バッハ『フーガの技法』は超難解?制作までの背景などに迫る
バッハの『フーガの技法』が謎に包まれた超難解曲として知られていることをご存じですか?彼がこの楽曲を作成し世に広まってから何百年も経っていますが、音楽家や学者たちが制作背景に関して議論を交わしているようです。今回はバッハの『フーガの技法』に迫ります。
バッハ『フーガの技法』の背景③:弟子によって表題が追記された
『フーガの技法』にある「コントラプンクトゥス」という表題は、バッハ自身が付けたものではなく弟子によって追記されたという説があります。
バッハは古い様式を好んでいた作曲家であったことは、先ほどもお話しました。
表題を追記したのは「楽曲を並べただけでは今風ではないと思ったのでは?」といわれているようですが、やはり家計が厳しかったので「売れ行きをよくするためだったのでは?」という線も濃厚です。
「コントラプンクトゥス」はヨハン・ヨーゼフ・フックスの教本にて、バッハが好きだった対位法を用いた楽曲全てを一般的に示す呼称でした。
バッハ『フーガの技法』の背景④:本当にバッハの最後の作品だった?
『フーガの技法』はバッハにとって生前最後の未完成作品だったと長年信じられていましたが、バッハの研究者たちの中で近年「ロ短調ミサ曲」の後半部分だったとの説が濃厚になってきました。
研究が進むにつれ『フーガの技法』が実は、ある程度早い段階で完成していたとの諸説が出てきたのです。
『フーガの技法』が最後の作品ではなかったことは明白ではないものの、現在ではかなり濃厚な説になっています。
バッハ『フーガの技法』の楽しみ方は様々
ただでさえ超難解曲であり作者の意図が明らかになっていないクラシック曲を、一体どのように楽しんだらよいのか迷ってしまう方も多いでしょう。
間違った解釈は、作曲者への侮辱を意味すると思う方も少なくないはずです。
どのように名曲『フーガの技法』を楽しむのがよいのか、まとめてみました。
バッハ『フーガの技法』の楽しみ方①:グループに分けて聴く
作者が意図した曲順が明確にわからないので、そういった場合はグループに分けて聴くのがよいでしょう。
ちなみに単純に『フーガの技法』を分けると以下のようになります。
- 単純フーガ:1~4
- 反行フーガ:5~7
- 3主題フーガ:8
- 2主題フーガ:9~10
- 3主題フーガ:11
- 鏡像フーガ:12~13
- カノン:14~17
- XIIIの編曲:18
- 未完成フーガ:19
未完成フーガを録音する際の演奏家のアプローチはさまざまです。
どういった意味でのアプローチだったのか、各演奏家ごとの演奏を聴き比べて楽しむのもよいでしょう。
バッハ『フーガの技法』の楽しみ方②:実際に弾いてみる
バッハの『フーガの技法』は、特定の楽器の指定がない対位法技法の集大成として作曲されたのではないかといわれています。
つまり聴き手に楽しみ方をゆだねられている作品で、好きな曲のみ弾いたり聴いたりする楽しみ方も、作者は考慮して作っているという説があるようです。
演奏家が自由に弾いて楽しめる曲を書きたいという想いを、バッハは強く持っていたのかもしれません。
全曲にとらわれず切り取って演奏することは少々勇気が要ることもありますが、この楽曲に関しては「作者の意図」として別の楽曲とは違う楽しみ方をするのもアリだと考える演奏者もいるようです。
バッハ『フーガの技法』の楽しみ方③:さまざまな楽器編成の音源を聴く
特定の楽器の指定がない対位法的鍵盤作品であるため、さまざまな編成の音源を聞き比べて楽しむのもよいでしょう。
特に『フーガの技法』は名盤が多いので、演奏家を志している方やクラシックファンの方は数枚入手しておくのもよいかもしれません。
自分が弾いている楽器や好きな楽器のサウンドを楽しめる音源が、この1曲の場合は複数存在しているのです。
数ある名盤の中から特に注目されているものをいくつか紹介しますので、入手する際の参考にしてみてください。
トン・コープマンとティニ・マトーの『フーガの技法』
1993年に録音されました。
夫婦であるトン・コープマンとティニ・マトーは両者ともにチェンバロ奏者です。
この2人の録音は名盤が多いですが、ティニ・マトーはトン・コープマンのプロデューサーとしてのイメージのほうが世間的には強いようです。
Ruckersモデルのチェンバロをコープマンが、Couchetモデルのチェンバロをティニ・マトーが演奏しています。
ヘルムート・ヴァルヒャの『フーガの技法』
1956年に録音されました。
ヘルムート・ヴァルヒャはバッハ同様オルガン奏者として知られています。
バッハの楽曲を「オルガン作品全集」として録音したものの中のひとつで、オルガンの音質などの問題により何度か中断されていますが、この音源はオランダのアルクマールにある聖ローレンス教会で録られたものです。
カール・リステンパルトの『フーガの技法』
1963年に録音された超名盤です。
グレン・グールドの指揮によって録音されたもので、演奏は彼が創設したザール放送室内管弦楽団がつとめました。
編曲はこの音源でもオーボエを吹いている、ヘルムート・ヴィンシャーマンによるものです。
この編曲は弦楽器の合奏・ダブルリードの木管楽器の合奏にはっきり区別されているのが特徴的で「曲の構造が分かりやすい」と、さまざまな音楽家から高い評価を得ています。