【ドラマ】SPEC主題歌THE RiCECOOKERS『波のゆくさき』とはどんな曲?

TBS系列で放送された人気ドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課未詳事件対策係事件簿~』で主題歌としてTHE RiCECOOKERSの『波のゆくさき』が起用されドラマとともに注目を集めました。今回はドラマ『SPEC』とその主題歌について紹介していきます。

記事の目次

  1. 1.超話題作SPECの人気がすごい?!
  2. 2.「SPEC」の主題歌にはTHE RiCECOOKERS『波のゆくさき』が起用された
  3. 3.『SPEC』主題歌THE RiCECOOKERS『波のゆくさき』の歌詞の意味とは?(1)英語詞
  4. 4.『SPEC』主題歌THE RiCECOOKERS『波のゆくさき』の歌詞の意味とは?(2)日本語詞
  5. 5.まとめ〜テイストの異なる主題歌

超話題作SPECの人気がすごい?!

2010年に放送されたTBS系のドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』。

戸田恵梨香・加瀬亮がダブル主演を務め、連続ドラマだけでなくWebドラマやスペシャルドラマ、映画とシリーズが展開されています。1999年に放送された刑事ドラマ『ケイゾク』の主要スタッフが制作を手掛けており世界観やコメディー要素を引き継いだ作品です。制作当初は仮題『ケイゾク2』として企画されました。『ケイゾク』から見ている人も『SPEC』から見始めた人でも楽しめる人気です。

本シリーズは「刑事物」のフォーマットをとっていますが、話数が進むにつれてSPECと呼ばれる特殊能力が前面に出るSF色が前面に出てくる作品となっています。

壮大な世界観と戸田恵梨香・加瀬亮の対照的なキャラクター、意味がわかればニヤリとできるところどころに見られる製作陣の「遊び」など、楽しむ要素は様々です。

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SPEC〜あらすじ

SPEC(スペック)とは、特殊能力のことで、予知能力や瞬間移動などその能力は人によって様々です。その特殊能力の所持者はスペックホルダーと呼ばれ、人的資源(ヒューマンリソース)として各国の政府や国際資本等から注目されています。

戸田恵梨香が演じる当麻紗綾(とうまさや)は、通常の人間は10%しか脳を使っていないが、残り90%を発揮することによってスペックが発現されると言っています。

なお、当麻紗綾は京大卒の物理マニアでIQ201の頭脳の持ち主です。餃子が好物で、頭脳を酷使するためか、尋常でない量の餃子を食べるシーンが何度も見られます(蜂蜜をジョッキで飲み干すシーンも)。

 

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そんなにわかに信じられないような能力や科学的に説明のできない事象による難解な事件を取り扱う部署が、警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係(通称:未詳=ミショウ)です。地下21.5階にオフィス(当麻紗綾いわく「倉庫」)がありその実態は警視庁内で問題のある人物の左遷先。

未詳の係長を務めるのが、竜雷太が演じる野々村光太郎で「ミショウ」の一員として当麻紗綾が配属され、加瀬亮が演じる瀬文焚流(せぶみたける)も警視庁SIT丙部隊長として任務出動中に部下である志村優作を誤射した疑いをかけられ「ミショウ」へと左遷されます。


劇中では、IQ201を持つ変人当麻と元SIT隊長の肉体派刑事の瀬文のコンビが、様々なスペックによる普通では考えられない事件に立ち向かっていきます。ほぼ1話ごとに物語が完結する構成ですが、話数が進み新たなスペックホルダーの登場する中で当麻の過去、謎に包まれた伏線、巨大な存在による壮大な計画などが明らかとなっていきます。



 

10年経っても色褪せないSPECの魅力

ドラマシリーズは2010年に公開された作品ですが、2020年6月に全10話が一挙再放送されました。2010年放映当時からSNSとの連携に力を入れていた作品ですが、再放送時もTwitterをはじめとするSNSでの反響は大きく、作品の変わらぬ魅力を印象付けました。

また、折しも2020年、当間紗綾を演じた戸田恵梨香さんと俳優の松坂桃李さんとの結婚が発表されましたが、その際のTwitterではSPECが他の関連ワードともにトレンド入りしました。「SPEC」という作品、キャストがファンから今も愛されていることが分かるエピソードです。

「SPEC」の主題歌にはTHE RiCECOOKERS『波のゆくさき』が起用された

『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』の監督は、「ケイゾク」・「I.W.G.P(池袋ウエストゲートパーク)」・「TRICK(トリック)」など、数々のヒット作を生み出している堤幸彦氏です。「SPEC」の主題歌は、THE RiCECOOKERSというバンドが手がけているのですが、これは堤監の起用と言われています。その作品のタイトルは「波のゆくさき」及び英語詞の「NAMInoYUKUSAKI」です。

ギターのイントロがとても印象的な曲で、のちに紹介しますが様々なアレンジのバージョンがあります。

THE RiCECOOKERSとはどんなアーティスト?

