【音楽用語】平均律/純正律とは
音楽を勉強し始めると「平均律」と「純正律」という言葉に出会います。どちらも楽器の音程を表す言葉ですが、楽器をやらない限り体験することはないと思います。
今回は、この「平均律」と「純正律」についてどのような意味なのか見てみましょう。
平均律/純正律とは
楽器をやっていた方の中に、調律が合ってないと指揮者や指導者の方に言われたことがありませんか?
ちゃんと楽器店で調律したのに・・・という体験をされた方もいらっしゃると思います。
この時に調律が「平均律」で調律されたため、他の楽器と音を合わせたときに濁って聞こえていたのかもしれません。
まずは音の高さ・・・音階のお話
音の高さを表すのに音階が使われます。
いわゆるドレミファソラシドです。
正式には、半音もあるので1つの単位としてドから次のドまで12個の音階が存在します。
では、この音階はどのように決められたのでしょうか。
ここでギターのような弦を想像してください。
この弦を弾くと音が鳴りますよね。
次に、この弦の長さのちょうど2/3の長さの弦をもう1本用意します。
この短い弦を弾くと最初の長さの弦の音をドとするとそれより高いソの音が出ることが発見されました。
そして、この2音が同時になるととても響きが良いことから、当時の人々はこの2つの響きを多用していました。
さらに今度は最初の弦をソとなるように決めると、2本目の2/3の弦はレの音となります。
このように2/3ずつ音の組み合わせを作っていくと、12番目にドに戻ってきます。
この12個を音の低い順に並べたものが音階となります。
この弦の長さの2/3ずつで決めた音階のことを「純正律」と呼ぶのです。
これでめでたく完成とはいかなかったのです
純正律は先ほどの説明の通り、響きがきれいな2音ずつを組み合わせていますので、和音を鳴らすように音が重なり合った場合、とてもきれいな響きになります。
仮に音の高さが少しでも狂うと音が重なり合ったときにうねり(音が揺れるように聞こえる)を生じ、とても聞きづらいものになります。
ではこれで一件落着かというと、実は純正律には大きな欠点がありました。
先ほどは12番目に元のドに戻る、という話をしましたが、実は12番目に戻ってきたドは最初に出発したドよりも少し高い音だったのです。
音楽に詳しい方ですと、24セント高いということになりました。
つまり正確には「元に戻れない」ということです。
少しくらい、と言いたいところですが純正律の良いところは「音の響き」です。
何が問題になるかというと、今回はドからドのハ長調は良くても、ソから出発するト長調の音階を使用したいときは、またソから2/3・・・ともう1度12音を配置する必要があります。
なぜなら同じ高さの音の戻ってこないからです。
すなわち、純正律で音階をつくると「調性」が無限に必要になってしまうのです。
そこで生まれた平均律
そこで考え出されたのが平均律です。
純正律で1オクターブ上に行くと24セントずれるのであれば、1オクターブの高さはきっちりと合わせて、あとは12音で平均的にずらしてしまおう、というものです。
つまり、1音1音は微妙にずれるものの、各音階のずれは平均的なので、オクターブ変化しても、転調しても全く響きが変わらない、ということになりました。
このような結果、大半の音楽は平均律で作られることになったのです。
別名「妥協の産物」とも言われます。
実際に平均律と純正律の音を比べてみましょう
では、実際に平均律と純正律の音がどのように違うのか、聞き比べてみましょう。
音のわずかなずれがうねりとなるところを体感してください。
平均律/純正律の使い方
たくさんの音が鳴るときは平均律でも気にならない
平均律のわずかなずれもたくさんの音が鳴ってしまえば人間は感じにくい、と言われています。
例えば、ピアノやギターなどは1つの楽器でも複数の音が出せたりしますので、平均律で調律されていても問題となることは少ないです。
逆に言うと、平均律で調律することで調を自由に移動したりでき、バラエティに富んだ演奏ができるという利点もあります。
また、オーケストラやロックバンドのようにいろいろな音が同時になる場合も平均律の影響となる音のずれが目立ちにくいといわれています。
聞く人が聞けばわかるのでしょうが、この辺りがまさに妥協の産物と言われる所以でしょうか。
単音楽器ならやはり純正律を!
バイオリンなどの楽器は単音で演奏されることが多いため、和音を表現する場合は複数の人数で演奏する必要があります。
こういう場合はやはり響きが大事なので、純正律で演奏したいものです。
特にバイオリンのように弦を抑える部分が仕切られてない、つまりフレットがないものは音程を自由に調節できますので、純正律で演奏するのに適した楽器です。
こういう場合は、純正律による演奏で美しいハーモニーを奏でることができるのです。
純正律を使うために
吹奏楽や管弦楽などで楽器を演奏しようとする場合、まずは自分のパート部分の練習をすることが多くなると思います。
その際、ピアノなど平均律で調律された楽器と合わせてしまうと、純正律による演奏ができません。
したがって、まず大事なことは純正律の響きを体で覚えることが大切です。
純正律を体得するためのツールをご紹介します。
楽器の音程合わせに必要なチューナー KORG TM-60
楽器演奏者の必要アイテムであるチューナーですが、平均律に調整されるチューナーも多くあります。
その中でKORGのTM-60はまさに純正律演奏にために開発されたチューナーです。
商品のメーターの上に三角の印が3つあるのがわかるでしょうか。
しかも左右非対称です。
実はこれが純正律の3度を表すマークなのです。
左が長3度、右が短3度上を表すようになっています。
つまりハ長調のドを真ん中に来るようにした後、長3度すなわちミの音が左の三角に合うように調整すれば純正律の長3度になるわけです。
これをつかって、純正律の音階を演奏できるようにするわけです。
平均律/純正律が切り替えられる電子楽器で和音の響きを学ぶ
続いては、純正律の和音を耳で覚えるために、平均律/純正律を切り替えることができるキーボード2品です。
どちらも平均律/純正律の音が出せる楽器です。
また、いろいろな楽器の音色が出せるので、例えばバイオリンやトランペットといった楽器の音色で純正律の和音がどうなるか、耳で体験できます。
これを使って和音を耳から学んで、自らの演奏に活かしてほしいです。
その他に、ピッチやテンポといった練習も自分の楽器だけで行うより、こういった楽器を相手にすることでよりモチベーションアップにつながるのではないでしょうか。
代表としてRolandのJUSTYの機能を紹介します。
先ほどの音色の利用のほかにiPad等による遠隔操作があります。
これは例えば指揮者席の先生がいちいち楽器のところに行かなくても、楽器を発音させてハーモニーを確かめるといった使い方ができます。
特に全体練習における各パートの確認にいちいち先生が移動する手間も省け、密度の濃い練習が可能になるのではないでしょうか。
まとめ
以上、平均律と純正律について見てきましたがいかがでしょうか。
なかなか普段楽器を使わない方にとっては馴染みのない用語だったと思います。
平均律も純正律も突然生まれたわけではなく、特に平均律は純正律が誕生後に長い時間をかけて試行錯誤の上生まれたものです。
どちらが良いというのではなく、2つの特徴をよく知ることでうまく使い分けてほしいです。