【キンモクセイ】転機の一曲となった『二人のアカボシ』とは?背景や想いを独自に徹底考察

キンモクセイと言えば二人のアカボシが有名でしょう。ノンタイアップながらオリコン10位にランクインし、キンモクセイは2002年の紅白出演を果たします。二人のアカボシは懐かしさの中にヒットの要素が盛り込まれた名曲です。今回はその魅力について迫りましょう。

記事の目次

  1. 1.10年の活動休止を経て、再スタートを見せたキンモクセイ
  2. 2.キンモクセイが世に知れ渡るきっかけとなった『二人のアカボシ』
  3. 3.キンモクセイの『二人のアカボシ』は懐かしいサウンドに乗せた別れの歌
  4. 4.『二人のアカボシ』をヒットさせたキンモクセイのその後
  5. 5.まとめ

この曲が如何に文学的であるか分かったでしょうか?明星をアカボシという印象的な言葉で表しつつ、時間の経過の表現や、二人の気持ちの暗喩として用いる等、国語の教科書のような作品とも言えます。

PVが曲と連動しているなら、女性は"僕"と別れて、ラーメン屋に立ち寄ったという事でしょう。PVの女性の涙は、『許されざる恋が終わったから』が正解でしょうかね。

キンモクセイの『二人のアカボシ』のコードに隠されたもの

二人のアカボシを聴いて、懐かしい感覚がしたと思いますが、それはこの楽曲のコード進行も由来しています。

イントロとAメロは
Bm7→Amaj7のコード進行を繰り返します。
『静かなのにまたこれから…』の部分からは少し複雑になり
Bm7→Bm7/E→Amaj7→Dmaj7→C#7と続きます。maj7というコードが多用されていますね。

このmaj7はメジャーセブンスコードと呼ばれ、都会的、おしゃれ、哀愁等を感じさせるコードとされています。

80年代では山下達郎がこのコードを多用しました。

どことなく二人のアカボシに近い雰囲気を感じませんか?

山下達郎の楽曲はシティ・ポップと言われています。シティ・ポップの定義は曖昧ですが、70〜80年代に流行ったポップスの形態で、詞やサウンドに都会的な雰囲気を含んでいることが大きな特徴とされています。山下達郎の妻であり、歌手の竹内まりやの楽曲もそうですね。

二人のアカボシも夜明けの街が舞台の楽曲でしたし、シティ・ポップがルーツにあると思われます。

そのシティ・ポップですが数年前に急に若者の間で再びブームを迎えます。代表的なのはSuchmosです。代表曲とも言えるMINTにもm7やmaj7コードが使われています。こちらはより現代的とも言えます。

サビでの高揚感

サビの
『二人ここから遠くへと逃げ去ってしまおうか』の部分は音程が

Am7→Bm7→Cmaj7→C#dim→D maj7→D#dim

と半音ずつ徐々に上がっており、高揚感の生まれる進行になっています。

『あの高速道路の橋を…』の部分も気持ちが良いですが、語り手が最も伝えたいのは、君を連れ去りたいという事なのが、コード進行から分かります。

この部分は歌ってみると分かりますが、とても気持ち良い部分です。

二人のアカボシはコード進行や使われているコードを見ても、非常に完成度が高い事が分かりますね。

『二人のアカボシ』をヒットさせたキンモクセイのその後

2002年はキンモクセイにとって運命を決めた一年でした。彼らは、この年に4枚のシングル(二人のアカボシ、七色の風、さらば、車線変更25時)と1枚のアルバムを作成します。

さらば

あたしンちの主題歌としてタイアップされました。二人のアカボシがシティ・ポップなら、こちらはより歌謡曲としての要素を高めた作品と言えます。

車線変更25時

一人きり海まで走りだす 想い出が足りないだろう
真夜中の国道16号線 やむを得ず遠回り
左には潰れたレストラン 忘れかけた車線変更
空々しい246号 寂しさは僕だけのものか?

こちらも二人のアカボシ同様に別れを描いた作品です。異様な伊藤のダンスに目が行きがちですが、ディスコ調のサウンドと地元の国道が楽曲中に出てくる等、キンモクセイらしい作品です。

しかしセールス的にも車線変更25時は22位と奮わず、その後は下降線を辿ります。

兄ちゃんのからあげ

ここで筆者の好きな曲を1曲。

兄ちゃんが帰ってきました
今までに見た事のない顔して
兄ちゃんは帰ってくると
すぐに部屋に閉じこもってしまいました

母さんは僕を誘って
さっき行ったスーパーにまた行くよと
「たまねぎを買い忘れたの」
夕食の支度を終えて言いました

動画がないのが残念ですが、こちらは『兄ちゃんのからあげ』という曲です。失恋した(とされる)兄ちゃんの為に、母さんがからあげを買いに行く歌です。素朴な歌詞の中に、大人になる事への葛藤や家族愛が随所に詰め込まれています。

むすんでひらいて

この世は終わりに向かい進む船よ
季節の移り変わりまで狂わせる
父と母と日の光を浴びてきたから
生きてる

二人生き延びることを望むならば
恥じらいなど捨てて人として歩く
桃色に透けてる君の耳を見てると
心が

こちらは2004年12月に発売された『むすんでひらいて』です。風景描写と言った表現をそぎ落とし、生と死について歌われた名曲ですが、ランキングは70位に留まります。

ヒット曲という呪い

結論から言うと、キンモクセイは『二人のアカボシ』を最後にオリコンのTOP10にランクインする事はありませんでした。

バンドは『二人のアカボシ』というヒット曲と向き合いながら活動を続けますが2008年には活動を休止します。

『二人のアカボシ』と他の曲を聞き比べてもらえれば分かりますが、シティ・ポップの要素が強いのは『二人のアカボシ』だけです。元々バンド自体が松任谷由実や吉田拓郎が好きで集まった経緯もあり、本来の彼らの楽曲とは方向が少しずれていたのです。

良くも悪くもヒット曲はそのバンドの運命を決めてしまうのです。

また2002年はアナログよりもデジタル、バンドもGOING STEADY等の青春パンクやメロコアが流行った時代です。キンモクセイはまさに流行りの対極にいたバンドでもあり、ヒットには恵まれなかったのかもしれません。

再結成したキンモクセイ

活動を休止した後は、それぞれが音楽活動を続けます。活動休止から10年後の2018年、地元のイベントに参加した事がきっかけで活動を再開します。

2019年12月には14年振りのアルバム『ジャパニーズポップス』を発売します。

とにかくレコーディングが楽しかったんです。昔はそんな余裕がなかったんだけど、いまはコミュニケーションがうまく取れるようになりました。

と伊藤は述べています。少し肩の抜けたキンモクセイが久しぶりに聴く事が出来ます。上に紹介したセレモニーも収録されています。

二人のアカボシは勿論彼らの代表曲ですが、素晴らしい名曲が詰まっています。

まとめ

今回はキンモクセイの名曲、二人のアカボシについて紹介させていただきました。文学的な歌詞とシティ・ポップとも言える演奏は、今尚名曲として語り継がれています。

そして再結成したキンモクセイにも目が離せませんね。

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