なぜ音痴なのか?その原因とは?克服することはできるのか?

「歌は好きだけど、音痴だから人前では歌うのは恥ずかしい」という方。なぜ自分は音痴だと思うのでしょう?なぜ歌が上手くならないのでしょう?今回は、音痴についての疑問にお答えする形で、その原因と対策、具体的な練習法などをご紹介したいと思います。

  • 歌は好きなのに音痴が恥ずかしくて人前で歌えない
  • 歌が下手だと言われたことがきっかけで歌うのが怖くなった
  • いくら練習しても上手くならない…やっぱり私は音痴なの?

今回は、こんなお悩みをお持ちの方を対象に、ボイストレーナーである筆者が音痴の原因とコンプレックスの克服法をご紹介したいと思います。

あなたの声は世界でたった一つの楽器であり、あなたはその楽器のたった一人の奏者です。

すべての楽器が同じ音色でないように、あなたの声も唯一無二の音色!まずは、自分という楽器についてよく知ることから始めましょう。

「なぜ私は音痴なの?」そもそも音痴の定義とは?

『ドラえもん』に出てくるジャイアンのような“だみ声騒音系音痴”、『名探偵コナン』のコナン君のような“音程迷走系音痴”などは分かりやすい音痴だと思います。ですが、実際は歌の上手さを正しく測るための絶対的基準というのは存在しません。

なぜなら、歌の“上手いor下手””は、ほとんどが主観で判断されるからです。その判断には、さらに主観が強い“好きor嫌い”も影響するのでなかなか厄介です。

それでも、“音痴であるか”を判断するための最低限の基準があるのも確かです。
専門家の視点はもっと多岐にわたりますが、一般的には次のようなポイントに注目して判断しているのではないでしょうか。

  • 声量の有無
  • 音域(声域)の広さ
  • 音程の正誤性
  • リズムの有効性

これらは主観ではなく、客観的に是非を問うことのできる要素です。
そして一般的には、この基準を充たせていないほど“音痴”だと感じられます。
 

  • 声が小さ過ぎて聞こえない、大き過ぎてうるさい
  • 音域が狭く高い音や低い音が取れない
  • 音程が著しく外れている
  • テンポが維持されておらず、また規則性が感じられない など

とくに「音程を外す」と「リズム(テンポ含む)がずれる」は音楽の枠組み(骨格)を壊してしまうため、客観的に“音痴”だと判断されます。カラオケの機械の採点でも音程やリズムは重要なポイントとなります。

ただし、この基準をすべて充たせていても、必ずしも歌が上手いと評価されるわけではありません。あくまでも“音痴ではない”と判断されるだけです。

良くも悪くも歌の上手さは、数値では測れない要素を多分に含んでおり、最終的にはやはり個々人の主観で判断されます。

「なぜ音痴の人がいるの?」その原因とは?

音痴は遺伝が原因なのでしょうか?

生まれながらにして音楽の才能がある人、歌が上手い人がいるのは事実ですから、運動神経と同じようなものだと考えれば、遺伝の可能性もゼロとは言えません。ですが、大半は音楽との関わり方、その頻度と強度による影響の方が強いと思います。

“耳がいい”とか“感がいい”と言われる人も、相当量の音楽を聴いたからこそ、その能力は磨かれたのです。
たとえ才能があっても、音楽に触れる機会が少なくほとんど歌うこともなければ、やはりその才能は芽吹かなかったことでしょう。

音痴の原因が“環境”であると仮定した時、音痴のタイプには大きく分けて二通りあると考えます。
それは“インプットが下手な音痴”と“アウトプットが下手な音痴”です。

インプットが下手な音痴とは?

歌うためには、とても多くの情報を一度に処理しなくてはなりません。

具体的には、「音程」「テンポ」「拍子」「符割(リズム)」「コード」「楽段構成」「歌詞」などです。

メロディーを暗記するだけじゃだめなの!?

