ショパンのノクターン(夜想曲)の21曲をご紹介!有名曲・名曲揃い
ショパンのノクターンはロマンティックで美しいメロディーの曲が多く、映画やテレビでもよく使われていますね。ここではノクターンの意味に触れながら、どこかで聞いたことがある有名曲から隠れた名曲まで、ショパンのノクターン全21曲をご紹介します!
ショパンのノクターン(夜想曲)
ショパンのノクターン(夜想曲)は、ワルツやポロネーズなどと並ぶショパンの代表作品です。
有名な曲は数曲しかありませんが、実はノクターンの作品は21曲もあるんですよ。難易度はショパンの曲の中では易しい方なので、ピアノ学習者にとってノクターンは「ショパンの曲の入門」でもあります。
落ち着いたテンポと美しいメロディーが特徴で、テレビや映画で使用されたりピアノ以外の楽器でアレンジされたりもしています。
今回はショパン好きの筆者が魅力たっぷりのノクターン全21曲をご紹介するので、ぜひお気に入りの1曲を見つけてみてくださいね!
ノクターン(夜想曲)とは?
ノクターンは「夜想曲」と訳されますが、夜想曲とはどういう意味でしょうか。
どうやらラテン語の「ノクス=夜」という言葉が語源のため、夜想曲と訳されるようになったそうです。
ノクターンはタイトルというよりジャンルのことで、クラシック音楽的には「性格的小品」と呼ばれます。
性格的小品とは自由な表現で作曲されたある性格(特徴)をもった楽曲のことで、ワルツやポロネーズも性格的小品にあたります。
ノクターン(夜想曲)の特徴とは?
例えばワルツは舞踏会で踊るための曲、もしくは踊りをイメージして作られた3拍子の曲、という特徴があります。
ノクターンは拍子に決まりはありませんが、全体的にゆったりしたテンポで、左手の伴奏に乗せた右手の声楽的(歌うような)メロディーが特徴です。
ショパンはジョン・フィールドという作曲家の作ったノクターンに影響され、10代の頃から晩年までノクターンを書き続けました。ショパンのノクターンはまさに「夜を想う」「夜に想いふける」ようなロマンティックな作品集となり、現在まで愛され続けています。
テレビ・映画でも使われている
ショパンのノクターンと言えば!というあの曲。
皆さんは思い浮かびますか?
テレビや映画にも使われている、特に有名な2曲をご紹介します。
優美なメロディーにうっとり!ノクターン第2番
- 1956年公開のアメリカ映画「愛情物語」
- テレビ朝日「マツコ&有吉の怒り新党」
- au三太郎シリーズCM「本命?」篇
- フィギュアスケート浅田真央選手ショートプログラム曲
特に2014年のソチ五輪で浅田真央選手が使用していたため、日本中の人たちがこの曲を耳にしていたと思います。
ちなみに浅田真央選手は他にも幻想即興曲やバラード1番など、ショパンの曲をよく使用していました。
悲しげなメロディーが切ない!ノクターン第20番
この曲は2002年公開のフランス映画「戦場のピアニスト」で使用されたことで有名になりました。
「戦場のピアニスト」はカンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞したことで、日本でも一時ブームとなりましたね。
「戦争」のイメージが付いてしまい悲しい曲に聴こえてしまいますが、とても繊細で美しい曲です。
また、歌手の平原綾香がこの曲を元にアレンジした「ノクターン」という曲をリリースしています。
2008年放送のフジテレビ系ドラマ「風のガーデン」の主題歌、挿入歌として使用されました。
彼女の代表曲「Jupiter」もクラシック曲をアレンジしたものでしたが、この「ノクターン」もショパンの繊細なメロディーを見事に歌い上げています。
ショパンのノクターン(夜想曲)の21曲
ここからはショパンのノクターン全21曲を一挙にご紹介します!
個人的におすすめの演奏動画とCDも載せますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ちなみに19~21番には「遺作」と付いていますがこれはタイトルではなく、ショパンが亡くなった後に出版されたため「遺作」と付けられています。
ノクターン第1番変ロ短調Op.9-1
ショパンのノクターンとして最初に出版された「3つのノクターン作品9」の1曲目です。
まるで声楽曲のような美しいメロディーが特徴的で、「憂愁」という言葉がぴったりの曲ですね。
1830年頃に作曲されたそうですが、若干20歳でどうしてこんな切ない曲が書けるのでしょうか!?
