ファルセット(裏声)の出し方は?練習法やミックスボイスとの違いを解説

ファルセットってどんな声?ただの裏声じゃないの?そう思っている人に、ファルセットの出し方から練習法、その有用性を解説します。歌唱力の高いボーカリストたちが魅せるファルセットの美しさ!ファルセットを磨けば歌がもっと上手くなる!?

記事の目次

  1. 1.ファルセットとは?
  2. 2.ミックスボイスとファルセットとの違いは
  3. 3.ファルセットの練習の仕方
  4. 4.ファルセットのコツ
  5. 5.ファルセットの練習でおすすめの練習曲
  6. 6.ファルセットのまとめ

ファルセットとは?

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声には大きく分けて、「地声」と「裏声」があります。
ファルセットとは裏声の一種で、声帯の一部のみ閉鎖し振動させる発声法です。

高い声を出そうとして、思わず声が裏返ってしまうことがありますよね?
それは、声門の閉鎖を維持できず、結果的に声門の一部のみを振動させることにより裏声に切り替わったためです。

便宜的に、“ファルセット=裏声”として扱うことも多いのですが、ここでは“ファルセットは裏声の中の一つ”と覚えておきましょう。
一般的に裏声には、ファルセット以外に「ミックスボイス」と「ヘッドボイス」があり、主にこの3種類の声をまとめて裏声と呼んでいます。

 

ミックスボイスとファルセットとの違いは

ファルセットの特徴は、声帯に負担を掛けず発声できること。その声は柔らかで透明感があります。
上手く使えれば、地声にはないファルセット特有の繊細な表情が出せ、上手くコントロールできないと息がもれただけの頼りない声になってしまいます。

それに対しミックスボイスは、ファルセットよりも声門閉鎖が強く、地声と裏声の中間的な声になるため、“芯のある裏声”といった印象の声になります。

中音域から高音域に切り替わる換声点で用いられることが多く、地声から裏声に移行する際、声を裏返さずスムーズにつなげることができます。
地声では難しい中高音域をファルセットよりもしっかりした声で出したい!そんな時にミックスボイスを使います。

その他のハイトーンボイス

オペラ歌手やハイトーンボイスのロックシンガーが出すような強い裏声が「ヘッドボイス」になります。
さらに高周波の声として「ホイッスルボイス」という声もあります。マライアキャリーなどが出す超高音がそれです。

他には、ミックスボイスのさらに地声の割合を増やした、より高音を地声のように出す発声法を「ベルディング」と言います。
ベルディングは裏声より地声に近い表情の声であり、ヘッドボイスの一種というよりは、ミックスボイスの延長上にある声と言ったほうがいいかもしれません。

ベルディングボイスは、ポピュラーミュージックのボーカリストたちが頻繁に使う声です。
声門閉鎖をできるだけ維持したまま呼気圧を上げて出すため、まるで地声で出しているように聞こえます。

ベルディングは声帯への負担を軽減しつつ、かなり高いところまで地声のような声が出せますが、十分な発声力と巧みな声帯コントロールが必要です。
習得するためには、安定した地声と裏声が出せることが前提!まずは発声に必要な筋力を鍛え、基礎的な発声力を上げることが先決です。

ファルセットの練習の仕方

【初級編】ファルセットがよく分からない人

すぐにファルセットを出せない人は、地声で出せる高音域の音をハミングで出してみてください。
女性ならA音(ラ)前後、男性ならG音(ソ)前後の音になると思います。ファルセットだと自覚できるなら、もっと低い音でも構いません。

少ない呼気量で高い音を出そうとすれば自ずとファルセットになります。
最初に「ん~~」とハミングで出すのは、声帯に負担を掛けず、それでいてしっかり息を流せるためです。

ハミングでファルセットが出せたら、今度は母音の「い」にしてみましょう。
喉を使ってしまう人は「ひ~」から練習し、徐々に無駄な息を抑えて「い~」に近づけてください。

「い~」で長く安定したファルセットが出せるようになったら、母音の「あ」でも同じようにできるか確かめます。
「あ~」になった途端に声が出なくなった人は、息の強さ(速さや量)が足りていません。また、声のかすれが強くなった人、息漏れが酷くて長く声が出せなくなった人は、声門閉鎖に問題があります。
その場合は、「あ(は)・あ(は)・あ(は)~~」と何度かスタッカートで歯切れよく出してから伸ばすようにすると良いでしょう。スタッカートでの発声は、声門の閉鎖力を上げるのに効果的です。

