音楽記号の「タイ」と「スラー」の違いと見分け方をご紹介!
楽譜の読み方で、初心者にとって見分けのつきにくい「タイ」と「スラー」。この2つの音楽記号はとてもよく似ていますが、記号が指示する内容は大きく異なります。違いを説明できますか?
ここでは、「タイ」と「スラー」の違いと見分け方をご説明します。
音楽記号のタイとスラーの違い
タイとは?
タイとは、2拍子や3拍子といった曲の拍子感を変えずに、音を長く伸ばすことを表現するための記号です。
楽譜での書き方は、下図の青枠部分のように、同じ高さの2つの音符を弧線で繋いで表現します。
読み方は、タイで繋がれた音のうち、2つ目の音は弾き直さず、伸ばしたままにします。
ただし、次の図のように、同じ高さの2つの音符が弧線で繋がっていても、それらの音符にスタッカートが付いている場合はタイではありません。これは、スラーとスタッカートが併用された記号という扱いで、この記号の名前はメゾスタッカート(ポルタート)です。
なお、和音でタイを表現したい場合は、下図の青枠部分のように、和音の構成音の1音1音を弧線で繋げます。
ちなみに、小節をまたいだタイで、タイの最初の音に#や♭などの臨時記号が付いている場合、小節をまたいだ後の音にも、臨時記号は有効です。(通常は、臨時記号は同じ小節内だけで有効です。)
スラーとは?
スラーとは、高さの異なる2つ以上の音符をレガートに(なめらかに)演奏する場合に用いる記号です。
楽譜での書き方は、下図の赤枠部分のように、高さの異なる2つ以上の音符を弧線で繋げて表現します。
なお、和音でスラーを表現したい場合は、下図の赤枠部分のように、和音を1本の弧線で繋げます。
なぜ、タイが必要なのか?
タイは、音を長く伸ばすことを表現する記号だと述べましたが、それでは、タイを使わずに該当する長さの音符を使えばいいのではないかと思いませんか?
タイで表現するのには理由があるのです。
次の楽譜を見てください。
これは、ドビュッシーのピアノ曲のベルガマスク組曲 「月の光」の冒頭です。
拍子は8分の9で、3拍子として扱う曲です。(1拍=8分音符を3つ分)
1小節目の1拍目の終わりから2拍目にかけてタイが記されていますが(上図の青色枠内)、ここを同じ長さの音符、2分音符(=8分音符+符点4分音符)で書くと下図のようになります。
この譜面からだと、拍子がわかりにくいですね。3拍子の曲に見えますか?
音楽では拍子はとても重要で、譜面から拍子感を明確にするために、タイが使われるのです。
タイとスラーの違い
演奏方法の違い
タイで書かれた音符のうち、2つ目の音は弾き直さず、伸ばしたままにします。
一方、スラーで書かれた音符はなめらかに演奏します。
楽譜の表現上の違い
タイは、同じ高さの2つの音符を弧線で繋げて表現します。
一方、スラーは、高さの異なる2つ以上の音符を弧線で繋げて表現します。
タイとスラーの見分け方
ここからは、楽譜上のタイとスラーの見分け方についてご紹介します。
同じ高さの2つの音符が弧線で繋がっている場合はタイ
上図の青枠部分の弧線がタイを表します。
ただし、弧線で繋がっていても、その音符にスタッカートがついている場合は、タイではありません。メゾスタッカートです。
高さの異なる2つ以上の音符が弧線で繋がっている場合はスラー
上図の赤枠部分の弧線がスラーを表します。