ピアノのコンクールでもたまに演奏されるので、ノクターンの中では有名・人気曲です。
ノクターン第2番変ホ長調Op.9-2
ショパンと言えば!ノクターンと言えば!という名曲。
でも曲自体は難易度が低く、メロディーも繰り返しが多いのでピアノ初心者でも挑戦しやすい曲です。
しかし有名すぎるので逆に難しいかもしれません。(間違えるとすぐバレるので)
メロディーは変奏をしながら繰り返されますが、ショパン自身も毎回違うように演奏していたそうなので、楽譜や演奏者によっても弾き方が違う場合があります。
ノクターン第3番ロ長調Op.9-3
ショパンのノクターンの中で唯一「アレグレット」という軽快なテンポの曲です。
また曲自体も長く、右手も左手もよく動くのでちょっとノクターンぽくない印象を受けます。
ふわふわとして掴みどころのない感じが逆に心地よく、静かな夜に聴くには良いかもしれません。
ノクターン第4番ヘ長調Op.15-1
第4番は5番、6番とともに「3つのノクターン作品15」として1833年に出版されました。
ショパンの親友で音楽家でもあったフェルディナント・ヒラーという人に献呈されています。
子守歌のような優しい雰囲気で始まったかと思ったら、中間部で急に荒々しくなります。
演奏するには表現力がかなり必要な、難易度高めの曲だと思います。
ノクターン第5番嬰ヘ長調Op.15-2
第5番は比較的有名なノクターンで、とても優雅なショパンらしい1曲です。
ピアノのコンクールの課題曲や、ピアニストのコンサートでもよく演奏されています。
ゆったりしているように聞こえますが、装飾音や連符といった細かい音符がたくさん出てくるので意外と難易度の高い曲です。
表現力も試される曲だと思うので、コンクールの課題曲になるのも納得です。
ノクターン第6番ト短調Op.15-3
第6番はおそらくショパンのノクターンの中で1番弾きやすい曲です。
(左手の音数が少ないので譜読みが簡単なのです。)
地味な曲にも聞こえますが雰囲気はショパンらしさが感じられ、短調ですが最後は長調で終わるのが何ともいえない脱力感。
豆知識ですが、この曲はショパンがオペラ「ハムレット」の上演を見たあとに書かれたそうです。
ノクターン第7番嬰ハ短調Op.27-1
この曲は1835年に作曲され、7番と8番がセットで1836年に出版されました。
当時のオーストリア駐仏公使夫人に献呈されたことから「貴婦人の夜想曲」とも呼ばれています。
7番は嬰ハ短調という調(有名な第20番「遺作」と同じ調)で、この調性というだけでちょっと悲劇的な曲にも感じるかもしれません。
左手のアルペジオの伴奏が特徴的ですが、音が飛ぶのでこれはダンパーペダル(音を伸ばすペダル)を生かして作曲されていることが分かりますね。
ノクターン第8番変ニ長調Op.27-2
8番は7番とセットで出版されましたが、ミステリアスな7番に対して8番はとても甘~い恋の歌のような曲です。
ノクターンの中ではあの有名な第2番と並んで人気があり、ピアニストもコンサートでよく演奏しています。
中間部に48連符というとても長いフレーズがあり、ここがピアニストの腕の見せ所といったところでしょうか。
キラキラと天使が踊っていて、最後は天高く昇っていく。そんな美しい情景が思い浮かぶような曲ですね。
ノクターン第9番ロ長調Op.32-1
9番は比較的易しいノクターンなので、「ショパンの入門曲」としても演奏されています。
全体的に地味な感じはしますが、ところどころフェルマータで休止したり強弱の差が激しかったりなかなか個性的な1曲です。
50年ほど前の映画で筆者は観たことはありませんが、「黒部の太陽」という日本映画の中でこのノクターン第9番が使われているそうです。
ノクターン第10番変イ長調Op.32-2
この曲は3連符の伴奏、中間部の和音の連続が特徴的です。
そして冒頭がまるで終わりのような始まり方なのですが、これが最後にもそのまま使われています。
ミステリー映画で1番初めに犯人をネタバレさせるような、何とも面白い仕掛けです(笑)
ノクターン第11番ト短調Op.37-1
第11番は盛り上がる部分があまりなく、正直ショパンにしては地味な曲です。
右手のメロディーはオペラの途中で歌われるアリアのようで、細かい装飾音もたくさん出てきます。
ショパンももしかしたら歌曲のようなつもりで書いたのかもしれません。
難易度は易しい方ですが意外と暗譜しにくいので、自分で歌詞を付けるとかストーリー性を考えて弾くと面白いのではないでしょうか。
ノクターン第12番ト長調Op.37-2
この曲はト長調なのですが、臨時記号(♯や♭)が多すぎて何調なのかよく分からないのが特徴的です。
そして簡単そうに聞こえるのですが、右手がほぼ重音で弾きにくいのでけっこう難易度が高いです。
伴奏やリズムが「舟歌」のようで、ショパンが当時の恋人ジョルジュ・サンドと行った船旅の経験が関係しているのでは?とも言われています。
(恋人と船旅…羨ましいですね。笑)
ノクターン第13番ハ短調Op.48-1
13番はまるでオーケストラのような雄大な曲で、ショパンのノクターンの中でも傑作・人気の曲です。
ベートーベンの後期のソナタを思わせるドラマチックな曲想で、難易度も高いです。
1841年頃(ショパン31歳)に出版されていますが、この時期は「バラード3番、4番」「英雄ポロネーズ」などの大作も作曲されています。
まさにショパンの才能が乗りに乗っている時期(!?)に書かれていたのですね。
ノクターン第14番嬰ヘ短調Op.48-2
14番は大作である13番とセットで出版されており、こちらもなかなかドラマチックな曲です。
全体的にゆったりしていますが、とてもメリハリとストーリー性が感じられますね。
この時期のショパンはオペラの影響を受けており、歌とオーケストラをイメージしているのが伝わってきます。
ノクターン第15番ヘ短調Op.55-1
有名な第2番、20番と同じくらいの難易度なので、ショパンのノクターン入門としても演奏されるのがこの15番。
この曲はショパンの弟子であったJ.W.スターリングという女性に献呈されています。
この女性はショパンの弟子であり大ファンでもあり、恋愛感情もあったとか!?
