【キンモクセイ】転機の一曲となった『二人のアカボシ』とは?背景や想いを独自に徹底考察

キンモクセイと言えば二人のアカボシが有名でしょう。ノンタイアップながらオリコン10位にランクインし、キンモクセイは2002年の紅白出演を果たします。二人のアカボシは懐かしさの中にヒットの要素が盛り込まれた名曲です。今回はその魅力について迫りましょう。

記事の目次

  1. 1.10年の活動休止を経て、再スタートを見せたキンモクセイ
  2. 2.キンモクセイが世に知れ渡るきっかけとなった『二人のアカボシ』
  3. 3.キンモクセイの『二人のアカボシ』は懐かしいサウンドに乗せた別れの歌
  4. 4.『二人のアカボシ』をヒットさせたキンモクセイのその後
  5. 5.まとめ

10年の活動休止を経て、再スタートを見せたキンモクセイ

キンモクセイと言えば、『二人のアカボシ』とあたしンちの主題歌『さらば』が有名でしょうか?

数々の名曲を残していますが、世間的には一発屋、もしくは二発屋と思われているかもしれません(ファンの方ごめんなさい)。

キンモクセイは1998年にボーカルの伊藤俊吾を中心に神奈川県相模原市で結成されたバンドです。

2001年に1stシングル『僕の行方』でメジャーデビューします。

2008年には活動を休止していますが、2018年10月、実に10年ぶりには活動を再開しています。

キンモクセイが世に知れ渡るきっかけとなった『二人のアカボシ』

二人のアカボシは2002年1月9日にリリースされた彼らの2ndシングルです。

この曲が作られた経緯について伊藤俊吾はこう語っています。

当時はまだ彼女だった前妻に、(バンドの)メジャーデビューが決まったのに別れを切り出されてしまい、どうしても彼女を見返したくて作った曲なんです(笑)。

結果的に伊藤を中心としたメンバーは二人のアカボシという名曲を作り上げます。

オリコンは10位を記録し、2002年の売り上げは49位となりました。この曲は大きなタイアップもないにも関わらず大きな反響を呼び、多くのラジオで流される事となりました。当時のラジオで耳にして気に入った人もいるのではないでしょうか。

二人のアカボシはその後も皆に支持され、その年の紅白歌合戦にも出演。彼らは一躍トップアーティストの仲間入りを果たしました。

彼らが売れたのは良かったのですが、伊藤は「売れ線を狙いすぎていないか?」と一抹の不安を抱いていたそうです。

『二人のアカボシ』のPV

二人のアカボシのPVは、演奏するメンバーと、夜のラーメン屋の屋台でラーメンを待つ女性が交互に映し出されます。とにかくラーメンを作る描写が妙に丁寧であり、食リポの動画かと思わせるレベル。

女性は作詞家歌手の竹内めぐみ、ラーメン屋の店主は本物の店主が演じています。

ちなみにYouTubeのPVは残念ながら2分で終了していますが、この後も丁寧なラーメンの描写は続きます。

流れとしては曲の終盤でラーメンが完成し、女性は美味しそうにラーメンを食べながら涙を流します(右薬指に指輪あり)。食べ終わった後で女性はその場を去り、店長がタバコを吸ってPVは終わります。

前知識がないとさっぱり分からないPVですが、ジャケットと歌詞を見れば何となく分かります。

二人のアカボシ

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こちらが二人のアカボシのシングルのジャケットですが、何か思い出すものはありませんか

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そうです。明星食品のチャルメラのパッケージです。ジャケットのメンバーはチャルメラおじさんをモチーフにしています。

CDの盤面は上から見たラーメンの写真、初回限定版はインスタントラーメンの袋仕様となっていたのです。

アカボシと明星食品をうまく結びつけた、遊び心に溢れた仕様となっています。握手券やDVDがない時代。こういう遊び心でCDを買うリスナーを増やしていたのです。

ちなみに二人のアカボシのヒットを祝って、地域限定盤パッケージの二人のアカボシが2万枚限定で販売されたらしいです。

これだけラーメンを重視したジャケットなので、PVにも納得がいきますね。

キンモクセイの『二人のアカボシ』は懐かしいサウンドに乗せた別れの歌

ではPVの女性は何故最後に泣いたのでしょうか?それは歌詞に由来するものと思われます。

二人のアカボシはそのメロディーやサウンドに注目しがちですが、歌詞は非常に文学的です。風景や二人の描写の意味を一つ一つ読み解くと、別れの物語が見えてきます。

アカボシですが、漢字では明星と書きます。これは金星の事を指しており、夜明けに見える「明けの明星」と日暮れに見える「宵の明星」と区別されます。

二人のアカボシは夜明けの街をテーマにしているので、明けの明星の事を指しています。明けの明星が見られるのは大体午前4〜5時頃だと言われています。

二人のアカボシの歌詞考察

それでは歌詞の考察に移ります。あくまでも一つの考えとして留めていただければ幸いです。

夜明けの街 今はこんなに
静かなのにまたこれから始まるんだね

眠る埋立地(うみべ)と 化学工場の
煙突に星が一つ二つ吸い込まれ

舞台は夜明けの街です。

具体的な地名はありませんが、埋立地と化学工場という描写があります。彼らの出身地が神奈川の相模原という事から、横浜と予想します。横浜は埋立地を広げて発展してきた歴史があり、海沿いの工業地帯でもあるからです。