THE RiCECOOKERS(ザ・ライスクッカーズ)は、廣石友海(Vo.&Gt.)、藤井恒太(Gt.)、若林大祐(Ba.)、大山草平(Drs.)で構成されているロックバンドです。アメリカの名門、バークリー音楽大学で知り合ったメンバーで結成されているという輝かしい経歴を持った実力派のバンドです。2006年にアメリカのボストンで結成され、その後ニューヨークを拠点に活躍をしました。ちょうど10年経った2016年の11月に「再始動時の新しい、よりパワフルなTHE RiCECOOKERSのロックをお待ちください」というツイートと共に活動休止が発表され、活動再開が待たれるバンドです。

ちなみにRicecookerとは英語で炊飯器のことで、アメリカで日本人が活動するにあたり印象的な名前をという想いのもと名付けられたと言われています。

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『SPEC』主題歌THE RiCECOOKERS『波のゆくさき』の歌詞の意味とは?(1)英語詞

ドラマ『SPEC』のために書き下ろされた『波のゆくさき』ですが、発表当初は日本語詞の作品でした。その後、これまた堤幸彦氏によるエンディングによってバージョンを変えるという非常にユニークな構想に応える形で英語詞の『NAMInoYUKUSAKI』が作成されました。まずはドラマ序盤に使用された英語詞版の『NAMInoYUKUSAKI』の歌詞について紹介していきます。

『SPEC』主題歌『NAMInoYUKUSAKI』(英語詞)

まずは英語詞について読んでいきましょう。
英語詞は「波のゆくさき」が完成したのちに堤幸彦監督から要請を受けて作られたバージョンです。
なお、和訳は筆者の独断によるものです。悪しからずご了承ください。
 

I'm one step behind every step you take
Each time I reach it just seems to fade away
But with every speck of light, I fight the breaking need to try
Day will break the nite
And the light will find my way

In a dream I'm sure I saw it all
The tides that fall and rise again, and again
Well maybe it's just me, caught in desperation to
Fight this helpless falling sensation
I won't let this take me down

One after another endlessly
How many more will I fight away
Every time hoping it'd be the last time I'll have to say hello
Night after nite I dream of ways
To not have to meet you once again
Cuz every time feels like the very first time when I’ll have say goodbye

You'll see me some day wondering around
Eyes shut and arms up singin’ "I won't let me down"
And all I'll need is one break in your sigh to breath
Just one breath's enough to reach you
But somehow it keeps coming back

One after another endlessly
How many more will I fight away
Every time hoping it'd be the last time I'll have to say hello
Night after nite I dream of ways
To not have to meet you once again
Cuz every time feels like the very first time when I’ll have say goodbye

Oh and as I open up my eyes
A new dawn will cover it all
And so it starts again with the call of day
An endless start in motion

Build up of expectations
And it soon engulfs the best of us
Lost in its speculations
Will we ever find a way to trust
What I'll need is a kind of patience
One that will give me the will to fight
The last voice that ends in cadence
I won't let it be me

One after another endlessly
How many more will I fight away
Every time hoping it'd be the last time I'll have to say hello
Night after nite I dream of ways
To not have to meet you once again
Cuz every time feels like the very first time when I’ll have say goodbye

I'll get by with a little bit of
Hope and all and maybe just a little
Push on my shoulder and yes I'll take my plunge now
Cuz all in all it all rests on
The first hand that you can let go
Then and only then will you see why you've held on

