【スピッツ】ドラマ主題歌にも起用された『楓』に込められた想いや歌詞の意味とは?
時代を超えて語り継がれるスピッツの名曲『楓』。胸が苦しくなるほどの切なさが詰まった『楓』には、いったいどんな想いや意味が込められているのでしょうか。今回は、スピッツ名曲『楓』のタイアップ情報や歌詞の意味などについて注目してみました。
『楓』に込められた想いや歌詞の意味を徹底解説
スピッツのほとんどの楽曲の作詞・作曲をボーカルの草野マサムネが手がけており、『楓』についても草野マサムネが作詞・作曲を担当しています。
スピッツの楽曲と言えば名曲揃いでありながら歌詞の解釈が難しいことでも有名で、『楓』の歌詞についても曖昧な表現のままの部分も多くファンによって多くの考察がされていますが、人それぞれでいろんな解釈ができるというのも音楽の楽しさの1つです。
今回、『楓』の歌詞について私も独自に歌詞の意味を考察してみましたので、解説していきたいと思います。
忘れはしないよ 時が流れても
いたずらなやりとりや
心のトゲさえも 君が笑えばもう
小さく丸くなっていたこと
「時が流れても忘れない」という表現から、意味のないやりとりを交わしていた日々はもう過去のことだということが想像できます。
大切な人との時間を失ったとき、初めてくだらない時間こそが幸せだったりすることに気付くこともあります。
”君”の笑顔があれば、嫌なことも辛いことも全部忘れられたし、怒りの感情なんかもなくなって優しく温かい気持ちになれた。
”君”がそういう力を持っていたというよりは、主人公にとって”君”がどれだけ特別でかけがえのない存在だったかという想いが伝わってきます。
かわるがわるのぞいた穴から
何を見てたかなぁ?
一人きりじゃ叶えられない
夢もあったけれど
”かわるがわるのぞいた穴”とは、いったい何の”穴”だったのでしょうか。
それは、未来を見るための望遠鏡だったのかもしれません。
”かわるがわる”という表現から、主人公だけや”君”だけではなく2人が同じ”穴”をのぞいていたことがわかります。
今は別れてしまった2人。
2人で過ごしてきた日々は確かにあるけれど、今は違う道を歩んでしまうことになった。
同じ場所から同じものを見ていたと思っていたけれど、もしかしたら違ったのかもしれません。
さよなら 君の声を 抱いて歩いていく
ああ 僕のままで どこまで届くだろう
”さよなら”や”歩いていく”という言葉は、”君”自身との別れを表現しているように感じられます。
でも、”君”がくれた言葉や思い出は一緒に生きていく。
”僕のまま”というのは、君が隣にいない一人になった”僕”ということではないでしょうか。
”抱いて歩いていく”という強い執着を感じさせる表現や、”僕”ひとりのこれから先の人生を想像させる表現などから、この曲は大切な人との死別を歌ったものなのではないかとも考えられています。
この美しいメロディーで死別というテーマを描いていると考えると意外かもしれませんが、スピッツの楽曲は死をテーマにしたものが多いです。
もう温度を持った”君”は隣にいなくて、”君”がいなくなったこれからの人生を僕はどこまで歩んで行けるだろうか。
大切な人を失うということは、残りの人生を一人で生きていかなければならないということ。
『楓』の歌詞からは、そんな切なくて苦しい感情がひしひしと伝わってきます。
探していたのさ 君と会う日まで
今じゃ懐かしい言葉
ガラスの向こうには 水玉の雲が
散らかっていた あの日まで
主人公が探していたのは、人生でただ一人の心から愛せる人の存在でしょうか。
そう考えると、”今じゃ懐かしい言葉”とは”君”に愛を伝える言葉ではないかとも思えます。
”ガラスの向こう”に広がる”水玉の雲”。”散らかっていた”という表現はあまりポジティブな意味では使いませんよね。”ガラスの向こう”とは主人公の心の中を表しているのではないか、と私は解釈しました。
”君”に出会うまで、ガラスに囲われた心の中は雲のようなもやもやが散らかった状態だった。
それが、”君”に出会ったことで”散らかっていた”状態が整頓されてキレイな状態になったのです。
風が吹いて飛ばされそうな
軽いタマシイで
他人と同じような幸せを
信じていたのに
今までは、守りたいものも大切なものも何もなく、”風”で簡単に吹き飛ばされてしまいそうな弱い心と意思で生きていた。人並みに平凡に生きていけたらいい。
それが、”君”と出会ったことで気持ちに変化が訪れ、”君”を守りたいという強い意思が主人公に芽生えたのかもしれません。
これから 傷ついたり 誰か 傷つけても
ああ 僕のままで どこまで届くだろう
傷つくこと、そして誰かを傷つけてしまうことは、どちらも痛みを伴う苦しいものです。
そんな辛いときにも、君は隣にいない。
一人でその苦しみを乗り越えて行けるだろうか。その先を歩んで行けるだろうか。
大切な人の存在を噛み締めるときというのは、もちろん楽しいときや幸せなときもありますが辛いときや悲しいときであることもあります。
”僕”にこれからどんな人生が待っていても、”君”がいない日々を進んでいかなければいけないのです。
楓といえば紅葉が美しく、季節によって緑や黄色、赤とその色を変えていく姿から「美しい変化」という花言葉があります。
そして、楓のもう一つの花言葉が「大切な思い出」。
歌詞の中には「楓」や植物自体すら登場しておらず、この曲に『楓』というタイトルが付けられた理由はわかりません。しかし、大切な人との思い出と共に一人でどこまで生きていけるだろうか、という切ない感情を歌ったこの曲に、「大切な思い出」という言葉はとてもぴったりなように感じられます。
そして、季節と共に色を変える綺麗な楓の姿を想像しながらこの曲を聴くと、この楽曲の美しさをより鮮明に味わうことができます。
まとめ
歌詞の意味を考えると暗くて気持ちが沈んでしまうのに、ここまで多くの人に愛され名曲として評価される『楓』。
美しすぎる歌詞やメロディーに胸が苦しくなり、風に乗ってどこまでも届きそうな草野マサムネの声で歌われるこの楽曲は涙なしでは聴くことができず、聴き終えた後は1つの映画を観たような深い余韻に包まれます。
人を愛すること、人を失うこと、人生の中で大切なことを教えてくれるような『楓』は、これからどれだけ時代が流れても語り継がれ、歌い継がれる作品であると思います。
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