「移動ド」「固定ド」とは?移動ド唱法のメリットと使い方を紹介!

「移動ド」と「固定ド」についてご存知ですか?音楽の基礎能力をつけるためのソルフェージュにも「移動ド」や「固定ド」、それぞれに基づく方法があります。ここでは、「移動ド」「固定ド」とともに、カラオケでも使っているであろう移動ド唱法についてもご紹介します。

記事の目次

  1. 1.移動ドとは?
  2. 2.固定ドとは?
  3. 3.移動ドと固定ドの違い
  4. 4.移動ド唱法とは
  5. 5.まとめ

移動ドとは?

移動ドとは、音の高さに関係なく、楽曲の調に合わせて「ドレミファソラシ」の位置を移動させて音を読むことを意味します。

つまり、音を階名読みするということです。

階名読みとは

階名読みとは、音を絶対的な高さで読むのではなく、必ず主音は「ド」とし、他の音は主音に対する相対的な音として捉え、「ドレミファソラシ」に置き換えて読む方法です。

長調の曲であれば主音を「ド」、短調の曲であれば主音を「ラ」として読み替えます。

以下は「ちょうちょう」の旋律ですが、ハ長調で書かれていても、ヘ長調で書かれていてもどちらも同じ読み方になります。
(ヘ長調の方は、主音の「ファ」を「ド」として読み替えています。)

音名読みに慣れている方にとっては、この楽譜の風景に違和感をもたれるかもしれません。

階名読み

移動ドを使うメリット

移動ドを使うメリットについては、以下のとおりです。

音の機能が感覚的に掴みやすい

移動ドは、楽曲の調を無視しては読めません。移動ドでは、主音は常に「ド」、下属音は「ファ」、属音は「ソ」、導音は「シ」と決まっているため、どのような調でも音の機能が感覚的に掴みやすいのです。

和音の機能についても同じで、以下のように決まるので、感覚として掴みやすくなります。

  • Tonic(トニック):Ⅰ(主和音)の「ドミソ」
  • Subdominant(サブドミナント):Ⅳ(下属和音)の「ドファラ」など
  • Dominant(ドミナント):Ⅴ(属和音)の「シレソ」など

音程感覚(相対音感)が身に付きやすい

移動ドでは、音を主音に対する音程で捉えるため、相対的な音程感覚(相対音感)が身に付きやすいです。
「ド」がわかればその他の音の音程がわかるという感覚です。

どのような調でも、隣り合う音の音程は以下に当てはまります。

  • 「ド」と「レ」の間の音程は「全音」
  • 「レ」と「ミ」の間の音程は「全音」
  • 「ミ」と「ファ」の間の音程は「半音」
  • 「ファ」と「ソ」の間の音程は「全音」
  • 「ソ」と「ラ」の間の音程は「全音」
  • 「ラ」と「シ」の間の音程は「全音」
  • 「シ」と1オクターブ上の「ド」の間の音程は「半音」
絶対音感はなくても、相対音感を身に付けることで、歌唱、視唱などの際に音が取りやすくなります。

移調がしやすい

楽曲の調を意識しますので、主音がわかれば移調ができます。

特に、ギターでは、ポジションを変更するだけで簡単に移調(キーの移行)ができます。

移動ドを使うデメリット

移動ドを使うデメリットについては、以下のとおりです。

譜読みの難しさ

転調の多い曲など、複雑な曲の場合は、主音の変化が多いため、主音の読み替えが頻繁に発生します。
それに伴い、譜読みが難しくなります。

固定ドとは?

固定ドとは、音を絶対的な高さに基づいて読むことを意味します。
つまり、音を音名読みするということです。

音名読みとは

音名読みとは、階名読みとは異なり、音を絶対的な高さで読む方法です。「ドレミファソラシ」をハ長調の位置に固定して読みます。「ドレミファソラシ」以外に、「CDEFGAB」や「ハニホヘトイロ」という読み方もあります。

どのような調の曲であっても、「ドレミファソラシ」の位置は変化しません。一般的には、「ドレミファソラシ」というのは階名として扱われていますが、音名として扱っているのは日本だけのようです。

原曲がハ長調の曲を、半音下げてロ長調の曲に移調した場合、「ドレミ…」を「シド#レ…」として読みます。

以下は「ちょうちょう」の旋律ですが、ハ長調で書かれている楽譜とヘ長調で書かれている楽譜では読み方が異なります。

音名読み

固定ドを使うメリット

固定ドを使うメリットについては、以下のとおりです。

譜読みが簡単である

音の高さと音の読みが常に一致しているため、簡単に音を読むことができます。
そのため、転調が多い複雑な曲でも、音の読み方は一定しているため、比較的譜読みはしやすいです。
 

絶対音感が身に付きやすい

常に音の高さを意識しないと譜読みができないため、絶対音感が身に付きやすいです。

固定ドを使うデメリット

固定ドを使うデメリットについては、以下のとおりです。

調性や音の機能の習得が難しい

調を意識しなくても譜読みができるため、固定ドを使っているだけでは調性や音の機能(主音、下属音、属音、導音などの機能)について習得するのは難しいです。

和音の機能(Tonic(トニック)、Subdominant(サブドミナント)、Dominant(ドミナント))についても同様のことがいえます。

移動ドと固定ドの違い

Photo bygeralt

移動ドと固定ドの違いについてまとめました。

音の読み方の違い

移動ドでは、どのような調の曲であっても主音が「ド」になるように、「ドレミファソラシ」の位置を変えて音を読みます。一方、固定ドでは「ドレミファソラシ」の位置は常に同じで、音の高さにより音の読みが決まります。

譜読みについては、転調が多いような複雑な曲の場合は、主音が何度も変わります。それに伴い、読み替えの手間が発生するため、固定ドの方が譜読みはしやすいといえます。

習得できるものの違い

移動ドでは、楽曲の調性や音の機能について習得できます。

一方、固定ドは音の高さの感覚が習得しやすく、絶対音感が身に付きやすいといえます。

移動ド唱法とは

Photo by4753994

移動ド唱法とは、楽曲の調を意識し、主音を「ド」に読み替えて、階名読みで歌う唱法を意味します。どのような調の曲でも、「ドレミファソラシ」で歌うということです。

絶対音感はなくても、主音とその他の音との音程が把握できていれば歌えます。

移動ド唱法の使い方

移動ド唱法の使い方をご紹介します。

原曲のキーを変更して歌う

意外と多くの方がこの唱法を無意識のうちに使って歌っていると思います。

例えば、カラオケで原曲のキーを変更して歌うことはありませんか?原曲では自分の声帯に合わずに歌えないというときに、キーを上げたり下げたりして自分の歌いやすいキーに変更(移調)しますよね。原曲とはキーが異なるので、きっと一度も聴いたことのないキーでの曲になるでしょうが、意外と最後まで歌えますよね。

これは、主音と各音の音程が頭の中で認識できているからです。主音と各音との音程は調が変わっても同じなので、絶対音感がなくても移動ド唱法で歌うことができるのです。

耳コピして譜面に起こす

絶対音感はなくても、主音と各音との音程が認識できていれば音を聴きとることができます。

まとめ

Photo byFree-Photos

以上、移動ドと固定ド、移動ド唱法についてご紹介しました。

移動ドと固定ドにはそれぞれ特性があり、どちらがいいというものではありません。どちらも習得できればベストなのでしょうが、それぞれのメリットとデメリットを考慮し、目的にあったものを選ぶと良いのではないでしょうか。

関連記事

Article Ranking