No
And yes you’ll see why you’ve held on
No

英語詞の概要

以下、英語詞の大まかな意味を解説していきます。なお、和訳は当記事のライターによるものです(だいぶ意訳です)。

《Aメロ》
私はいつも消えそうなあなたの一歩後ろにいる。
光のかけらとともに戦わなければ。
一夜明けた光が私を導くから。

夢の中ですべて見ている引いては満ちる潮。
多分それは「落下感覚」に抗う私。
負けない。

《サビ》
終わりなく続けられる闘い。いつもこれが最後と願う。
毎晩、あなたに合わなくてすむように夢を見る。
毎回、初めてさよならを言っている気がするから。

《Aメロ2》
あなたは彷徨いながら私を見つける。
目を閉じて、腕を上げて、「負けない。」
ため息でいい。それであなたに届くから。
でもなぜだろう。その息は帰って来てしまう。

《サビ*リピート》
終わりなく続けられる闘い。いつもこれが最後と願う。
毎晩、あなたに合わなくてすむように夢を見る。
毎回、初めてさよならを言っている気がするから。

《Cメロ》
目を開くと新たな夜明けが包み込む。
新しい一日とともに、無限がまた始まる。

希望は持てば私たちの「ベスト」を包み込む。
そんな妄想の中から「真実」を見つけ出せるのか。
絶えることが必要。闘う意思をくれる。
満ち干の中、最後の声が消える。
そんなことさせない。

《サビ*リピート》
終わりなく続けられる闘い。いつもこれが最後と願う。
毎晩、あなたに合わなくてすむように夢を見る。
毎回、初めてさよならを言っている気がするから。

《大サビ》
希望のかけらはきっと掴める。そして全ては私の肩を押す。
そして飛び込んでいく。
放さないで。あなたは手を放した時、あなたが掴んでいた、掴み続けて来たその意味を知る。放さないで。
 

当麻視点の歌詞か

Aメロの後半に
The tides that fall and rise again, and again

(潮は何度も満ち引きする)
とあり、タイトルのNAMInoYUKUSAKIを連想させます。
しかしそれはただの潮の満ち干を表しているわけではないと考えられます。後述しますが何度も繰り返される「ループ」のことを暗示しているように印象付けます。

その直後に
Fight this helpless falling sensation
というフレーズがあります。当記事では「落下感覚に抗う」と訳しましたが、劇場版までたどり着いた視聴者ならば共通して思い浮かべるシーンがあるのではないでしょうか。

また、3回繰り返されるサビも
One after another endlessly
How many more will I fight away

「終わりがない闘い」や

Cuz every time feels like the very first time when I’ll have say goodbye
「毎回、初めてさよならを言っている気がするから。」と、
無間地獄のようなループから抜け出せない苦しみのようなものが感じ取れます。

そして、それでも
Eyes shut and arms up singin’ "I won't let me down"
目を閉じて、腕を上げて、「負けない。」
当麻紗綾の象徴的なシーンです。

「希望」をめぐる後半

Build up of expectations
And it soon engulfs the best of us

希望は持てば私たちの「ベスト」を包み込む。
そんな妄想の中から「真実」を見つけ出せるのか。

"expctations"は「期待」の方が意味的には適当なのかもしれませんが、このあと出てくる"hope"と揃えるためにあえて「希望」と読ませました。大サビのところで
I'll get by with a little bit of hope...
とあります。英語詞では終盤、希望に向かって進んでいく意志が見て取れます。

そして「手を...放さないで」という終盤。「当麻の手を掴めるのは瀬文だけ。」だからこそこれは当麻から瀬文へのメッセージでしょう。「希望」のために。

『SPEC』主題歌THE RiCECOOKERS『波のゆくさき』の歌詞の意味とは?(2)日本語詞

続いて、和文の歌詞を読んでいきましょう。制作過程でいうと、こちらが先に作られた歌詞です。

いつのまにか止まったまま 波のシズクと消えたあしあと
Maybe it's just me 冷たくからみつく
Wanting so much 流れは早さをまして

いつもと同じ夢の中 めざめる事におびえて、ふるえて
The sun against my will 陽がおとす影は
Never again the same 二度と重なることもない

まぶしく映る おもかげさえも
波に揺られて かたち変えてく
色を失くした 思いとともに
流されてゆけ 波のゆくさきへ

いつかと同じこの場所で すくいあげた命のかけらは
Now lose it all again 指のすきまから
I won't even recognize you こぼれ落ちてゆく