メロディーを記憶して、歌詞を見ながら歌う…これだけで歌が歌えるわけではありません。そもそも人が一度に記憶できるのは、せいぜい7つ程度だと言われています。100個の音符を記憶できたりはしないのです。

私たちが音楽を聞き分けられるのも、歌を覚えられるのも、単に記憶しているだけでなく、複雑な個性をつかみ取っているからです。

音程だけ、符割だけ、歌詞だけをそれぞれ覚えるよりも、それらが一つになった歌を覚える方が簡単ですよね?
その理由は、“複雑になるほど個性的になる”からです。

インプットが下手な音痴というのは、この“複雑さ”を感受できないことが原因で上手く歌えない人のことです。

音楽の聴き方に不慣れであるため、複雑な情報処理が行えず、不確かな記憶に頼ってしまうのです。ちょっとした文章でも、思い出しながら話そうとすれば、かなりぎこちなくなってしまうのは想像できると思います。

歌は、一つひとつの音を記憶するのではなく、いくつかの音のまとまりにある“規則性”を読み取って、聞いたり歌ったりしています。各フレーズ、各楽段、各楽曲にある規則性や個性をどれほど理解できているかが重要なのです。

アウトプットが下手な音痴とは?

インプットまでは上手くできたとしても、それを体現できない場合は“アウトプットが下手な音痴”ということになります。

“インプットが下手”な音痴の場合、歌を覚えるのにも時間がかかります。音楽そのものを聞き分けるのも苦手で、特定のジャンルやアーティストの音楽がどれも同じように聞こえるという人もいるのではないかと思います。

それに対し“アウトプットが下手”な音痴には、あまりそのような自覚はありません。ただ自分が歌う場合は、特定のジャンルやアーティストに固執する傾向が強いかもしれません。

音楽を聴いて楽しむだけならインプットができれば十分です。ですが、歌う場合は自分の身体を使って体現しなくてはならず、スポーツと同じように、歌うための筋力やそれをコントロールするための技術が必要になります。

次のような悩みを抱えている人は、アウトプットが下手なタイプかもしれません。

こんなお悩みありませんか?

  • 頭では理解できても、体が上手く反応しない
  • 他人の歌の良し悪しは分かるのに、自分の歌のことはよく分からない
  • 音程が外れているのは分かるけど、なぜ外したのかは分からない
  • 日(調子)によって、出せる音域が変わってしまう
  • 一度ミスすると同じミスを何度も繰り返してしまう

このタイプの人には、、歌うほどに音痴になってしまったという人が多く含まれます。その原因は、インプットした情報を適切に処理してアウトプットするという過程を軽んじたせいです。

とくにカラオケが好きな人に多いのですが、自分にとって歌いやすい歌い方を優先し、変な癖をつけてしまうことがあります。その結果、歌うための呼吸や筋肉を自由にコントロールできなくなるということが起こります。

「なぜ音痴は治らないの?」克服法はあるの?

これまで何百人というボーカリストの歌を聞き、また声や歌に関する多くの相談を受けてきた経験から言えることは…
ほとんどの人が自分を正しく評価できていない”ということです。

他人に音痴だと言われたことがきっかけで、自分のことを音痴だと思い込んでいる人がいます。逆に、たまたま音痴だと指摘されたことがなかったため、音痴だという自覚がない人もいます。

極端に声が小さかったり、音域が狭すぎて歌える曲がほとんどない人はさすがに自覚がありますが、それなりに歌うことが出来る人の方が、案外自分の歌の良し悪しを正しく判断できていないことがあります。そのため、自信がないだけで然程音痴ではない“自称音痴さん”もいれば、自信満々に歌う“隠れ音痴さん”もいます。

ある程度客観的に判断できるはずの“音痴”でも、その一線は意外と曖昧だということです。ですから、自分を音痴だと決めつけて劣等感を持つ必要はありません。大切なのは、自分のことを良く知り、弱点だと思う部分を改善すること。歌に、自分自身に、もっと自信を持てるようにすることです。

“音痴だから…”という理由で歌うことを避け続けるのは逆効果!

その曲をよく観察して、どんな曲なのかをよく理解すること。
そして、“自分はどう歌いたいのか?”や“どう歌えばこの曲の個性が伝わるのか?”を吟味して、それを体現するための適切な練習をする。

そもそも音痴は病気ではないので治るものではありません。それと同時に、生涯変わることのない障がいでもありません。日々変化し続ける生身の身体をコントロールする身体技能であり、人間活動である自己表現の一つです。

適切な訓練を行うことで、いくらでも改善します

自己流の練習に限界を感じるのであれば、プロのトレーナーに付いて基礎から学んでみることをお勧めします。

「なぜ音程やリズムが外れるの?」改善するための方法とは?

