リュートとはどんな楽器?ギターとの違いとは?
リュートは現代音楽では古楽器に分類される弦をはじくタイプの楽器で、音楽史でいうと中世からルネサンス期、そしてバロック時代にかけて主に活躍した楽器です。この記事では共通点の多い楽器であるクラシックギターと比較をしながらリュートの特徴について紹介します。
リュートとはどんな楽器?
リュートは主に15世紀から17世紀にかけてヨーロッパで演奏された弦楽器です。
最盛期にはヨーロッパのほぼ全域に普及したと言われています。雫を割ったようなボディにガット弦やナイロン弦が貼られています。オランダ人の画家、フェルメールの「リュートを調弦する女」で描かれている楽器としても知られています。全盛期は「楽器の女王」とまで称されたリュートですが、テェンバロやギターに押され徐々に衰退、一旦忘れられてしまいます。
しかし20世紀に入って再評価があり、徐々に復興。現在では日本でも奏者や愛好家が増えているようです。
リュートの構造
リュートのボディは雫や洋梨のような形状をしていて、バイオリンやギターのように指板(フレットボード)が出っ張っておらず、また弦高も低いため、それらの楽器と比べると、とても平らです。ボディとネック、指板は木製で、弦は古くはガット弦、現在はナイロン弦が用いられることが多いようです。
指板にはギターのようにフレットがありネックは後ろに折れ曲がっています。弦は第1弦を除き複弦で2本のユニゾンまたはオクターブユニゾンで調弦された弦がセットになって「コース」を構成しています。1つのコースにに対し弦が2本あるわけですから、リュートは非常に弦の数が多い楽器です。例えば、ルネサンスリュート(後述)でよく使用されるのは8コースの楽器です。
第1コースは単弦だとしても15本の弦が指板状に並ぶことになるわけです。フェルメールの絵に出てくる女性も調弦にさぞ苦労したことでしょう。
リュートの音
いくつか動画を参考にあげようと思います。あえてリュートが活躍した時代のものではない曲を選びました。
1曲目は元気一杯のアニソン、2曲目はお茶の間で好評を博したドラマの主題歌。
どちらも原曲の良さを生かしつつ、どこか高尚なバロック音楽を聞いているような雰囲気になるのは、編曲の負っているところもあるでしょうが、リュートの繊細な音色が一役買っているように思います。
リュートの音を特徴づけているのは、弦の張り方、そして弦の弾き方です。弦のテンションがあまり強くないように調整して、爪を使って弦を弾くのではなく指で撫でるように演奏すると言われています。
リュートとギターの違いは?
リュートの演奏を聴いて、クラシックギターの演奏を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。楽器の分類状、リュート属という大きな弦楽器のグループ(ボディとネックで構成されている弦を弾く楽器)があって、ギターはこのリュート属に属します。つまり、大きく見ればリュートとギターは同じファミリーに属している楽器ということになるわけです。
したがって、もちろん共通点もあります。例えば、ガット弦やナイロン弦を使う点、表面版に、ボディ内で共鳴した音を外に放出するサウンドホールがある点などが挙げられます。
では、リュートとギターの相違点とはなんでしょうか。
まず、音色と音量、出てくる音の形が違います。動画は同じ曲をバロックリュート(後述)とギターで演奏したものです。上がリュートで下がギターです。聴き比べてください。
次に挙げられるのが、弦の数です。ギターはそれぞれの弦が1本で構成されていますが、リュートは2本の弦で1セット、1つのコースを作りますので必然的に弦の数が多くなります。ギターも多弦の楽器がありますが、リュートはそもそもの弦の数が多いので、指板状が大変なことになります。
また、ボディの裏面が、ギターは平らなのに対してリュートは湾曲しています。背面の形状としてはギターよりマンドリンの方が似ているかもしれません。
それから、ギターとリュートの共通点としてサウンドホールがある点を挙げましたが、リュートのそれはローズまたはロゼッタと呼ばれ、美しい模様の透かし彫りが施されています。
また、奏法も異なります。多くのクラシックギターは弦を爪で弾くことで音を出しますが、リュートは多くの場合爪ではなく指先を使って弦を弾きます。この点は、クラシックギターの経験者がリュートに触る時に戸惑うポイントだと言われています。
リュートの種類
リュートは大きく分けて、その成立年代によって
- ルネサンスリュート
- バロックリュート
ルネサンスリュート
イスラム世界から流入してきたウードという楽器がヨーロッパでリュートとして形をなしてきた時期の楽器です。弦の数は初期は6コース(11弦)が一般的だったようです。時代が下るにつれてコースの数が増えていき、10コースまで増えていきました。
また、低音楽器として、下の図のような、ネックが非常に長くて単弦のテオルボ(キタローネ)という楽器も開発されました。
ルネサンスリュートの代表的な作曲家を1人挙げるとすると、英国の作曲家・リュート奏者のJ.ダウランドの名前が挙がるでしょう。
バロックリュート
時代が下るにつれて、リュートはコース(弦)を増やすという進化の方向に向かいます。ルネサンスリュートの主流は6〜8コースでしたが、それが11コース、13コースとどんどん増えていきます。当然指板の上は大変なことに……。もはや別物と言って良いくらいの改良が加えられました。有名な作曲家として、S.L.ヴァイスが挙げられますが、ヴァイスの曲はギターとの比較のところで取り上げたので、ここではJ.S.バッハがバロックリュートのために作曲した曲を紹介します。
やはりネックの太さ、弦の多さに目が行きます。またバッハのリュートの曲はことに複雑で演奏するが難しいと言われています。
リュートを手に入れる方法
楽天やアマゾンなど、一般的なネットショッピングサイトで購入するのはどうやら難しいようです。中にはリュートと書いていながらその中身は中国の琵琶(元をたどれば同じ楽器に行き着くわけですが……。)が出品されていたりして注意が必要です。古楽器の専門店を当たるのが良い方法でしょう。
えー、目白では、日本が誇る古楽器店ギタルラ社にも行って、リュートやヴィオラダガンバ、ハープシコードなどを見て来ました( ・∇・) pic.twitter.com/OQIeygfHON
— パードレばばんこ@不思議音楽館_居候 (@dawn1963jp) May 26, 2018
このギタルラ社 東京古典楽器センターはファンの中では有名なクラシックギター専門店で、リュートを取り扱っている貴重なお店です。
価格について、Webサイトによると、ルネサンスリュートはだいたい40万円くらいが相場のようです。バロックリュートはもう少し高く50〜70万円程度が相場のようです。
中古市場もあるようで、以下にギター総合サイト「J-guitar」に掲載されている商品を掲載します。
ビンテージだったりするので、中古だからと言って値段がお手頃になるものでもないようです。
まとめ
実際に音を聞いて動画を見ていただきながら、ギターと比較する形でリュートという楽器をご紹介してきました。
一時は衰退した楽器と言われていますが、再評価され、現代ではファンも増えているようです。見た所楽器を手に入れるのが最初のハードルになっている様子なので、ファン人口をメーカーが察知して安価で手に取りやすいモデルが世に出回理、多くの人がリュートのりょくを楽しめるようになることを願っています。
最後に動画を1つ紹介します。O.レスピーギ作曲、「リュートのための古風な舞曲とアリアより 第3組曲 第3楽章 シチリアーナ」。リュート再評価のきっかけになった一曲です。リュートの曲をモチーフにした管弦楽曲でリュートは出てきません。