終止も奥が深い!コード進行を締める、終止の種類についてご紹介
コード進行というのは非常に奥が深いですが「終止」について知らないと、演奏や作曲をより楽しむきっかけを逃していることになり、もったいないかもしれません。決して難しい知識などではないので少しだけでも理解しておくとよいでしょう。「終止」の種類について紹介します。
楽譜には必ず必要な終止
楽譜には「終止」が必要不可欠です。
曲はいくつかのコードを用いて形成されますが、曲が展開されいている中に「落ち着き」を感じるコードの流れが(手法)が存在します。
たとえば曲のアウトロでなんとなく「もう少しで曲が終わりそうだな」と感じたり「Aメロが終わりそうだな」と感じたりすることがあると思いますが、そういったコード進行が落ち着くことそのものや落ち着かせる手法が「終止」です。
終止のことを知ると曲を聴く上で作者の意図や性格などが見え、より楽しむことができます。
また作曲をする際にも、かなり役立つ知識となるでしょう。
一見理論というのは難しそうに感じるかもしれませんが、終止はその中でもそこまで難解なものではないので、少しだけでも知っておくと音楽がより楽しくなるかもしれません。
先に「ダイアトニックコード」について知る必要がある!
終止のことを知る前に、少しだけコードについて理解しておく必要があります。
「ダイアトニックコード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
音楽家ならば必ず聞いたことがあるであろう「ダイアトニックコード」ですが「ダイアトニックスケール」から、その名前は来ています。
ダイアトニックスケールというのは、たとえば「ドレミファソラシ」の音の並び(グループ)を指しており、1オクターブ内で7つの音に分けた状態のことです。
「ドレミファソラシ」は明るい印象を感じる音の並びである「メジャースケール」や「ラシドレミファソ」のように暗い印象を感じる「マイナースケール」はダイアトニックスケールの仲間になります。
ダイアトニックコードのそれぞれの音には役割がある
ダイアトニックコードにおける「1番目(I)」「5番目(V)」「4番目(IV)」のコードはスリーコードと呼ばれれ、主要なコードとされます。
7つの音のグループの中の、中心的存在のようなものです。
では「ドレミファソラシ」の「ド」からはじまる、キーが「Cメジャー」のダイアトニックコードの場合は「1番目(I)」「5番目(V)」「4番目(IV)」に、どの音が当てはまるでしょうか?
数えてみて分かる通り「1番目(I)=C」「5番目(V)=G」「4番目(IV)=F」になります。
中心的存在であるこの3つのコードが持っている役割が、いわゆる重要なのです。
まず「1番目(I)」の「C」ですが、これは落ち着く(安定する)役割を持ち、トニックという別名を持ちます。
「5番目(V)」の「G」は落ち着かない(安定しない)役割を持ち、別名はドミナントです。
「4番目(IV)」の「F」は少し落ち着かない(少し安定しない)役割があり、サブドミナントとも呼ばれます。
キーが「Cメジャー」の場合だけでなく、ダイアトニックコードの場合は全て「1番目(I)=トニック」「5番目(V)=ドミナント」「4番目(IV)=サブドミナント」に当てはまるということを、覚えておきましょう。
終止の種類
それぞれの役割を持ったコードを、どのように使ったり組み合わせたりしながら落ち着かせていくのかによって、終止は種類分けされています。
実際にどのようなものがあるのか、代表的な終止の種類を見ていきましょう。
全終止
全終止はダイアトニックコードの「5番目(V)=ドミナント」から「1番目(I)=トニック」の流れの終止です。
例えばキーが「C」の場合だと「I→IV→V→I」の進行である「C→F→G→C」は、全終止に当てはまります。
全終止は終止の中で最もよく見られる形で、この進行が入っている楽曲はかなり多いです。
不安定から安定へ導く、ドミナントからトニックへの流れを作ることで耳に馴染みやすく安心できるコード進行になります。
ちなみに全終止というのは特にポップスやロックにおいては、あまりに王道なため種類など関係なく、全ての終止のことを指して「全終止」と言うこともあるので注意が必要です。
また絶対的な安心感は得られるものの、多用してしまうと「どこにでもある曲」となりインパクトに欠けてしまうこともあります。
