。
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