ジャズには必須の『スキャット』とは?意味についてご紹介!
ボーカリストが「ダバダバ」や「シュビドゥビ」といった意味のない音でメロディーを奏でるテクニック「スキャット」。その歴史や使われる音について解説します。またスキャットがかっこよく使われている曲で、ぜひ聴いていただきたいものをセレクトして紹介。
スキャットとは
スキャットとは、ジャズボーカルにおけるテクニックの1つです。
歌詞ではなく、声を楽器のように使いインプロヴィゼーション(improvisation)演奏することを指します。
ジャズにおけるインプロヴィゼーションとは、元々のメロディーやリズムにとらわれずに自由に解釈して即興演奏することを言います。
インプロヴィゼーションは本来あるメロディーを自由に解釈することを言いますので、アドリブとは異なります。
スキャットはある意味、元の「歌詞」からも自由になった手法と言えるでしょう。
サッチモの生み出したテクニック、「スキャット」
スキャットが即興演奏であることは、誕生の歴史を見ても分かります。
サッチモの愛称で知られる、ジャズトランぺッターのルイ・アームストロング(Louie Armstrong)が
「Heebie Jeebies」という曲をレコーディングの際に、歌詞を知らない部分に「ドゥ」や「ビ」などの音を使って歌ったことがスキャットの始まりです。
YouTubeで聴くことができますので、1:50~2:05あたりに注意して聴いてみてください。
広い意味での「スキャット」
現代ではインプロヴィゼーションでない場合も「スキャット」と呼ぶ場合があります。
映画「男と女(Un Homme Et Une Femme)」のテーマ曲は、サビ部分でメロディーを「ダバダバ」言っているだけで即興感はありませんが、スキャットの名曲として知られています。
日本の「スキャット」
日本でもピンク・マルティーニの曲を由紀さおりさんが歌った「夜明けのスキャット」も「ルー」や「ラー」という音でメロディーを奏でていますが、即興ではありません。
このように即興でなくても、歌い手が歌詞ではなく「音」を充てて歌っている部分を、広い意味でスキャットと解釈していいのではないでしょうか。
「スキャット」のテイストを活かしたポップ曲
日本でもヒットしたMe & Myの「DUB I DUB」は「ドゥッビドゥビドゥビ・ドゥドゥドゥ」という部分がキャッチーでした。
スキャット風な演出をうまく使った曲ですね。
スキャットの発音
スキャットは純粋に音として楽器のように奏でる種類のボーカルテクニックです。
使われる音に意味はありません。
よく使われるのは、アタックの強い「ダ」行や、破裂音である「パ」行です。
相性のいい組み合わせの種類
また相性のいい2音の組み合わせが好んで使われているように思います。
例えば、「ダバ」、「ドゥビ」、「パラ」、「パヤ」、「シュビ」などがよく使われる組み合わせです。
よく使われる音の中でも「ダビ」や「シュバ」、「ダラ」などの組み合わせは、あまり目立った使われ方をしないのは興味深いところですね。
スキャットが使われている有名な曲ご紹介
ここからはスキャットがクールで有名な曲をいくつか紹介したいと思います。
これらの曲はYouTubeで「Cool Scat Singing Tunes」として再生リストにまとめましたので、
そちらもあわせてご利用ください。
Dinah / Louis Armstrong
スキャットの生みの親、サッチモの曲をもう1つ紹介します。
この「ダイナ」も、スキャットが有名な曲です。
この曲では、歌詞のある部分とスキャットの部分がシームレスに展開しています。
これは自在にスキャットを操ることができるサッチモならではかもしれませんね。
One Note Samba / Ella Fitzgerald
女性シンガーのスキャットと言えば、このエラ・フィッツジェラルドでしょう。
偉大なジャズシンガーであるエラもスキャットを得意としていました。
アントニオ・カルロス・ジョビンによる名曲「ワンノート・サンバ」をスキャットで見事に歌い上げています。
Kafka / The Manhattan Transfer
トップクラスのジャズコーラスグループの1つ、マンハッタン・トランスファーが歌うスキャットがかっこいい1曲です。
4人のスキャットが、どんどんと入れ替わっていくところがマントラならではです。
And the Melody Still Lingers On (Night in Tunisia) / Chaka Khan
アメリカのR&Bシンガー、チャカ・カーンがトランペット奏者ディジー・ガレスピーの名曲「チュニジアの夜」をヴォーカリーズしてカバーした曲です。
3:19あたりの高音スキャットは必聴です。
Scatman (ski-ba-bop-ba-dop-bop) / Scatman John
「スキャット」というものを一般に広めたのがこの「スキャットマン」という曲かもしれません。
当時日本のテレビでモノマネするタレントもたくさんいました。
テーマ部分の「ピーパッパ、パラッパ」という部分もスキャット風ですが、曲中では高速スキャットも披露しています。
また、スキャットだけでなく高速ラップも取り入れていて、かっこいい曲です。
Brazilian Rhyme (Extended Version) / Earth,Wind & Fire
アメリカの老舗バンド、アース・ウィンド・アンド・ファイアの未発表曲です。
未発表曲ながら、2:51からのパートをアルバムの間奏曲として使い、ヒットしました。
このスキャット部分を多くのアーティストがカバーしています。
Colibri / Incognito
イギリスのジャズファンクバンド、インコグニートの曲。
全編を通してボーカルは、ほぼスキャットで構成されています。
それほど有名な曲ではないかもしれませんが、スキャットがクールな曲ですので、ぜひ聴いてみてください。