【B'z】上木彩矢にカバーされた事でも話題になった『ピエロ』とは一体どんな曲なのか?
B'zの41枚目のシングル「ゆるぎないものひとつ」に収録されている、伝説の名曲『ピエロ』。女性ロックシンガー上木彩矢がカバーしたことでも知られています。『ピエロ』の歌詞を紐解くことでB'zのスゴさを深堀りすると共に、曲の魅力をご紹介します。
かず多くの名曲を輩出してきたロックバンドB'z
日本のみならず、海外でも絶大な人気を誇るロックバンドB'z。
オリコンが発表した平成30年のセールスランキングでは
シングルとアルバムの累計売上でB'zが1位に輝き、
平成のヒットチャートをけん引しました。
時代が令和に変わっても、
2019年5月29日に発売した最新アルバム『NEW LOVE』は
初動売り上げ206,714枚を達成し、オリコン初登場1位を獲得。
これによって、B'zは自身が保持する
「アルバム1位獲得作品数」と「アルバム総売上枚数」を同時に更新するなど、
今もなお快進撃が止まりません。
今回は、そんなB'zが2006年に発売した41thシングル
「ゆるぎないものひとつ」に収録されている
伝説の名曲『ピエロ』について、ご紹介します。
B'zの『ピエロ』とは一体どんな曲なのか?
シングルのカップリングとして収録された隠れ名曲『ピエロ』
『ピエロ』は2006年に発売した41thシングル「ゆるぎないものひとつ」の
カップリング曲として収録されています。
B'zはカップリング曲のことを2nd Beat(セカンドビート)と呼んでいるので、
以降はセカンドビートと表記しますね。
シングル『BE THERE』のセカンドビート『星降る夜に騒ごう』や
シングル『ALONE』のセカンドビート『GO-GO-GIRLS』など、
B'zはシングル曲顔負けのセカンドビートが多いことでも知られており、
今回ご紹介する『ピエロ』もまさにたくさんのファンに愛される
隠れた名曲のひとつです。
ちなみに、B'zの15thアルバム『MONSTER』(2006年リリース)にも
収録されていますよ。
上木彩矢にカバーされ、北斗の拳の劇場版主題歌として起用された事でも話題に
そしてこの『ピエロ』は2006年に公開された映画
「北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章」の主題歌としても注目を集めました。
…が、なんと歌ったのはB'zではなく、
2006年にメジャーデビューしたばかりの新人・上木彩矢だったのです!
インディーズ時代から、自身のライブで
『愛のバクダン』や『LOVE PHANTOM』、『juice』を披露するなど、
B'zを敬愛していたロックシンガー上木彩矢。
その堂々とした歌いっぷりやレベルの高いビブラートからは
稲葉さんへのリスペクトが伺えるとファンの間でも評判でした。
ミュージックステーション(テレビ朝日系)初登場で『ピエロ』を披露した際には
その圧倒的な歌唱力とパフォーマンスで世間を驚かせ、
さらに、上木彩矢が歌う『ピエロ』は
本家B'zの『ピエロ』と一部歌詞が異なることでも
ファンの間で話題となりました。
1番のAメロ「疾走するポンコツカー」は「疾走する欲望マシン」に、
2番のサビ「あのカーブ越えりゃ 青い空」は「あの崖飛べば 青い空」、
「浮かれたようにハンドルを切る」は「浮かれたように声をあげる」と、
B’z本家の『ピエロ』が車で疾走している光景を描いているのに対し、
上木彩矢が歌う『ピエロ』はどちらかというと映画「北斗の拳」のイメージに
寄せているようにも思えます。
続いて、この名曲『ピエロ』について、
その歌詞をより深く紐解いていきたいと思います。
B'zの『ピエロ』について歌詞から読み解き徹底考察
歌詞の前に、イントロについて少しだけ。
歪みがかかった松本さんによるエレキギターのカッコよすぎるリフ。
そこに稲葉さんのシャウトが乗っかり、疾走感全開の中、Aメロが始まります。
ひたすら爆走する車を思い浮かべて、Aメロの歌詞をご覧ください。
桃色に染まりゆく 東雲を追いかけて
疾走するポンコツカー あなたを乗せて
風に舞いかおる髪 もうちょい体よせ合いたい
あいつは血まなこ 憎しみ燃やす
東雲(しののめ)、とは「東の空に浮かぶ雲」、転じて
「東から太陽が昇る途中、夜空が少しずつ明るくなってくる頃」のことを指します。
「桃色に染まりゆく東雲」ということから、
明け方の夜空に浮かぶ雲が朝日に染まっている様子が思い浮かびますね。
「風に舞いかおる髪」、助手席に乗せているのは女性でしょう。
明け方に「かおる髪」ということは、朝シャワーを浴びたばかり。
さらに「あいつは血まなこ」で「憎しみを燃やす」、ということから、
車で疾走する2人の恋が 正当な恋愛ではなく認められない恋、