反対に敢えて避け過ぎると違和感が多くなってしまうこともあるので、適度に曲中に入れていくことが必要になるでしょう。
完全終止
終止には更に完全終止と不完全終止があります。
完全終止はキーが「C」の「I→IV→V→I」である「C→F→G→C」のコード進行で、主旋律も主音であるドで終わるもののことです。
完全に終止した感じが出ており、クラシックでも楽曲の最後や大きな区間の終わりに使われています。
王道中の王道タイプの終止です。
最も多く使用されるため、あまり多用すると面白味に欠けることもあります。
作曲する際には完全終止ばかりにならないように、主旋律とコードの兼ね合いを考えるとよいでしょう。
不完全終止
不完全終止は、完全終止とは逆にキーが「C」の「I→IV→V→I」である「C→F→G→C」のコード進行で、主旋律が主音で終わらないことをいいます。
完全に終わった感じが出ない終止の手法で、これは次に続く雰囲気を出したい時にも用いられるものです。
少し不安定な感じにも聞こえますが、聴き手に想像力を掻き立てさせることもできます。
クラシックなどの古典音楽ではあまり最後に用いられず、ポップスやロックでよく見られる形です。
半終止
メロディなどの主旋律が主音で終わらない「I→IV→V→I」の終止のことを不完全終止といい、完全に終わらない雰囲気を出す手法のものだということは説明しましたが、コード進行で不完全終止のような雰囲気を出す方法もあります。
それが「半終止」です。
次へ展開する雰囲気を出すことができ、不完全終止よりもその印象が濃くなります。
半終止の進行は「5番目(V)=ドミナント」で終わるもののことです。
落ち着かない(安定しない)役割を持つドミナントで終わるので「次に続くのではないか?」と思わせます。
キーが「C」の場合は「G」で終わるという意味です。
楽曲のイントロの終わりやサビの前に使用すると「どんな展開が来るのだろう?」という期待を膨らませることができるでしょう。
ちなみに、ごく稀ですが「IV(キーがCの場合はF)」のサブドミナントで終止することも、半終止と呼ばれることがあります。
偽終止
偽終止は名前の通り、最もスタンダードな全終止の「I→IV→V→I」という形を裏切り、最後に来る落ち着く(安定する)役割を持つ「I(トニック)」の代理コードを使う方法のことです。
IIm・VIm・VIに進行し終止することが典型的といえます。
終止としては弱く意外性のある終わり方で、次の展開にナチュラルにつなぐために多く用いられている手法です。
偽終止を用いて意外性を持たせ進行した後に、全終止でスマートに終えるとスタンダードなエンディングの展開になります。
クラシックでいうとバッハの『パッサカリアとフーガ ハ短調』のコーダに使用されている手法が、代表的な偽終止の例です。
変終止
変終止はアーメン終止ともいわれ、やや落ち着かない(やや安定しない)役割を持つ「IV(サブドミナント)」から「I(トニック)」で終わる手法です。
落ち着かない(安定しない)役割の「V(ドミナント)」から「I(トニック)」の流れより、ふわっと終止する印象を与えます。
完全終止の後に敢えて変終止を付け加えることも多くみられ、クラシックではショパンやドビュッシーが多用しています。
別名の「アーメン終止」の由来は、讃美歌で最後にある「アーメン」がこのコード(和音)を用いることが多いためです。
変終止を用いることで全終止の時より、若干おしゃれなイメージを持たせることも可能になります。
「終止」と「終止形」は異なる意味を持つ
音楽の「終止」について調べている最中に「終止形」という言葉を見かけた方もいるのではないでしょうか?
日本では「カデンツ」とも呼ばれる終止形は、終止とは別の意味のものです。
終止は終わりが「I(トニック)」「V(ドミナント)」「IV(サブドミナント)」など、さまざまだということはお話しました。
対して「終止形」は「I(トニック)」からはじまって「I(トニック)」に戻って終わるまでの、まとまりのことを言います。
終止形の例は以下の通りです。
I→V→I
I→IV→I
I→IV→V→I
ただし厳密にいうとドミナントからサブドミナントの進行はしないとされている「I→V→IV→I」も、一般的に使われています。
まとめ
このようにコード進行を締めくくる「終止」は種類があり、非常に奥が深いです。
今回の記事を参考に実際に楽器を弾いたりコード譜や楽譜を見たりして、自分の好きな曲がどのような終止の手法を使っているのか確認してみると、さらに音楽が面白くなるでしょう。