切ない恋心を描く、チャットモンチーの大人気曲『染まるよ』に込められた想いとは?
「この曲をきっかけにファンになった」「この曲が一番好き」。チャットモンチーの数ある楽曲の中でも特別心にしみる名曲として評価される『染まるよ』。どうしようもなく切ないのに、どこまでも人を魅了するチャットモンチーの『染まるよ』の歌詞の意味に注目してみました。
2018年7月をもって解散した、ガールズバンド「チャットモンチー」
2000年に結成されたチャットモンチーは数々のヒット曲を生み出し、熱狂的名ファンを多く持つバンドです。
彼女らの楽曲はドラマや映画、CMなどさまざまな作品に起用されており、チャットモンチーの音楽が多方面で評価されていることがわかります。
2018年7月、チャットモンチーは“完結”という形で解散。解散を発表されたときの衝撃は今も忘れられません。
まるで、日本のバンド界に大きな穴がぽっかりあいてしまったような喪失感が私たちを包み、ラストライブでは多くのファンが涙を流しました。
今でもチャットモンチーの作品は愛され、解散を惜しむ声はいまだに止むことはありません。
チャットモンチーという偉大なバンドの物語はいつまでも色褪せることなく、生み出された名曲たちは多くの人の心に残り続けているのです。
ライブでもよく演奏されていた『染まるよ』
チャットモンチーの楽曲の中でも人気の高い『染まるよ』はライブで演奏されることも多く、ファンにとってはライブで恒例の曲としての認識も。
また、ライブでの演奏ではアコースティックver.などアレンジを加えて披露されることもありました。
歌詞やメロディーなど、楽曲全体を通して感情が強く込められた作品となっていますので、音源で聴くのももちろんいいですが、ライブで聴くとさらにますます心にしみると多くの観客を魅了してきました。
切ない恋心を描く大人気の名曲『染まるよ』はチャットモンチーの9枚目のシングルに収録される
ここからは、『染まるよ』の楽曲情報をご紹介します。
2008年11月に発売された
『染まるよ』は、2008年11月5日にリリースされたチャットモンチーにとって9枚目のシングル曲です。
この楽曲では、音楽プロデューサーやベーシスト、作曲家などさまざまな分野で活躍する亀田誠治をプロデューサーとして迎えています。
日テレドラマ「トンスラ」の主題歌として利用されていた
『染まるよ』は、都築浩著の小説を原作としたドラマ「トンスラ」の主題歌に起用されました。
吉高由里子演じる主人公・柏葉ミカ(22歳)は、過去にはベストセラーを生み出した作家。しかし、その後スランプに陥った彼女は、温水洋一演じる担当編集者・藪田秀彦を監禁することに。作家として華々しくデビューを飾ったがふと書けなくなってしまったミカの葛藤や、藪田秀彦との関わりを通して少しずつ成長していく姿を描いた、2人の奇妙な12日間の物語です。
1人の人間の成長や、それを温かく支える人の存在。
どこか青春を感じさせる作品を『染まるよ』が主題歌としてより切なく演出しています。
「CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~」のアルバムでは、きのこ帝国にカバーされる
2018年3月28日にリリースされた『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』。
忘れらんねえよ、フジファブリック、川谷絵音、グループ魂などさまざまなアーティストがチャットモンチーの楽曲をカバーしているこのアルバムはチャットモンチーのファンからも非常に評価が高く、チャットモンチーへの愛が感じられるトリビュートアルバムとして人気の作品です。
このアルバムの中で、きのこ帝国が『染まるよ』をカバーしています。
きのこ帝国によるカバーはより幻想的に演出されており、ボーカルである佐藤千亜妃の声によって原曲よりも大人の雰囲気が漂っています。
どうしようもなく虚しくて廃れた夜の雰囲気は変わらず感じられ、それでいてきのこ帝国の演奏によってまったく違った雰囲気になっているよさもあり、原曲と合わせてぜひチェックしていただきたい作品です。
『染まるよ』の歌詞の意味。込められた想いを読み解く
