三味線に使われているのは猫皮、犬皮?!材料について調べてみた!
三味線は古くから日本に存在する楽器ですが、構造には動物の皮が使われていることをご存じでしょうか?この記事では、三味線に使われている動物の皮にスポットを当てて、その特徴を紹介します。すでにご存じの方も、改めてその皮の役割を確認してみてくださいね。
古くから伝わる、日本の有棹弦楽器「三味線」
三味線は日本の音楽文化を語る上でも、欠かせない楽器のひとつです。四角い胴体に長い棹(さお)が特徴的で、棹にピンと張られた弦をイチョウの形をしたバチで弾いて演奏します。
三味線といえば、「津軽三味線」が有名かと思います。津軽三味線が有名なのだから、東北地方が発祥の楽器なのかと思いきや、三味線は戦国時代に現在の沖縄県から伝わった三線がベースになっているといわれているのです。三線をもとに改良を続けて、江戸時代に完成されたものが現在でも使われ続けています。
そんな三味線には、動物の皮が使われていることをご存じですか?
どの部分に、どのような目的で使われているのか気になりませんか?
今回は、三味線に使われている材料にスポットを当てて見ていきましょう。
三味線の種類
三味線は大きく分けて3種類あり、それぞれ使用目的が異なります。使用する皮の種類も違うので、特徴を知っておくとどのような音色が楽しめるのかが分かってきますよ。
①細棹三味線
細棹三味線は長唄三味線とも呼ばれ、棹の長さがおよそ25cmと、三味線の中では比較的短い部類です。歌舞伎の音楽において、使用されることが多い三味線です。
②中棹三味線
中棹三味線は棹の長さがおよそ26cmで、中間サイズの三味線です。琴や尺八などとの合奏を目的に作られた三味線で、民謡の伴奏としても用いられています。
③太棹三味線
太棹三味線は棹の長さおよそ27cmで、一番大きい三味線です。サイズが大きいだけあり、音にも迫力があり、屋外においてもよく響きます。有名な津軽三味線は、この太棹三味線に分類されています。
三線との違い
三線は、中国の楽器「三弦」をもとに作られた琉球楽器のひとつです。沖縄県の文化を語る上で欠かすことはできず、2018年に伝統工芸品として経済産業省より指定を受けました。三味線と同様にさまざまな大きさのものが展開されていますが、大きな違いは使われている皮にあります。三線にはニシキヘビが使われているのです。
三味線の皮には犬と猫の皮が使われている!
三味線に使われている素材に犬と猫の皮が使われていると聞いて、驚く人もいるでしょう。少々残酷なようにもとれますが、これらの動物の皮を用いるのには、きちんとした理由があります。
三味線の胴の大きさはおよそ19cmほどです。この大きさと都合のよい厚みが出せるのが犬と猫といわれています。牛や馬では、皮自体が大きすぎるうえに入手が困難なので、比較的入手しやすい小型の動物として犬と猫の皮が使われるようになりました。
犬皮の特徴
犬の皮は比較的厚みがあって丈夫なので、重みのある奥深い音色が出せます。丈夫な分やや硬いので音にムラができることが多く、おもに練習用の三味線に使われていますが、津軽三味線などの大きい音が特徴的な太棹三味線にも使われています。材料としては背中の部分の皮を使いますが、犬1匹でいくつかの三味線を作ることが可能です。
猫皮の特徴
猫の皮は犬に比べると薄くて柔らかく、抜けるような軽やかな音が出ます。猫の皮はとても高価で手に入りにくいことから、舞台用の高級な三味線にのみ使われています。猫1匹から、ひとつの三味線しか作れないことも、非常に価値があるものというのが伝わってきますね。現在は犬も猫も、皮はすべて輸入品のようです。
ほかに使われている動物の皮はある?
現在は、犬や猫のほかにカンガルーの皮を使うことがあります。カンガルーの皮は犬に負けないくらいの厚みがあり、滑らかな材質なので音がよく響くのが特徴です。犬の皮に比べると低音が響きにくいのが難点ですが、皮の面積が大きいため、今後、使う機会も増えてくるでしょう。
合皮もある
合皮は、布をもとに作られた皮で人工皮とも呼ばれています。とくに高音がよく響き、破けにくい特徴を持っていますが、熱や雨に弱いのが難点なところです。近年において、動物愛護の観点から使われることがありますが、犬の皮に比べるとやや割高で改良の点が多いこともなかなか主流になれない理由でしょう。
三味線の皮はどうやって張るのか?
三味線に使う皮は、事前にしっかり乾燥させたものを使います。これを水で湿らせながら、もち米をねってノリ状にしたもので張り付けていきます。皮が破れないように、でも、破れるのではないかと思うくらいギリギリに引っ張りながら張り付けていくので、まさに職人技といえますね。適当に張ったものでは、いい音が出ないのです。
もち米をねったノリは非常に強力な粘着力を持っていますが、湿気や水気に弱く、水分を含むと剥がれてしまいます。保管・保存には十分気をつけましょう。
皮は定期的に張替えが必要
三味線の皮は、およそ2年で寿命を迎えます。皮が緩んでくると、いい音が出せないので、定期的に張り替えましょう。セルフメンテナンスもできなくはないですが、道具を入手するのも大変ですし、なにより皮の張り方にはコツが必要です。ここは、プロに依頼したほうが安心ですよ。
三味線の保管方法
三味線を保管するうえで、最も気をつけなければならないことは「湿気」です。これは三味線のすべてのパーツに共通して言えることなのですが、とくに梅雨時期や冬の結露には注意が必要です。
三味線にはもち米で作ったノリのほかに、膠(にかわ)と呼ばれる動物の骨などを煮溶かした液が使われています。この膠は三味線の木材部分をつなぎ合わせる接着剤の役割を担っていますが、湿気に弱く外れやすいのです。万が一外れた場合は、素人では修理が困難なので、プロに依頼しましょう。
また、三味線は急な気温の変化も苦手なので、これらに気をつけて必ず和紙製の保存袋に入れて保管してくださいね。
乾燥にも気をつける
三味線は湿気に弱いと同時に、乾燥も苦手な楽器です。乾燥した状態が続くと、棹が割れる可能性があります。また、乾燥している場所から湿気が強い場所へ移動させることでも、弦が切れたり、バチがひび割れたりすることもある、三味線は非常に繊細な楽器です。取扱いに慣れるまでは面倒と感じるかもしれませんが、大切に使っていきましょう。
乾燥剤がおすすめ
三味線に限らず、和楽器を保管するときは乾燥剤を使うのがおすすめです。楽器にあった乾燥剤が販売されており、三味線には胴を保護するような大きさの三味線用を使いましょう。
まとめ
三味線に、犬や猫の皮が使われていることに驚いた人もいるでしょう。普段、何気なく見ている楽器でも、掘り下げればその奥深さが面白く、新しい発見があるものですね。なぜ、犬や猫の皮が使われているのか理由を知れば、三味線の音色の楽しみ方も変わってくるのではないでしょうか。これを機に、三味線の厳かな世界に足を踏み入れてみてください。