【サカナクション】江口洋介主演ドラマ「dinner」主題歌として起用された『ミュージック』の歌詞を独自で徹底解説!
サカナクションの楽曲ミュージックは発売から何年経っても色あせない名曲です。ドラマdinnerに起用されたり、紅白にもこの楽曲で出演しており、耳にした人も多いでしょう。サカナクションがミュージックを制作した意味や、歌詞について掘り下げていきましょう。
サカナクションの今でも衰えることない人気曲『ミュージック』
サカナクションの8枚目のシングル「ミュージック」は2013年1月23日に発売されました。高い完成度を誇る曲であり、サカナクションを知らない人でも耳にした事があるでしょう。
2017年に開催されたサカナクションのデビュー10周年イベント「2007.05.09 - 2017.05.09」の企画の中で、ファンが選んだ曲TOP40が発表されていますが、ミュージックは7位でした。
1位 目が明く藍色
2位 白波トップウォーター
3位 ナイトフィッシングイズグッド
4位 三日月サンセット
5位 エンドレス
6位 ユリイカ
7位 夜の東側
8位 ミュージック
9位 シーラカンスと僕
10位 ネイティブダンサー
ファンからはお馴染みの名曲が並んでいますが、シングル曲でランクインしているのは6位のユリイカと7位のミュージックのみです。
逆に言うとミュージックは新参、古参問わず多くのファンに支持されている人気曲と言えます。今回は誰もが認める名曲ミュージックについて掘り下げていきましょう。
江口洋介主演ドラマ「dinner」主題歌として起用された
ミュージックは2013年の冬から放送されたフジテレビ系列のドラマ「dinner」の主題歌に選ばれています。
イタリアンレストランRistorante Roccabiancaを舞台に繰り広げられる群像劇であり、キャッチコピーは「ひとつまみのスパイスが、人生をもっと美味しくする。」でした。
この楽曲を起用した理由として、企画者の鹿内植はこう話しています。
「人が日々の生活で感じている、葛藤と希望。そんな感情の繰り返しの中で必死にもがきながらも暮らしている光景が歌詞からあふれていて、すごく共感できました」
江口洋介演じる江崎究は料理人として優れた人物であったものの、常に完璧を求め厳格な性格でした。料理に対するプロ精神からどの店でも衝突してしまい長続きはしませんでした。しかしRistorante Roccabiancaでの出会いから徐々に人間味のある一面を見せるようになります。
この楽曲を制作した山口一郎はデビュー時から現在に至るまで、常に葛藤の連続でした。制作する楽曲は常に完璧を求め、自分を追い込む事も少なくありません。サカナクションの楽曲には音楽に対する真摯な姿勢が滲み出ています。
その姿勢がドラマの主人公達とシンクロしたのでしょう。
視聴率的には同じ時間帯に「とんび」が放送されていた為、視聴率的には振るわなかったものの、個性豊かなキャストや江口洋介の職人気質な演技は高い評価を得ていました。是非皆さんに観て欲しいおすすめのドラマです。
サカナクションとクラフトワーク
サカナクションはミュージックを引っさげ、様々な歌番組に出演します。ミュージックの反響は大きく、その年の紅白歌合戦にも参加します。
紅白歌合戦ではありませんが、こちらはミュージックのライブ映像です。メンバーの立ち位置を観て気になった事はありませんか?
冒頭ではメンバーが横に並び、パソコンの前に立っていますね。「バンドっぽくないな」と思ったかもしれません。
この演出は「クラフトワーク」という1970年代に結成されたグループが関係しています。彼らはテクノ音楽を大衆に広めました。
山口一郎が影響を受けたバンドYMOは、クラフトワークに影響を受けたと公言しています。
ちなみにYMOの影響を色濃く受けているのがアクラアラウンドです。
こちらはクラフトワークの名曲「ロボット」のライブ映像です。
「マネキン?」と思うかもしれませんが、彼らは自らをロボットであると宣言しているので、それを表現したものになります。
こちらがクラフトワークの最近のライブ映像です。メンバーが横並びでパソコンを操作し、ソフトで曲を演奏しています。
サカナクションのミュージックは彼らのライブをオマージュしたものになります。当然楽曲にもテクノ音楽の要素は含まれていますね。
ただライブ映像を最後まで観てもらえたら分かりますが、メンバーは最後の大サビではパソコンから離れ、バンドサウンドを奏でています。
ミュージックはテクノ音楽とバンドサウンドを融合させた楽曲であり、それを視覚で表側したものと思われます。この演出は紅白でも行われ、高い評価を得ています。
変化を恐れずに新しい試みを続けるサカナクションらしい演出だと言えるでしょう。
『ミュージック』に込められた歌詞の意味とは
2011年9月「DocumentaLy」が制作された後、2012年には次のアルバムに着手したものの、震災の後に何を届けるべきかサカナクションのメンバーには迷いがありました。
彼らのみならず2011年の震災は多くのアーティストに迷いを与えたようです。
「僕と花」は「37歳で医者になった僕〜研修医純情物語〜」に、「夜の踊り子」はモード学園のCMに起用される等、サカナクションの楽曲は表舞台で流れる機会が増えてきます。
表裏一体?サカナクションがミュージックに込めたもの
しかしこれらの楽曲はタイアップを意識した「表」の姿であり、メンバーは作為的に曲を作る事に対して迷いや葛藤がありました。
スタジオで制作する度に、メンバーも「こうすれば、サビは盛り上がるよね。」とか「この展開で大丈夫だよね?」とか、予定調和のような確認をしていく制作が続いたりして……。せっかく北海道から出てきて、音楽シーンに爪痕を残そうと必死になってやってきて、タイアップもたくさんもらって、やっと旬が来たという時に、そういうやり方でしか音楽を作れなくなっている状況に、先生は、メンバーや僕らの音楽を待ってくれている人たちに対して、申し訳ない気持ちになりました。
そんな葛藤の中で、山口一郎はメンバーに「好きな事をやろうよ」と持ちかけました。
シングルやタイアップが表の曲なら、自分達が作りたい楽曲は裏の曲です。山口一郎は裏の曲を作り、原点に立ち返りたいと考えたのですね。
裏の曲として制作を始めたのは今回紹介するミュージックです。この曲は結果的に表裏一体という新たな方向性を持った曲になりました。
メンバーはみんな、急には気持ちを切り替えられませんでした。その結果、偶然にも、表に向かって発信していこうという気持ちと、好きなことをやろうっていう気持ちが、いい感じに混ざり合った曲になりました。
表でもあり裏でもある。そんな楽曲がミュージックでした。後のアルバム名が「sakanaction」とセルフタイトルになったのも、表裏一体な今の自分達の楽曲を届けたいという意図からでした。
アルバムは2013年3月13日に発売され、オリコン1位になる等、高い評価を得ています。サカナクションを始めて聴く場合には、ベスト盤である魚図鑑か、こちらのアルバムから入るのがおすすめです。