名曲と評される『染まるよ』の歌詞には、どんな想いが込められているのでしょうか。
歌詞の意味を独自に解釈してみましたので、解説していきたいと思います。
背伸びをした恋
歩き慣れてない夜道を ふらりと歩きたくなって
蛍光灯に照らされたら ここだけ無理してるみたいだ
大人だから一度くらい 煙草を吸ってみたくなって
月明かりに照らされたら 悪い事してるみたいだ
大好きだった彼は自分よりも年上の男性。
大人な彼の真似をして、背伸びをする女の子。少しでも彼に近づきたくて、吸わないタバコを吸ってみたり。
大人な彼とつき合っている自分は、みんなとは違う世界を知っているように思えます。彼に認めてもらって、彼の横にいる私は「大人だから」。
でも、自分がまだまだ子どもであることが彼といると余計に浮き彫りになるような感じがして、同じ目線に立ちたくて大人のフリをする「私」。
想いの強さ
大人な彼には余裕があって、子どもな「私」には余裕がない。
あなたの好きな煙草
わたしより好きな煙草
自分ばかりが彼のことを好きな気がして、彼には私よりも好きなことや優先させたいことがあって、自分ばかりが恋焦がれていて追いかけてばかり。
好きな人とつき合って一緒に過ごしていると、そんな風に感じてしまうことってありますよね。
好きで好きでどうしようもなくて、自分はいつもいっぱいっぱいなのに彼にはそんな様子は見えなくて、こんなに好きと想っているのは自分のほうだけなのではないかと悩んでしまったり…。
いつだって そばにいたかった
分かりたかった 満たしたかった
プカ プカ プカ プカ
煙が目に染みるよ 苦くて黒く染まるよ
まるで火遊びのような刺激が魅力的な彼との恋。タバコの煙のように、ふわふわゆらゆらと不確かな存在の彼。
でも、苦くて香ばしいにおいは、強くしっかり体にしみこんで来る。
背伸びをした、足元のおぼつかない不安定な恋。
この先ずっと一緒にいても、幸せになれないことはなんとなくわかっている。それでもどうしても止められない恋を「私」はしているのです。
進んでいく時間
火が消えたから もうだめだ
魔法は解けてしまう
あなたは煙に巻かれて 後味サイテイ
タバコは、一度火をつけてしまえばもう元に戻すことはできません。
火がついたらどんどん燃えていって、時間と共に短くなっていく。それを、同じ長さのまま留めることなんてできません。
そして、火が消えてしまえばずっと見ていた夢から目が覚めて現実に引き戻されてしまう。
まるで「マッチ売りの少女」です。彼に恋焦がれていた頃の「私」は、まだまだ何もわからない少女だったのです。
いつだって そばにいれたら
変われたかな マシだったかな
プカ プカ プカ プカ
煙が目に染みても 暗くても夜は明ける
まだまだタバコに慣れない自分は子どもだと思っていても、彼以外のいろんな人と出会い、彼のいない外の世界と関わり、時間と共に「私」自身は気づかぬうちに成長していくのです。
あなたのくれた言葉
正しくて色褪せない
でも もう いら ない
いつだって あなただけだった
嫌わないでよ 忘れないでよ
プカ プカ プカ プカ
煙が雲になって 朝焼け色に染まるよ
彼は、いつも「私」に「正しい」言葉をくれていました。それも、もう本当に大人に近づき始めた私には必要ない。
「正しい」ことがすべてじゃないことも含めて、「私」は自分でいろいろわかるようになってしまったのです。
新しい世界の始まりを感じさせる「朝焼け」。世界のすべてを染める朝焼けは、私を染めていた彼よりもずっと強い色で私を染めていきます。
でも、彼と過ごした日々は「私」にとってかけがえのない大切なものだった。だから、「私」も大切にするから、あなたもきっと忘れないで大切にしてほしい。
背伸びをした苦い恋を経験し、1人の少女が成長していく。そんなほろ苦い恋愛が、この楽曲には描かれているように感じられるのです。
まとめ
タバコの火のように燃え上がる気持ち、タバコの煙みたいに不安定で、タバコの味みたいに苦い恋。
まぶしい朝焼けが優しく自分を包み込んでくれて、また新しい自分を始められる。
今回『染まるよ』という曲の意味をじっくり考えてみて、この短い1曲の中に1人の少女の成長をここまで詰め込んでうまく表現できるこの作品の尊さを改めて感じさせられました。