まずは正しいインプットから!
ここで失敗してしまうと、どれだけたくさん歌ってもただ歌い慣れるだけで歌は上達しません。

音程が苦手な人は、うろ覚えの状態で歌い始めてはなりません。歌うという行為はアウトプットするということです。
アウトプットの練習は、何度も繰り返し曲を聴き、よく観察してからにしましょう。

メロディーは無作為に並んだ音高のまとまりではありません。そこには規則性があります。
メロディーを正しく覚えるコツは、その規則性を読み解くことにあります。

音程の動きにも、音符の長さにも必ず規則性があります。一つのまとまり(フレーズ)はそれほど長くはありません。
もし、とても覚え難い長いフレーズがあったとしても、それもいくつかのパーツに分けることができます。
ある規則性を持った最小限のまとまりを捉え、それを少しずつ繋げて大きなまとまりにしていけば良いのです。

規則性の代表格はリズムです。
ですから、歌のセオリーとしては“リズムを歌うこと”が最優先です。

音の長短・高低・強弱を表現するためには呼吸をコントロールせねばなりませんが、それには発声法の訓練も必要になるので、ここでは規則性を捉えることに特化した練習法を一つご紹介しておきます。

リズム優先のフレージング練習

  1. 最初に、メロディーを歌詞ではなく“ラララ”などで歌い、音符の長さ(長短の組み合わせ)を捉えます。
  2. 歌詞に頼らず、メロディーの規則性を理解して歌えるようになるまで繰り返します。
  3. 次は、音程をなくした“ラララ”で歌います。いわゆる“ラップ”のような感じです。音の長短をしっかり確認してください。
  4. 慣れてきたら、歌詞をつけたラップを練習します。
  5. 完全にラップで歌えるようになったら、音程をつけて普通に歌います。この時、音程をつけてもリズムを意識して歌えていることを確認しましょう。

リズムを歌う練習ですから、必ず一定のテンポで練習してください。メトロノームに合わせてもいいし、自分で膝などを叩きながらでもいいです。

音程が悪い人ほど、なかなか音程を消すことが出来ないと思います。
それは、最も規則性の強いリズムを活かせず、記憶した音程ばかりを頼りに歌っていたせいです。
音楽の骨格であるリズムを疎かにしたまま音程の規則性を覚えるのは困難です。記憶したはずの音程もあまり頼りにはならないということです。

リズムを優先的に歌えるようになれば、以前より格段に音程が取りやすくなります。
記憶を辿りながら歌うのではなく、予期をしながら歌うことが出来るので身体のコントロールもしやすくなるでしょう。

声という楽器は、想像できない音を鳴らすことが出来ません。
曖昧な想像では、声を出す準備すらままなりません。

一つの曲、一つのメロディーから、より多くの情報を得られるように、いろんな音楽やいろんな人の歌をたくさん聴きましょう。音楽を楽しむ才能を磨くことで、きっとあなたの歌は今よりもっと素敵になります。

まとめ

音痴には、大きく分けると“インプットが下手”なタイプと“アウトプットが下手”なタイプがあります。

自分はインプットが下手なタイプだと思った方は、出来るだけたくさんの音楽に触れ、各曲の個性をつかみ取るようにしましょう。アウトプットの方が下手だと感じたなら、正しくインプットされたかを確認し、規則性を予期して歌うようにしましょう。

曲を聴くときも、メロディーを記憶するだけの聴き方はせず、“アウトプットを前提にしたインプット”を心掛けてください。
それは、意識的に規則性を読み解くことであり、音程以外の要素をつかみ取るということです。

歌は、“歩き方”や“文字(書き方)”のように個人差が大きく、また無意識的に繰り返されるほど癖が強まります。
上手い下手に関わらず、誰もがある種の“型”をもっています。音痴の場合も、“音痴という型”にとらわれているのです。

型を理解し、型を壊し、また新たな型を自由に作ることができれば、歌はもっと自由に歌うことが出来ます。

音痴は遺伝だと諦めていた方、音痴を気にして歌うことを避けていた方。今からでも遅くありません!音楽を楽しむ才能を磨き、歌うことをもっと楽しんでください。

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