さすがショパン先生、素敵な曲を書く男性はモテるようですね。
ノクターン第16番変ホ長調Op.55-2
流れる伴奏に乗って美しく歌われるメロディー。これぞノクターン!という曲ですね。
15番とセットで1844年に出版され、J.W.スターリングというショパンの弟子に献呈されています。
有名な第2番の雰囲気が好きな人は、16番も好きなんじゃないでしょうか。
演奏の難易度は2番より難しいので、2番じゃもの足りない!という人にもぴったりの曲です。
ノクターン第17番ロ長調Op.62-1
17番は18番とセットで1846年に出版されました。これがショパンが生前に出版された最後のノクターンとなりました。
この曲はロ長調ですが全体的に物悲しく、切ないハーモニーを感じます。
ショパンは病気で体調が悪くなり恋人のジョルジュ・サンドともうまくいっていない時期に書かれているので、ショパンの心情が曲に表れているのかもしれませんね。
ノクターン第18番ホ長調Op.62-2
17番の物悲しい雰囲気とは対照的で、18番はひたすら優美でショパンらしさが溢れています。
有名な「別れの曲(エチュードOp.10-3)」の雰囲気にも似ていて、筆者が個人的に1番好きなノクターンです。
体調が悪い中でどうしてこんな華麗な曲が書けるのでしょうか。ショパンの精神的な強さも感じられます。
ノクターン第19番ホ短調Op.72-1(遺作)
実はこの19番のノクターンが、ショパンが1番最初に作曲したノクターンと言われています。書かれたのは1827年、なんと彼が17歳の時でした。
ショパンの死後、友人であったフォンタナによって1855年に出版されました。
難易度は易しめですが、17歳の時の作品とは思えないほどの深い表現を感じます。若い時から音楽の才能が溢れていたんですね。
ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)
第2番と並んで知名度のある20番は、1830年(ショパン20歳)の頃の作品です。
難易度は易しい方なのですが、感情をたっぷり込めて弾くと「この人はピアノが上手い!」と思わせることのできる曲だと思います。
実は同じ時期に書かれているピアノ協奏曲第2番に、このノクターンのモチーフが使われています。
ショパンは「姉のルドヴィカが私のピアノ協奏曲第2番の練習の前に弾くために」と思って書いたノクターンだそうです。
ノクターン第21番ハ短調(遺作)
このノクターンはいつ頃に作曲されたものかはっきりしておらず、ショパンの死後に自筆譜が発見されそこにノクターンと書かれていたため、第21番として1939年に出版されました。
およそ100年後に世の中に出てきた、幻のノクターンといったところでしょうか。
曲の規模は小さくあまり演奏されていませんが、独特の歌曲のようなメロディーを聴くと「ショパンの曲だ」とすぐに分かるのは不思議です。
まとめ
- ノクターン(夜想曲)とはラテン語のノクス(夜)からきている。
- ショパンはジョン・フィールドのノクターンに影響され、生涯にわたってノクターンを書き続けた。
- 有名なのは第2番と第20番(遺作)でテレビなどでよく使われている。
ショパン特有の美しいメロディーが堪能できる、全21曲のノクターン。お気に入りの曲はありましたでしょうか?
多くのピアニストもノクターンのCDを出しており、ピアニストによって弾き方が違うのも面白いです。
ぜひ色々なノクターンを聴き比べてみてくださいね!
またショパン関連で下記の記事もおすすめですので、ぜひあわせて参考にしてみて下さい。