【星野源】色々な愛のあり方を描いた「Family Song」とは?歌詞から想いを徹底考察
星野源さんが多様な家族愛について描いた『Family Song』について解説していきます。“家族”といってもその在り方は昔と今とでは変わってきており、幅広い意味での“家族の愛”をテーマにした星野源さんの『Family Song』は注目を集めています。
衰えを知らない人気ミュージシャン星野源
ミュージシャンとしてのみならず、俳優や文筆家としても高い評価を受け、その才能でファンを魅了し続けているアーティスト星野源さん。
中性的なルックスと独特な味のある演技で、今や国民的な人気を誇るマルチタレントの星野さんは、学生時代に観た舞台がきっかけで大人計画事務所に入所し、数々の舞台を経験しています。
映画『箱入り息子の恋』や『地獄でなぜ悪い』などの演技で高評価を得て、新人俳優賞を受賞しています。2016年に出演したテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が大ヒットし、国民的人気俳優となった星野さんは、同ドラマの主題歌『恋』も担当しています。
また、2009年に出版された『そして生活は続く』や
2013年の『働く男』、2014年の『蘇る変態』など多くの著作も発表し、その多彩な才能で多くのファンを楽しませてくれています。
そんな多彩な星野源さんの才能の中でも、噛めば噛むほど味のある歌詞世界や引き込まれてしまうサウンド構築など、音楽家としての圧倒的な才能はやはり大きな魅力のひとつです。
星野源さんが在籍していた『SAKEROCK』
●星野源 (ギター、マンドリン)
●浜野謙太(トロンボーン)
●田中馨(ベース)
●伊藤大地(ドラムス、口笛)
●野村卓史(ピアノ、オルガン)(途中脱退期間あり)
MUDA/SAKEROCK
星野源さんは1981年、埼玉県に生まれました。同県の飯能市にある自由の森学園で多感な中高生時代を過ごした星野さんは、学友と共にバンド「SAKEROCK」を結成します。
「SAKEROCK」は星野さんがリーダーを務めるインストバンドで、星野さんはギターとマリンバを担当していました。
実は星野さんはギタリストとしてもかなりの腕前で、ジャジーなプレイから、ハードに弾きまくる演奏まで幅広く見せています。
「SAKEROCK」は2015年に惜しまれながら解散していますが、今でも日本の多くのインストバンドに影響を与え続けています。
ソロ・アーティスト星野源として
『SAKEROCK』でコアな音楽ファンから熱狂的な支持を受けていた星野さんは、自身の敬愛する細野晴臣氏のすすめで2010年に1stアルバム「ばかのうた」をリリースし、ソロアーティストとしての活動をスタートさせます。
タイトルからも感じられますが、星野さんの独特のフィルターを通した歌世界は、当初から特に同業者からの支持を集めていました。
楽曲はキャッチーで、多くの人の心の琴線に触れるツボを押さえたポップ職人的ですが、歌詞の世界は割とシュールであったり、遊び心に溢れたものが多く、その塩梅が絶妙な星野源ワールドを作り出しています。
くだらないの中に
『くだらないの中に』は2011年にリリースされた1stシングルで、アルバム『エピソード』に収録されています。
星野源さん自身、初めて真正面から書いたラブソングであると公言している通り、『愛しています』と言ったストレートな言葉を使わずに、それでも素直な愛情がたっぷりと伝わってくる優しさに溢れたナンバーです。
色々な愛のあり方を描いた「Family Song」
『Family Song』は、2017年にリリースされた10枚目のシングル曲で、アルバム『POP VIRUS』に収録されています。
前作の『恋』から10ヶ月ぶりとなるこの曲は、テレビドラマ『過保護のカホコ』の主題歌として起用され、オリコン週間シングルランキングでは初登場1位を記録しています。
『恋』は自身が主演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌として書き下ろした楽曲ですが、この『Family Song』は、『過保護のカホコ』の脚本を読んだ上で作成されています。
星野源『Family Song』のPV
『Family Song』のPVは関和亮さんが監督を務め、吉田ユニさんが美術を担当し、プロデュースを星野源さん自身が担当しました。
NHK番組『おげんさん』の雰囲気をそのまま再現したかのようなPVでは、母親役を星野源さんが、父親役を高畑充希さん、娘役を藤井隆さんとギターの長岡亮介さんが、祖母役をドラムの河村“カースケ”智康さんが、息子役をピアノの小林創さんがそれぞれ演じています。
