【吉田拓郎】多くのアーティストにカバーされながら今も愛され続ける名曲『流星』とは?独自に徹底考察!
日本の音楽界のレジェンド、吉田拓郎。彼の代表曲である『流星』は多くの人を魅了し、たくさんのアーティストにカバーされています。今回は吉田拓郎の『流星』をテーマにその歌詞の意味を紐解きながら、この楽曲の魅力に迫っていきたいと思います。
では、『流星』の歌詞に込められた意味を考察していきましょう。私自身リアルタイムではありませんが、まだ小学生の頃にこの曲を聴き、感動して涙を流した事を覚えています。まだ酸いも甘いも知らない子供でも、何か心の琴線に触れるものがある名曲なのですが、歌詞の意味を理解していたかというと、もちろんよく分かってはいなかったと思います。
それから時間が経ち、もう十分に理解しているかというと、実は大好きなこの曲の歌詞の意味を考えた事が無かった事に気がついてしまいました。
そこで今回はこれ幸いと、皆さんとご一緒にこの曲の歌詞を考察し、味わっていきたいと思います。
たとえば僕が まちがっていても
正直だった 悲しさがあるから…
Ah… wow wow wow…流れて行く
静けさにまさる 強さは無くて
言葉の中では何を 待てばいい…
Ah… wow wow wow…流れて行く
まず“例えば僕が 間違っていても”と始まります。
“正直だった悲しさがあるから”と続いていきますが、一体どういう状況なのでしょうか?
2012年にあるラジオ番組で、拓郎はこの曲について語っていました。この曲を作っていた時、33歳になった彼は、誰もが避けては通れない「年齢」「加齢」という問題と向き合っていました。
もう、若者ではなく「大人」になってしまった自分自身を見つめ直し、これからどのように音楽と向き合っていけば良いのかを、模索していたと告白しています。
20代の拓郎は飛ぶ鳥をも落とす勢いで、一躍若者のヒーローとなり、時代の代弁者となって駆け抜けていました。しかし、30代も半ばを迎えようとして、少し立ち止まってみたくなったのでしょう。自分と向き合う為でしょうか。
正直に自分を貫き、正直に行動していれば、間違いを犯す事だってありますが、その事に悔いはない。でも勿論、その事によって傷つけてしまっている人もいる、それもわかってはいる。人の気持ちというのは複雑なものです。
“静けさに勝る 強さはなくて”
周りの雑踏がかき消してくれているうちはまだ気づかずに済んだ事でも、静かになってみると向き合っていかなくてはいけません。
たしかな事など 何も無く
ただひたすらに 君が好き
夢はまぶしく 木もれ陽透かす
少女の黒髪 もどかしく
Ah… 君の欲しいものは何ですか
君の欲しいものは何ですか
わかりやすい言葉で紡がれていますが、一連の文章としては、非常に抽象的な印象を受けます。
この世の中には確かな事なんて、何もないけど、人を好きになる気持ちだけは疑いようがない。
街を楽しそうに歩く少女たちは、今この瞬間を輝きを放ちながら、活き活きと生きている。人は皆歳を取っていくんのだけれど、まだその事を知らないかのように。
ここでいう“君”とは誰を指しているのでしょうか。あえて抽象的にする事で聞き手の解釈に委ね、幅広い層の共感を得るのは有効な手段です。
さりげない日々に つまずいた僕は
星を数える 男になったよ…
Ah… wow wow wow…流れて行く
遠い人からの 誘いはあでやかで
だけど訪ねさまよう風にも 乗り遅れ…
Ah… wow wow wow…流れて行く
心をどこか 忘れもの
ただそれだけで つまはじき
幸福だとは 言わないが
不幸ぶるのは がらじゃない
Ah… 君の欲しいものは何ですか
君の欲しいものは何ですか
ある事でつまずいてしまい、夜空の星を数える男は、あるいは拓郎本人であるのではないでしょうか。
ここであるひとつの仮説が浮かびます。これは自身の最初の離婚後の心境を歌っている。としたら、歌詞の理解がグッと深まります。“遠い人”とは疎遠になってしまった前妻の事ではないでしょうか。
前述の“少女”は置いてきた1人娘の事でしょうし、“例えば 僕が間違っていても”というのもすんなりと理解が出来ます。
“つまはじき”にされたと感じ嘆いているようですが、直ぐに“不幸ぶるのはガラじゃないんだ”と強がります。
流れる星は 今がきれいで
ただそれだけに 悲しくて
流れる星は かすかに消える
思い出なんか 残さないで
Ah… 君の欲しいものは何ですか
Wow…僕の欲しかったものは何ですか
鈴木茂の最高のギターソロを経て、いよいよ大サビです。“君”は前の奥さん、あるいは娘さんでしょうか。そう考えるとこの曲が一気に理解できる気がします。
そして最後に叫ぶように“僕の欲しかったものは何ですか”と尋ねています。温かい家庭を、おそらく自身が原因で失ってしまった男の叫びを聴きましょう。本当にこの曲のボーカルは秀逸です。
吉田拓郎『流星』のコードについてもご紹介
『流星』のコード譜をご紹介いたします。拓郎の曲の中でも、ギターで弾き語りしてみたい曲のランキングで、上位に入ることは間違い無いでしょう。
E E7 A E B C#m B7
E B7/C#m A
たとえば僕が まちがって
E
いても
C#m G#m A
正直だった 悲しさがあるか
B
ら
C#m G#mA E/ A B7/
…… 流れて行く
E B/C#mA
静けさにまさる 強さは無
E
くて
C#m G#m A
言葉の中では何を 待てばい
B
い
C#mG#mA E B
…… 流れて行く
C#m F#mA E
たしかな事など 何も無く
A E F#7 B7
ただひたすらに 君が好き
E G#7C#m
夢はまぶしく 木もれ陽透か
A
す
E C#m F7 B7
少女の黒髪 もどかしく
E G#m C#mA E
君の欲しいものは 何ですか
E G#m C#mA E
君の欲しいものは 何ですか
A G#m F#m7 B7
吉田拓郎『流星』別バージョンをお楽しみください
この曲は1979年にシングルでリリースされ、その直後に行われた篠島コンサートで演奏されて以来、長い間人前で演奏される事はありませんでした。
それから時を経て、拓郎自身の気持ちにも整理がついたのでしょうか、後輩達がこの曲を愛し、たくさんのカバーを耳にするようになってきて、拓郎本人もライブなどで演奏する様になりました。
こちらは2002年の映像ですから、リリースされてから23年後の演奏ですね。拓郎自身も歳を重ね、沢山の人生経験を踏んで円熟味を増して、歌も深みが違います。
若い時の歌も勿論魅力がありますが、歳を重ねた人の歌には深い表現力や説得力がありますね。
吉田拓郎『流星』についてのまとめ
吉田拓郎の名曲『流星』についてまとめてきました。リリースした時はオリコンチャートで54位と彼にしてはそれほど奮わなかった楽曲ですが、ファンやミュージシャンからの評価が高く、時代を超えて支持されてきた名曲といえます。
歌詞を読み解いていくと、自身の身辺の事を歌った内容とも取れますが、抽象画のように、受け取る人によって様々な解釈のできる、だからこそ多くの人の心を惹きつける、タイムレスに愛される作品となっているのではないでしょうか。きっとこれからもこの曲は歌い継がれていくのでしょう。
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