煙突に星が吸い込まれるという描写は、星が東へ移動するにつれ、煙突の後ろに重なってしまった事を表しています。

つまり語り手は星が動いているのが分かるくらい、ずっと同じ場所にいる事を意味します。

沢山並んだ 街の蛍達も
始まる今日に負けて見えなくなってゆく
君とも離れることになる

街の蛍達とは街灯の事ですね。朝が来ると、街灯は消されます。

歌詞では街の風景をずっと説明してきましたが、ここで物語は核心に触れます。

『君とも離れることになる』と。

本来夜明けとは、希望的意味で語られる事が多いですが、この歌詞では『星が吸い込まれる』『今日に負けて』等、ネガティブな意味で語られています。

『夜明けの街 今はこんなに静かなのにまたこれから始まるんだね』という言葉も、希望ではなく別れの意味として語られている事がようやく分かります。

あの高速道路の橋を 駆け抜けて君つれたまま
二人ここから 遠くへと逃げ去ってしまおうか

消えそうに欠けてゆく月と 被さる雲はそのままに
二人のアカボシ 遠くへと連れ去ってしまおうか

二人の前には高速道路が見えるのでしょうか?語り手は『あの高速道路の橋を渡り、君を遠くへと連れ去りたい』と考えています。つまり駆け落ち…という意味でしょうか?

そしてサビでは『しまおうか』と言うフレーズがありますが、これは古語では"反語"と言われます。

〜できるだろうか?いや出来ない

というように、自問自答に近い表現です。

君を連れ去ってしまおうか?いや出来ない。

逃げ去ってしまおうか?いや出来ない。

と語り手は自問自答をしており二人の別れはもう止められるものではないと分かっているのです。

橋の継ぎ目と 二人に届く
電波には懐かしいあのメロディーが

聞こえてるかい? みだれ髪に
しみるようミヤウジヤウ ハルカカナタへ

二人が聴いているラジオからは懐かしいメロディーが流れます。これは二人の思い出の曲なのでしょうか?

その後、唐突に出てくる『みだれ髪 ミヤウジヤウ』というフレーズは最初は『ん?』となりますが、これは与謝野晶子の詩集『みだれ髪』からきています。

与謝野晶子は与謝野鉄幹と恋に落ち、恋の気持ちをみだれ髪に残しています。しかし与謝野鉄幹には妻子がいたのです。これは当時もセンセーショナルな話題となりました。

ミヤウジヤウは当時の明星の古い仮名遣いの事です。

この部分は自分達の境遇を与謝野晶子と与謝野鉄幹に置き換えて歌っていると思われます。

つまりこの2人の恋も、決して祝福されるものではないという事が分かります。

見渡せば青く続く信号機が
二人の想いを照らせばいいのにな
明日の僕らは何処にいる?

見渡すと、青信号が続く道が見えます。『このまま遠くへ行ってしまいたい』と二人は考えています。

夜が明ければ離れ離れになる二人です。この青信号は分岐点とも言えます。別れを選ぶのか…この信号を渡るのか…自分達も分からないからこそ、

『明日の僕らはどこにいる?』

と疑問形で語られているのです。

また今日も汚れてく街は 蝕む煙を吐き出す
君の知らない遠くへと連れ去ってしまおうか

瞬かない星が一つ 夜明けの街に消えてゆく
二人ここから 宛てのない明日を探そうか
 

2題目のサビですが、『今日も汚れていく街』と書かれています。許されない恋への後ろめたさという事でしょうか?

夜が明け始め、瞬かない星(明けの明星=アカボシ)が消えていきます。時間は朝の5時を過ぎたという事ですね。

語り手はここで『宛てのない明日を探そうか』と反語ではなく、決意として歌っています。

『駆け落ちをしよう』という覚悟が出来たのでしょう。

僕の決意と伝えきれない想いが 街の音に消えないうちに

朝焼けの水蒸気が 隣の空を彩る
懐かしいメロディーは 風と共に終わる
君の髪の毛が震えてる

実は語り手が"僕"というのは今回が初めてです。これは決意が固まったという表現でしょう。

夜明けの街に、朝焼けの水蒸気が彩ります。2題目で流れていた『懐かしのメロディ』も終わりを迎えます。もしかしたら『この曲を聴いたら別れよう』と話していたのかもしれません。

別れを覚悟した君の髪の毛が震えています。僕の決意は、君に伝える事ができたのでしょうか?

あの高速道路の橋を 駆け抜けて君つれたまま
二人ここから 遠くへと逃げ去ってしまおうか
さようなら街の灯りと 月夜と二人のアカボシ
最後の想いは 君が振り向く前に話そうか

夜明けの街…

結論から言うと、語り手である"僕"は決意を君に伝える事は出来ませんでした。

本当は連れ去ってしまいたい…と言う最後の想いは、君には伝える事は出来ませんでした。もしかしたら、君の為に伝えなかったのかもしれません。

そして最後は『夜明けの街』と言うフレーズが3回続き、曲がフェードアウトして終わります。明確な終わりがないのは、夜が完全に明けて、朝になったと言う事を表しているのでしょう。

PVで女性が流した涙の意味は?

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『二人のアカボシ』をヒットさせたキンモクセイのその後

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