ひかりのしぶきを あげるあの夜空も
そのひとみには もう映らない
意味を失くした ねがいとともに
流されてゆけ 波のゆくさきへ

ああ 新しい朝日が 包み込んでゆく
また始まる日々の中 動き出して

果てなく続く 命のらせんが
まじわることを きせきと呼ぶなら
それはあのとき 二人が出会った
最初で最後のしゅんかん

まぶしく映る おもかげさえも
波に揺られて かたち変えてく
色を失くした 思いとともに
流されてゆけ 波のゆくさきへ

時は動き出す 手に握りしめた
記憶の破片は 一つだけでいい
ただひとりきり また歩き出す
目の前を照らす 光のさきへ

Maybe it's just me 全てを飲み込んで
Wanting so much ただ流されてゆけ
The sun against my will 誰も知らない
I won't even recognize you 波の ゆくさきへ
I won't even look up to

交わることのないモノを象徴する歌詞

冒頭Aメロ(2)このような言葉があります。
陽がおとす影は〜二度と重なることもない

作詞者は、『SPEC』シリーズを全編観てからこの詞を書いたのではないかと思ってしまうほど、作品内の登場人物とリンクしています

  • 当麻紗綾と、対決する運命となった実態である一十一(ニノマエジュウイチ)との関係。
  • 瀬文焚流と、謎の事故で意識不明の重体に陥っているSITの部下である志村との関係。
  • 映画『SPEC〜結』の結末における当麻と瀬文(大いにネタバレになるので詳しくは書けませんが)。
それぞれ皆、日が落とす影=スペックホルダーの力によって関係が引き裂かれています。

そして最初のサビ。
まぶしく映る おもかげさえも
波に揺られて かたち変えてく
色を失くした 思いとともに

流されてゆけ 波のゆくさきへ

このサビは大サビでもう一度繰り返されるのですが、何かを「失う」ことが暗示されています。失ってしまった何かはタイトルの「波のゆくさき」へと消えていってしまいます。
その後に続くAメロ(3: すくい上げた命のかけらは〜こぼれ落ちてゆく)〜サビ(2: ひかりのしぶきを〜)も、喪失感と諦めととれる言葉が続いていきます。

確かにこのドラマは話数が進むにつれてストーリーのスケールが壮大になっていき、それに伴って多くの人物(あえて敵や味方と書きません)が犠牲となっていきます。劇場版になるとさらにスケールアップし、人物だけでなく、主人公の当麻と瀬文は多くの喪失と変容と対峙することになります。
 

極め付けは大サビ前のCメロ(2)です。
果てなく続く 命のらせんが
まじわることを きせきと呼ぶなら
それはあのとき 二人が出会った
最初で最後のしゅんかん


堤幸彦監督は作曲のリクエストの際にどこまでRiCECOOCERSに構想を伝えていたのでしょう。この一節は『SPEC』シリーズを締めくくる『SPEC〜結』の結末を暗示しているように読めます。当麻の「力」と瀬文の「決意」により2人は交わることのない平行世界の住人になります。映画では当麻の「いなかった」世界が繰り返される描写があります。

当麻のいない世界の住人となった瀬文にとって、当麻との出逢いは「きせき」。そして世界はループしていきます。当麻を忘れた(知らない)世界の中でただ1人、瀬文だけが当麻の存在を覚えています。そう、まさにラストのサビの歌詞のごとく。

時は動き出す 手に握りしめた
記憶の破片は 一つだけでいい
ただひとりきり また歩き出す
目の前を照らす 光のさきへ...

 

まとめ〜テイストの異なる主題歌

「NAMInoYUKUSAKI」と「波のゆくさき」は、描いている世界は共通していますが、「NAMInoYUKUSAKI」が波のように終わらないループと闘い、そしてその先にある希望への意志を歌っているのに対して、「波のゆくさき」は失うことへの喪失感と、出逢いの奇跡を歌っています。解釈・考察は様々あると思いますが、ここまで読んでいくと、英語詞の「NAMInoYUKUSAKI」が当麻の心情を、日本語詞の「波のゆくさき」は序盤は当麻もいるような気がしますが、終盤は瀬文の心情を表しているように考えられます。

大人気ドラマ、そして劇場版まで、SPECワールドは回を増すごとに壮大になっていきます。この主題歌である「NAMInoYUKUSAKI」と「波のゆくさき」を作品鑑賞の「補助線」にしてもう1度観直して見流という楽しみ方ができるかもしれません。

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