男性が母親であっても良いじゃないか、女性が父親であっても面白いじゃないか、そんな星野さんのメッセージが伝わってくるウィットに富んだPVに仕上がっています。
「Family Song」の歌詞から読みとる込められた想いとは
『Family song』は、星野源さんが「家族とは一体何なのだろうか」と自分自身に問いかけながら作った楽曲です。
曲調自体は60年代や70年代のソウルミュージックを思わせるものですが、歌詞のテーマになっているのは現代的な家族のあり方についてです。
『家族』と一言でいっても、現代では様々な家族の有り様があります。友人であったり、チームメート、仕事の仲間のことを“家族”といったり、同性の夫婦だってもちろんあるでしょう。
PVにも現れていますが、そういった幅広い意味での“家族”をテーマにした『Family song』の歌詞の意味を紐解いていきましょう。
Family Songの歌詞の意味
目が覚めて涎を拭いたら
窓辺に光が微笑んでた
空の青 踊る緑の葉
畳んだタオルの痕
救急車のサイレンが
胸の糸を締めるから
夕方のメロディに
想い乗せて届けてくれないか
朝、目が覚めて見渡す外の景色は、1日の中でも特別なものです。窓辺には朝の光が差し込み、青い空はどこまでも青いままです。
木々は緑に生い茂り、私たちの目を喜ばせてくれます。サッチモの『What's a wonderful world 』が頭をよぎります。畳んだタオルが意味するものは生活や、家族の存在の象徴です。
家族が外に出かけている時に、救急車のサイレンが聞こえてきると、「まさか」と思い、少し胸がドキッとしてしまうことありますよね。何気ないけど、鋭い描写です。
ただ 幸せが
一日でも多く
側にありますように
悲しみは
次のあなたへの
橋になりますように
遠い場所も繋がっているよ
家族への幸せを思う気持ちは、きっと遠い昔から変わらない普遍的なものであると思います。身内の痛みは自分自身のそれよりも、何倍にも感じてしまうものですよね。
もちろん、生きていく中では悲しいことは必ずあります。誰しもが何かしらかは体験するものです。でもそれは、人間として成長していく上で、大きな糧にもなるものです。そういった事を積み重ねて人は強くなり、人の痛みを知り、優しさを知るのです。
人生は続いていくものです。そうして成長していき、やがて大きな花を咲かせて実を結ぶことに繋がっていくのだと思います。
出会いに意味などないけれど
血の色 形も違うけれど
いつまでも側にいることが
できたらいいだろうな
遠きビルに日が跳ねて
帰り道を照らすように
街頭のメロディに
祈り乗せて届けてくれないか
出会いに意味などない、これは彼流の表現の仕方と思いますが、おそらく長い間当たり前とされてきた異性夫婦の家庭だけではなく、同性夫婦やジェンダーレスカップルのあり方に言及していると見られます。
血の色や容姿の違いは、国籍や人種などによる差別のことを表しているのでしょう。そういった垣根を取り払って、人間同士はみんな同じように家族なんだという、とてもスケールの大きな愛をここから感じ取ることができます。
歌は言葉にメッセージをのせて、遠く地球の裏側までも運んでしまえる希望の光です。届かない未来の人にも歌い継がれてパワーを与え続ける光です。
ジョン・レノンが無くなって今年で40年経ちますが、今でも彼の遺した楽曲は世界中で愛され、そのメッセージは歌い継がれて人々に勇気と感動を与えています。
星野源「Family Song」のまとめ
星野源さんの『Family Song』の歌詞について独自の考察をご紹介いたしました。具体的なことは言っていないので、その分聴く人の状況や考え方によって多くの解釈のできる曲です。
多くの名曲と言われる楽曲はたくさんの人が自分のこととして感じられる、『この曲は、自分のことを歌っているんじゃないか』と思えるような作りになっていますがこの『Family Song』も正に幅広い人の胸に沁みる名曲といえます。
奇しくも先日、第5次男女共同参画基本計画案から『選択的夫婦別姓』の文言が削除される運びとなりそうという報道がありましたが、まだまだ日本では伝統的な家族制度に囚われた考え方をする風習が根強いようです。
家族の在り方の選択肢が増えることは、個人的には良いことと思っています。同性愛結婚や夫婦別姓という現代的な視点で、家族の多様化という観点からは大きく後退してしまった印象は否めません。
選択制夫婦別姓に反対する人の中には、国家の衰退や弱体化に繋がるなどどいう意見の人もいます。しかし、多様な幸せの在り方を認められる世の中こそ、豊かな世の中のあり方です。
星野源さんの歌う『Family Song』は様々な形の家族への温かいエールです。そこには愛する家族の幸せを願い、悲しみを成長に繋げて欲しいというポジティブな気持ちが込められています。