音楽用語「フェイク(fake)」の意味を解説!

音楽用語の「フェイク」とはどのような技法かご存知ですか?歌の上手い人がやる“かっこいい歌い回し”のことなのは分かるけど具体的には説明できない。そんな何となく知っているつもりの「フェイク」について、音楽用語「アドリブ」との違いも含めご説明します。

記事の目次

  1. 1.音楽用語「フェイク(fake)」の意味とは?
  2. 2.音楽用語の「フェイク」と「アドリブ」その違いとは?
  3. 3.「フェイク」の基本パターン
  4. 4.音楽用語「フェイク」のまとめ

音楽用語「フェイク(fake)」の意味とは?

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“このフェイクがかっこいいね”とか“ここフェイクして歌ってみて”と言われたとき、あなたはその意味をちゃんと理解できますか?

今回は、聞いたことはあるけどイマイチ意味が分からないという方のために「フェイク」という音楽用語についてご説明します。

フェイクとは、原曲のメロディーを一部変えたり、装飾したりして歌う(演奏する)歌唱法(奏法)を指します。

単語としての“フェイク”には、一般的に“偽物”や“模造”という意味があります。
“フェイク・ニュース”とか“フェイク・レザー”などと聞けば、いかにも“偽物”というイメージがあると思います。

ただ音楽的には、“偽物”という解釈は不適切です。
現存するものを模しているという点では、まだ“模造”に近いと言えるかもしれません。

音楽用語の「フェイク」と「アドリブ」その違いとは?

海外では「フェイク」のことを「アドリブ」か「インプロビゼーション」と呼びます。そのため、この二つを同一のものと捉えている人もいるかと思います。ですが、わざわざ使い分けるのであれば、この二つは似て非なるものです。

決定的な違いは“原型があるかないか”です。

アドリブは自由な即興演奏のことで、演奏であればソロパートなど、歌であれば、歌のない部分(間奏やアウトロなど)で行うのが一般的です。

それに対し、フェイクには原型となるメロディーが存在します。
基本的に、決められているメロディーを意図して崩したり、そこに装飾を加えたりしたものがフェイクになります。

「フェイク」の基本パターン

アドリブやフェイクは上級者のテクニックというイメージあると思います。
どちらも優れた“コード感”や“スケール感”を必要とするので、確かに初心者がすぐに出来るテクニックではありません。

ですが、歌っている時につい感情が高ぶって、少しメロディーを崩して歌った経験はないでしょうか?
例えば、“本来下がるはずの音程を上げてしまった”や“半拍早く入ってシンコペーションさせた”など。
実はそれがフェイクです。実際は“たまたま”ではなく、意思を持って行わないと表現にはなりませんが。

フェイクは、音楽の枠組みの中で原型となるメロディーを崩します。
その基本的な崩し方のパターンを知れば、あなたもフェイクが出来るようになります。

メロディーフェイク

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「メロディーフェイク」は、リズムはそのままに音程の一部を変えたフェイクです。

“ド-レ-ミ-ファ-ソ”というメロディーを“ド-レ-ミ--ソ”にしたり、“-ファ-ミ-ファ-ソ”などように変えます。

ただし元のメロディーが分からなくなるほど変えてしまうと、それは完全に別のメロディーとして認識されてしまいます。ですので、原型が分かる程度に数音のみピッチを移動させるのが基本です。

リズムフェイク

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「リズムフェイク」は「メロディーフェイク」とは逆に、音程はそのままにリズム(符割)のみを変えたフェイクです。初心者にはこちらの方が簡単かもしれません。

“表”から入るところを“裏”から入ってシンコペーションさせたり、音符の長さそのものを変えたりして、新たな規則性を作りメロディーに緊張感を与えます。

こちらも「メロディーフェイク」同様に、1~2音の変化で十分フェイクになります。

装飾音フェイク

「装飾音フェイク」は、既にあるメロディーを部分的に崩しつつ、さらに32分音符のような細かい装飾音符を加えたもので、“こぶし”もこれに当たります。

比較的シンプルなメロディーに入れるのが効果的です。少し長めの音の前や語尾などに装飾音符を加えることで、エモーショナルなフレーズになります。

“こぶし系”の中でも、1音節に複数の細かい装飾音を加え何小節にも渡って引き延ばして歌うものは「メリスマ」と呼ばれ、ゴスペルやR&Bなどのブラック・ミュージックで多用されます。


メロディーフェイク、リズムフェイク、装飾音フェイク。これらを組み合わせ、より複雑にすればアドリブとしても使えます。いきなりアドリブは無理でも、1音を変えるだけでもOKのフェイクなら出来そうな気がしませんか?

こちらはマライヤキャリーの「hero」のライブ動画です。

メリスマが多いですが、基本的なパターンのフェイクが含まれており、またアドリブも入っていますので参考にしてみてください。

音楽用語「フェイク」のまとめ

アドリブもフェイクも、音楽の枠組みの中で、もっと自由によりエモーショナルに表現するためのテクニックです。どらちも、枠組みとなるコードやスケールを感受する能力が必須になります。
ただ、フェイクには原型があるため、その仕組みを理解できれば、比較的簡単に習得できる技術といえます。

既存の楽曲の中にある“フェイク・フレーズ”を見つけ、原型のフレーズがどのように変化してフェイクされているかを研究して、あなたもカッコ良くフェイクをキメてみてはいかがでしょうか。

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