ベートーベンの「月光」を解説!難易度・おすすめCD・世界観を紹介!
『月光』はベートーベンの曲の中でも有名な曲ですし、クラシックに馴染みがない、という方にもメロディーは馴染みがあるものかと思います。こちらではベートーベンの『月光』を深く解説。曲の背景やタイトルの由来、難易度をまとめている他、おすすめのCDもご紹介しています。
ベートーベンの「月光」とは?
『月光』はベートーベンの三大ソナタの一曲
ベートーベンの『月光』は特にクラシックピアノに詳しくなくても、ご存知の方は多いと思います。この『月光』はベートーベンが1801年に作曲したもので、第1楽章から第3楽章まであります。
しかし一般になじみが深いのは第1楽章かと思われます。こちらでも第1楽章を中心にご紹介したいと思います。
『月光』はピアノソナタ第8番『悲愴』、第23番『熱情』とともに、ベートーベンの三大ソナタとも呼ばれています。ベートーベンのソナタは、三大ソナタに限らず難易度が高く、全音から出ているピアノピース楽譜ですと「E」にランクされています。
しかし難しいのは第2楽章、3楽章で、1楽章だけでしたらそんなに難易度は高くありません。中級くらいのテクニックがあれば、練習をすれば弾けるものだと思います。
『月光』というタイトルはベートーベンがつけたものではない
『月光』『月光のソナタ』というのは実はベートーベンがつけたものではありません。この作品は元々はベートーベン自身によって「ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 『幻想曲風ソナタ』」と名づけられていました。
しかしベートーベンの死後、ドイツの音楽評論家で詩人でもあるルートヴィヒ・レルシュタープがこの第1楽章を示して「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と表現したことが発端となり、『月光のソナタ』という呼び方が定着していくようになりました。
レルシュター以前にも、ベートーベンの弟子であったツェルニーが「夜景、遥か彼方から魂の悲しげな声が聞こえる」と評していました。そういったところから、この曲は人気となりましたが、ベートーベン自身はあまりそれを良しとはしていなかったようです。
ベートーベンの「月光」の世界観
当時の想い人に捧げられた曲とも言われる
この『月光』は1801年、ベートーベンが30歳の時の作品です。彼はこの曲を伯爵令嬢であったジュリエッタ・グイチャルディに献呈したとされています。彼女は当時14歳で、さらにはベートーベンの弟子でもありました。そんな彼女にベートーベンは大層惚れこんでしまったようです。
1801年に彼の友人であるヴェーゲラーにあてた手紙に、彼女のことが書かれてありました。両者はお互い愛し合っていたようですが、しかし残念ながら身分の違いが2人を引き裂くこととなりました。彼女は別の男性を結婚し、ベートーベンのもとを去っていくことになります。
友人に手紙を送った年と作曲の年が同じですから、彼女へ贈る意味で作ったのであれば、彼女のことを曲に込めているだろう、と推測できますよね。叶わない恋だと知りながら、だとすれば、この暗く切ない旋律も、なるほど、と思えます。
『月光』が使われている作品
『月光のソナタ』はクラシックではよく知られている、またその曲の雰囲気などから、現代においてさまざまなところに使われています。
有名なところではX-JAPANの『ALIVE』という曲のイントロ部分で使っていたり、SEKAI NO OWARIが『Love the warz』で使用、またアニメ「名探偵コナン」では「ピアノソナタ月光殺人事件」において第1楽章と第2楽章が流れるシーンがありますし、フィギュアスケートの宇野昌磨選手が演技に『月光のソナタ』を使用していますね。
『月光』にまつわる話
19世紀にヨーロッパで創作され、当時の音楽雑誌に掲載されたものとして『月光の曲』という物語がありました。これは日本では尋常小学校の国語の教科書に1892年に紹介されています。
あらすじとしては、ベートーベンが月の夜に街を散歩していると、とある家の中から綺麗なピアノの音が聴こえてきてきます。見るとそれは盲目の少女が弾いていたもので、とても感動したベートーベンはその気持ちを即興で演奏した、というもの。それを元にして書き上げたのが『月光のソナタ』である、というものです。
しかしこれはもちろん、創作なので本当のエピソードではありません。時々この話が引用されることもありますが、架空のお話である、ということを覚えておいていただければ、と思います。
ベートーベンの月光のおすすめ動画
『月光のソナタ』第1楽章
『月光のソナタ』というとこの第1楽章をさすことが多いですね。難易度としてはさほど難しくありませんが、感情を込めるように弾くように心がけましょう。
三連符が続きますがこれはあくまで伴奏部分なのでメロディーを響かせるようにし、三連符のほうは静かに弾くようにしましょう。荘厳な雰囲気になるようにしたいですね。
『月光のソナタ』第2楽章
第2楽章は第1楽章とはうってかわって、明るくはねるような旋律が特徴の曲です。スタッカートとレガートの部分の繰り返しが少々弾きづらいかもしれませんが、慣れてリズムをつかんでくると弾けるようになってきます。シンコペーションが特徴でもありますが、このリズムに早めに慣れることも必要ですね。
『月光のソナタ』ではこの楽章が一番好きだという方も多く、実は人気がある曲なのです。
『月光のソナタ』第3楽章
1楽章とも2楽章とも全く違う、激情にあふれた曲で、3曲の中でも最も難易度が高い曲です。ショパンの『幻想即興曲』はこの曲と雰囲気が似ている、とも言われています。
ともかく指のテクニックが重要なので十分指をならしてから挑みましょう。ゆっくり丁寧に、ミスタッチのないように弾けるようになってからテンポをあげていってください。
ベートーベンの月光のおすすめCD
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ「悲愴」「月光」「熱情」/ エミール・ギレリス
「ミスター・ベートーベン」とも呼ばれた、ロシアのピアニスト、エミール・ギレリスによる演奏のものです。『月光』の他、『熱情』、『悲愴』と、三大ソナタが一気に楽しめる1枚となっています。ギレリスのピアノはとてもおすすめですよ。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集/ マウリツィオ・ポリーニ
ポリーニもまた、ベートーベンの曲といえば、で挙がるピアニストの1人です。こちらのCDはベートーベンのソナタ全32曲が収録されているもので、多少価格もはりますが、とても充実した、聞きごたえのある内容となっています。ベートーベンのソナタを堪能したい!という方にはおすすめです。
まとめ
こちらでは、ベートーベンの『月光』について、楽曲の背景やタイトルの由来、そしておすすめの動画やCDなどをご紹介しました。
クラシックの曲を普段聴かない、という方にも、ベートーベンの『月光』の世界観に触れていただき、少しでも興味を持っていただければ、と思います。