【中級編】ファルセットは出せるが息もれが強い人

自分が出せる一番高い音(地声では出せない音域の音)でファルセットを出してください。
こちらも最初はハミングからが良いでしょう。いきなり声にしようとすると声帯に負担を掛ける恐れがあります。

口は開け、舌根のみを口蓋につけ、できるだけ強く「ん~~」とファルセットでハミングします。
次に、息を流したまま、舌根を下げて「あ(は)~~」と声に切り替えます。
上手く舌根が下げられない人は、鼻濁音の「が」を発音するようにすると、ハミングが途切れずに「んが~」と言えると思います。

「ん~が~ん~が~ん…」と繰り返しながら、極端な息漏れを起きないよう練習してください。
慣れてきたら、同じ音を強くではなく、今度は最も弱く(小さく)出してもできるか。また、自分が出せる一番低い音のファルセットでも同様に練習してみると良いでしょう。

低めの音域では、呼気の圧力を上げ過ぎると地声になってしまい、弱すぎると振動が起こせず声になりません。そこを調整することが、声帯と呼吸をコントロールする練習になります。

ファルセットのコツ

ファルセットの出し方としてのコツは、リラックスしながらも呼気の速度は感じること。
柔らかい声だからといって支えを弱めてはいけません。

声帯全体を振動させることが出来ない高音域では、声帯の閉鎖を緩め、狭い範囲を振動させます。
一部とはいえ高音域である以上、それ相当な速さで声帯が振動しなくては高い音は出せません。しっかりと息を流すことが肝心です。

ファルセットを出す時、つい弱い声を想像してしまう人は、声を支える感覚が弱まり、息の速度を落とし過ぎてしまうことがあります。
息を逃がすことでファルセットになるのではなく、振動させる範囲を絞っているのだと考えましょう。

また、“音の高さ=強さ”だと意識し過ぎて力んでしまう人は、声帯の閉鎖を一部緩めることで、よりスムーズに呼吸が流れることを想像しましょう。
緩め過ぎず、締め過ぎず、安定した振動が得られるように、息が漏れる割合を調整してください。


歌の中ではまだ上手くファルセットを出すことが出来ない人は、文章を裏声で読むなどして声帯周りの筋肉を鍛えましょう。
ファルセットを出すことで「輪状甲状筋」という声帯の動きを支える筋肉を鍛えることができますよ。

ファルセットでの表現

ファルセットは高い音が地声で出ないときに使う声…そんなふうに考えていませんか?
たとえ上手にファルセットが出せても、それでは宝の持ち腐れです。

ファルセットには、地声にはない、他の裏声とも違う魅力があります。美しさがあります。
それを知っているプロの歌手たちは、表現方法としてファルセットを選択しているのです。

ある音(またはフレーズ)をファルセットにする時、その声にはどんな表情があるのか(出せるのか)を考えてみてください。
出したい声、出したい表情をイメージすることも、美しいファルセットを出すコツです。

ファルセットは、出ない高音を上手くごまかすためのテクニックの一つでもあります。
“ごまかす”というと聞こえが悪いですが、歌が上手い人の必須テクニックでもある“ビブラート”も同様です。

とくに、母音で伸ばすことが多い日本語の歌では、息の減衰による音程のブレが起こりやすく、また上手く処理できないとプツっと音が切れてしまいます。
それらをビブラートをかけることで上手くぼかすことができます。もちろんビブラートも、そのかけ方次第では表現の一部になっています。

ファルセットも同じです。ファルセット特有の表情を最大限に生かすことが大切です。

ファルセットの練習でおすすめの練習曲

男性曲と女性曲、それぞれ邦楽と洋楽からおすすめの練習曲をいくつかご紹介します。

ファルセットの有用性を発揮するためには、しなやかな声帯周りの筋力や安定した声量が必要です。一曲を通して歌い切るにはやや難易度高めの選曲になっていますので、まずは目的に応じて部分的に練習をしてみると良いでしょう。
 

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