「三味線を弾く」の意味は?成り立ちもあわせてご紹介
相手の調子に合わせて適当に対応することを指す慣用句で「三味線を弾く」と言います。他にも、「口三味線」という言葉もあります。なぜ、「三味線を弾く」なのでしょうか。こちらの記事では、三味線にまつわる慣用句や由来などを解説いたします。
「三味線を弾く」の意味
楽器を使った慣用句に「三味線を弾く」という言葉があります。
意味は「相手の調子に合わせて適当に対応すること、または、事実でないことを言ってごまかす」と、国語辞典に記載されております。
使用例
「あの人はいくら質問しても、三味線を弾いてばかりいて、真面目に答えてくれない」
情景的には、なんだか少し面白く見えますね。
では、なぜ、ごまかすことを「三味線を弾く」というのでしょうか?
「三味線をひく」という言葉の由来
三味線は、音楽や歌によって音域を変えることのできる弦楽器です。
相手の音域などに合わせて調弦(チューニング)をし、音を奏でることが出来ます。
つまり、相手の調子に合わせるという所が由来の慣用句なのではないかと思われます。
三味線が庶民の娯楽となったのは、江戸時代頃と言われています。
それまでは、神楽の笛や太鼓、鈴といったものまでしか庶民の手には行渡っておりませんでしたが、幕末期の文政(1818~1831)頃のオランダ商館・館長のメイランの紀行文によると「楽器の中では三味線が一番ひろく用いられる」と、記載されております。
三味線を用いた浪曲や浄瑠璃などが流行ったのも江戸時代頃なので、庶民にとっては最も人気のある楽器だったのかもしれませんね。
「口三味線」の由来と語源
また、相手をうまく騙すことを指す慣用句で「口三味線」という言葉があります。
こちらは、「口車に乗せる」と同じ意味であり、上記の「三味線を弾く」と同じ語源ではないかという説もあります。
実際に、三味線を弾くときの演奏法の一つに「口三味線」が用いられることもあります。上記の動画のように、三味線の旋律を言葉に置き換え、第一弦を「トン」、第二弦を「テン」、第三弦を「ツン」と表し、一種の楽譜として用いられています。
楽器を用いた慣用句・ことわざ
ここで、少し補足として、「三味線を弾く」以外にはどのような楽器を慣用句に用いているのか、いくつかまとめてみましたので、意味と合わせてご紹介いたします。
鼓を鳴らして攻む
大きな声で相手を非難したり、罪を言い立てて攻撃することを表した言葉。出典は中国の哲学者・孔子が書き記した「論語」。悪政を働いた役人に対して、孔子が弟子たちに役人を攻め立てなさいと発言したところから生まれた言葉です。
段々良くなる法華の太鼓
物事が徐々によい方向へ向かう事と太鼓が鳴ることから、共に「よくなる(良くなる・よく鳴る)」をかけた洒落。ちなみに、法華の太鼓とは法華宗が用いていた団扇太鼓の事で、日本を代表する喜劇人・志村けんさんの持ちギャグであった「だいじょぶだぁ~」の時に使われている太鼓として有名です。
おじゃんになる
予定していたものが全てダメになってしまうことを指す言葉。半鐘という楽器が語源となった言葉で、江戸時代に火事を知らせる楽器として多く用いられていました。そして、鎮火した後は2回「じゃんじゃん」と合図していたのが、「火事が終わった」というのが「火事で全てダメになってしまった」という意味に転じ、現在のような意味になりました。
また、落語の「火焔太鼓」のオチとして使用されていることでも有名です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事で、「三味線を弾く」という言葉を初めて知ったという方も多いと思います。
上記のように、楽器が元となった慣用句は他にもたくさんあります。
ちょっとずつ、知識を集めていくことで、クイズ番組などで友達や家族より先に答えることが出来たら、周りより少しだけカッコよく見えるかもしれませんよ。