さらには不倫関係にある恋を意味しているようにも読み取れます。
Getaway getaway 地の果てまで
こわいもの全部 ふきとばせ
何もかも 新しい瞬間
後ろはふりかえらないで
「Getaway」、つまり「逃げる」。
欲望は勝てなかったものの、やはり心には恐怖心がまだかなりあるようです。
「こわいもの全部 ふきとばせ」スピードをあげることで
忘れようとしているのでしょうか。
でも、勢いに任せて逃げ続けている反面、「何もかも新しい瞬間」と
そんな状況を不覚にも楽しんでいるようにも思えます。
「後ろはふりかえらないで」つまり目の前の恋のために、
大切なものすべて投げうつ覚悟で逃げているのでしょう。
「Getaway」が2回繰り返して使われているのもそのせいかもしれません。
怪物に心を バリバリ食いちらかされて
思わずあなたを 奪っちまったんだよ
この広い世界の中 2人しかいないような
寂しさかみしめ 胸かきむしる
1番のサビから短い間奏を挟み、勢いはそのまま2番に入ります。
逃避行の情景を歌った1番と比べ、
2番では逃避行の決断に至る直前の光景でしょうか。
抑えきれなかった欲望を「怪物」と例え、
「思わずあなたを奪っちまったんだよ」と自制できなかった自分自身を
客観的に振り返っています。
「寂しさかみしめ 胸かきむしる」と続いていることから察するに、
世間体と目の前の愛人を天秤にかけた結果、後者を選んだのでしょう。
世界で二人きりになったとしても貫きたい恋…
もちろん周囲から浴びせられる言葉は察するに余りありますが、
承知の上で疾走する様子が次の2番のサビに続きます。
Getaway getaway 地の果てまで
あのカーブ越えりゃ 青い空
強烈な生と死の匂い
浮かれたようにハンドルを切る
「あのカーブ越えりゃ 青い空」と、
1番Aメロの「桃色に染まりゆく東雲」が見られた頃合いから
けっこう時間が経っていることを意味しています。
「強烈な生と死の匂い」、隣の恋人の香りなのか、
はたまたクラクラするほどの自責の念を匂いに例えているのか、
速度を落とさずに逃亡しながらも
この地点ではまだ完全には吹っ切れていないようです。
そしていよいよ「浮かれたようにハンドルを切る」、
これまでの心の迷いと後ろめたさが、次のCメロでいよいよ最終段階を迎えます。
今この手に入れたんだよ
見たこともない自由 Yeah
ここまで来たらもう大丈夫、そういう場所にたどり着いたのでしょうか。
「見たこともない自由」を手に入れ、
そのあとに「Yeah」とハイになる様子が続きます。
イメージするに、汗ばむ手でハンドルを握りしめて
アクセルを強く踏み込んできた全身の力が、
予定地にたどり着いて緩んだ感じでしょうか。
そしていよいよ最後のサビで、曲名の『ピエロ』のワードが出てきます。
Getaway getaway オレはピエロ
ひたむきで滑稽な 逃亡者
涙は流さないでおくれ
悲しいけど美しいのがLIFE
暗い未来は もう描かない
夢のスピードは もうゆるめない
逃亡劇の最後、ひたすらに逃げた自分を運転者は「ピエロ」と例えます。
「ひたむきで滑稽な逃亡者」、人に後ろ指さされずとも、
おそらく本人が一番分かっていました。
「涙は流さないでおくれ」、同乗した女性は泣いていたのでしょうか、
それとも「ピエロ」というからには運転者も泣いていたかもしれません。
「悲しいけど美しいのがLIFE」、世界中で味方はたった2人、
それでも2人でいられる楽しさ…
ごちゃまぜの感情が自虐と共に表されています。
最後、「暗い未来はもう描かない」と開き直った結果、
思い切り踏んできたであろうアクセルを「夢のスピード」と例えています。
「緩めない」の歌い終わりのロングトーンが物悲しくも潔いです。
歌詞のあとも曲が終わるまで「Getaway…Getaway…」と
エコーがかかって遠のいていくことから、2人は完全に逃避行したのでしょう。
孤独を選んだ「ピエロ」が幸せになれたかどうかは
リスナーの私たちにゆだねられて、曲はしめくくられます。
B'zの『ピエロ』まとめ
目の前の状況から逃げ出したくなる苦しさ、
でも心のどこかにある未来への謎のワクワク感。
稲葉さんの絶妙なハイトーンで情景がリアルに浮かび上がりますね。
さらに、上木彩矢による『ピエロ』は女性ボーカルさながら、
また異なる光景が浮かぶかもしれません。
ぜひ本家B’zバージョンの『ピエロ』と合わせて、聞いてみてください。
そして最後に、先月2020年2月26日に、最新のツアーDVD/Blu-ray
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令和を駆け抜けるB'zからも目が離せません。ぜひ、ご覧ください!